みんなゾンビ

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「むーりー!むーちゃん!一緒に帰ろー!1人で帰っちゃダメだよ。危ないヨォ!この間のニュースから、この地域も厳重警戒地域に入ったんだから」

幼馴染の御影 宵みかげ よいが、でかい図体の癖して軽薄そうにヘラヘラしながら駆け寄ってくる

黙っていれば、黙ってなくとも女の子が群がるくらい美形で長身で優しい宵は、悪く言えば優柔不断でなよなよした性格のせいで、どこか気弱に見える

特に俺、こと浜辺 むりはまべ むりは下僕のように扱っていた

小学生低学年まで、俺の方が身長がデカかったし、美少年もかくやの宵は、よく誘拐されそうになるので、宵の両親と共に俺も目が離せなかった

どこかで宵を庇護しているつもりもあったのかもしれない

小学生の時に形成されたヒエラルキーのまま俺たちは大きくなった

いつの間にか中学生頃から宵は身長をぐんぐん伸ばし、いつの間にか180を超え、見上げなければ顔が見れなくなった

キラキラとしたキューティクルの髪はサラサラのまま、美少年めいたうるんとした目は、きりりと睫毛の濃い深い黒目に変わり、唇や口は大きいので、どことなくやらしさというか、セクシーさが妖艶で直視できなくなった

なんか見てはいけないものを見ているような気分にさせる美形

ただ性格は何故か昔から、ぽんこつで従順で俺の言いなりなのが宵だった

だから、こいつが1人で帰ろうとする俺を止めてくるのは当たり前のことなのだ

何故なら、過去少なからずあった誘拐未遂のせいで、こいつが1人で帰るのが怖いからである

「宵、傘見地区なんて、此処から何百キロ離れてると思ってんだ?ニュースでも言ってたろ?一応の警戒だって。俺、駅前まで荷物取りに行かなきゃいけないんだから、そのお前の後ろにいる女どもと一緒に帰れよ」

俺の言葉に、宵の後ろに控えていた女どもが、宵の腕に絡みつく

困ったような顔をする宵だが、たまに彼女たちと遊んでいる事を俺は知っていた

「浜辺の言う通りだよ!宵くん一緒に帰ろう」

「浜辺!あんたなんでそんな偉そうなのよ!宵くんが心配してくれてんのに!」

ギャアギャアうるさい女どもに耳を塞ぎながら、退散する

ぐいっと後ろから腕を引かれて、振り返ると宵が泣きそうな顔から不安気に唇を噛んでいた

「むーちゃん、ついていっちゃダメなの?むーちゃん…あとで家行くね?すぐ帰ってきてよ?」

眉を下げて気弱そうな表情の宵に、後手で手を振っておいた
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