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*・゜゚・*:

次の日の早朝から、霧の中4人は出発した

足元も山道から、なんとなく見覚えのあるおどろおどろしい沼地へ向かう湿地帯へ入った

嫌な予感に足取りも重くなる

あのオバケ大百足の牙や、殺されかけた時のごりごりっと骨が砕かれる音が思い出されて躊躇していたが、クーやパーチェス、グリフォンが付いているので心配ないと自分に言い聞かせる

ぐちゅりと沼地の独特の足場の感触に、嫌な気持ちになりながら進む

オンズの花の蕾はまだまだ先にあるらしい

グリフォンが魔物を魔法で叩きながらクーが大きな剣を振り回し蹴散らしていく

なんらかのスキルを使っているのだろうなと思う

その時、ピコンと警報音と共にいくつもいくつも警告のポップアップが現れる

『オバケ大百足達の呪い、ステータスが封印されました』

見覚えのある文言に後ろを振り向くと、クーや、パーチェス、グリフォンの顔から表情が消えた。狼狽えるところから3人も同じ状態らしい

「ま、魔法が使えないのぉ!」

「…クロと同じ呪いが!?」

「やばい!ずらがるぞ!」

クーが叫ぶのと同時に、まだ小さな百足達が集団で周りを取り囲む

ぐねぐねと輪を小さくしていき、獲物を仕留めるつもりのようだ

「か、囲まれてるのぉ!」

「剣も使えんのかい!パーチェス!弓矢はどうや!?」

「……ダメです。ステータスを全て封印されました…」

ギチギチと小さな百足達は牙で少しずつ、獲物を傷つけて弱らせる事にしたらしい

特に小さなグリフォンを狙って動きながら噛み付いていく

「…!!痛いのっ!痛い!クロちゃ、パーチェス!クー!助けてっ!」

それぞれが孤立させられ、周りを囲まれている

ネロはグリフォンに近づこうとするが、周りの蟲達が1人ずつ弱らせるつもりなのか少しでも近づくとギチギチと威嚇してくる

抵抗出来ないグリフォンに安心したのか百足達はグリフォンの柔らかそうな頬や脚を噛み切っていく

グリフォンはもう放心したように蟲達に飲み込まれていく

「びっ……ぎぃっ…ぐ、…………」

「グリフォン!逃げろ!立つんや!あかん!」

グリフォンのいた場所は、すでに蟲の山になり、グリフォンの形に左右に揺れて、やがて声が聞こえなくなる

クーもパーチェスも伸ばした手に蟲が絡みついて蟲に飲み込まれていく

ネロはダガーを振り回しているのもあってか、蟲にまだ飲まれていないが、時間の問題だ

「……ぅ、ぅ、あ!」

たまたま、それは本当に突き立てたダガーが、百足の頭に刺さった

ギィイイと鈍い鳴き声を上げて動かなくなったのを皮切りに、一気に蟲達は遠巻きになる

同時に、斬撃を取得しましたとポップアップされた

呪われた後に、取得したスキルは使用できるようだ

何度か斬撃を繰り返し、グリフォンとクー、パーチェスにたどり着く

3人は傷まみれだが、まだ息をしていた

クーの剣を借りて斬撃を繰り返しながら、手投げの回復薬を3人に投げていく

3人とも少し呻きながら身じろいでいたので多分大丈夫だろう

終わったら回復薬を飲ませよう。手投げ回復よりも飲む方が回復する。

百足達に囲まれて、まだ余裕がないので追加で手投げ回復薬を3人に投げてから蟲たちに向き直る

クーの剣に変えてから、面白いくらいに蟲達を叩き潰せる

ここは禍根を残さないように、全て叩きつぶす

沼地に入り、潜んでいるオバケ百足達を斬撃していく

捜索がないと本当に始末出来ているのかわからないのが、難点だ

だんだん百足達も小さくなってきたのでゴキブリを叩き潰してるような気分になってくる

斬撃はかなり殺傷力が強い

蟲達を叩き潰していくうちに、沼地の中心に光る花があった

きらきらと夜露を纏った美しい金色の花

オンズの花だ

用意してあった瓶に、オンズの花の露を入れる

16瓶採取出来たが、4瓶は別に分けておく。治癒の力があるとパーチェスが言っていたから、3人に使うためだ。あとは、俺もぼろぼろだった

回復薬を何回か飲んだが、オバケ百足の鋭い牙で切られた腕や脚は引き攣れたような傷痕でびっしりだった。痛みもまだある

オンズの花を鋏で切り取り入れ物に入れる

きらきらとしたオンズの花は、入れ物に入れられても美しかった

グリフォンが見たがっていたから、後でグリフォンに見せよう

きっと喜ぶ

オンズの花をリュックに入れて、再び斬撃を繰り返す

その間に、沼地耐性と全体攻撃、普通の何もついていない祈りを覚えた

沼地耐性は、沼地でも普通の道みたいに移動出来る

ザブザブ腰まで浸かると、何故か移動魔法も覚えたらしい

一度行ったことがある所ならば、移動できるようだ

斬撃で全体攻撃を数回繰り返すと、攻撃対象がいません。のポップアップが出たので、その場にへたり込む

長かった

泥まみれの傷まみれ

せっかくパーチェスに買ってもらった服なのにどろどろの破れかぶれになってしまった

空を見上げると、もう朝陽が登ろうとしていた

ミネルバとの約束を、破ってしまった

息を吐いて、クーの大きな剣を引き摺りながら、3人の所へ戻る

しかし、隠すようにして寝かしておいた3人の姿がない

自力では動けないはずなのに何処へ?

重たい足を引き摺り、3人がいたはずの場所を眺めると、人を引きずった跡がある

魔物にやられたのだろうか?途中で戻って回復薬を飲ませれば良かった…

後悔にグリフォンやパーチェス、クーの顔が浮かんでくる

助けてくれた上に、迎え入れてくれて本当に嬉しかった。みんな優しかった

まだ、でもまだ生きているかもしれない

3人が引き摺られた跡を辿り、追いかけてみよう

気が早く溢れてきたお面の中の涙を拭いながら跡を辿る

しかし、その跡は見慣れた場所へと続いていた

あの、ミネルバと初めて会った場所

ドラゴンに襲われていた場所だ

なんとなく、悲鳴が聞こえて血の臭いがする。見てはいけないような、其処に行きたくない嫌な予感がする
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