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山岳地帯の黄金郷3
しおりを挟むおどろおどろしく暗雲が立ち込め、常時稲妻が走る山岳地帯、黄金郷と呼ばれる岩肌だけの山の上に魔王城はあった
近隣には草も生えず、マグマが吹き出しあちらこちらでゴポゴポと赤い液体が流れ、魔物がうじゃうじゃ生息しているので自殺願望がある冒険者くらいしか此処には来ない
特に酷くなったのは、此処数年で復活した魔王の影響が強い
魔王アスモに拐われて数年が過ぎて、ぼくの体も大きくなった
魔物達やアスモに比べると小柄だが、魔王の城に連れて来られて、手先が器用なので雑用やら小間使いになっていた
もちろん、アスモの監視下で逆らえないように拘束具の腕輪も付けられ魔王の下僕であることを誓わされた
「はああああ、やばいよやばいよ~。どうしよう。勇者が魔王の片棒担いでるなんて知れたら。一族郎党処刑されてナード家が取り壊されちゃう…」
そして頭を悩ませているのは、今日アスモに呼び出され命令されたことに起因している
基本、魔物や魔人に倣って上半身は裸で下半身は腰布のみで過ごしているのだけど、アスモがたまに装飾品を贈ってくるので、じゃらじゃらと腕輪やらベルトやらで宝石でゴテゴテだ
魔王の城の魔王らしくアスモは略奪を繰り返し人里を襲ったりして、ぼくにお土産だと、まだ血がついている装飾品を、ニコニコしながら贈ってくる
最初は逆らったり反抗したり逃げようとしたりしていたのだけれど、付き人?付き魔人の、頭は犬のクルクルという名の魔人が付いてからは、何も出来なくなった。
なぜならばクルクルは手に槍を持ち、アスモに逆らうと、槍の切先で突いてくるのだ。
「魔王様に逆らうな。逆らうな」
そう言いながら背中を突かれて、怖いぼくは全て言いなりだ
そして本日アスモに呼び出されて、魔王城の大広間の玉座に座るアスモに
「ウールも、そろそろ大きくなったからには街の一つでも襲えないと一人前とは言えない。巷に勇者なるものが現れたそうだが、それの討伐を任せよう。クルクルの部隊を引き連れて行くがいい」
そう命じられたのだ
人を襲うなんて出来ない!そんな非道なこと出来るはずがない!
そう主張しても、背中からツンツンとクルクルの槍に突かれ、涙目で了承したのだ
そこで、ぼくにも一抹の不安が過る
仮に誰かに、ぼくが人里を襲っているところを目撃されたとしよう
ぼくを王宮に人質として売り飛ばした両親だが、妹は可愛いし、姉だって大好きだ
しかし、ぼくが魔王の手先となり、街を襲ったと知れたら人類への裏切りとして、みんな家族親戚達は処刑されてしまうだろう
困った
バルコニーに出て頭を抱えていたら、後ろから囲うように、赤い肌の筋肉質な腕が伸びてきた
アスモだ
後ろから覆い被さるようにすると、アスモは剥き出しのぼくの肩に唇をつける
「まだ僕を受け入れる気にならない?」
さらりと髪をすかれて、ぷるぷると首を振る
魔王を受け入れるなんて、無理だろう!
「めちゃくちゃ気持ちよくしてあげるよ?」
ごりっと下半身のご立派なブツを尻の間に擦り付けながらアスモが囁く
「………街を襲うのをやめさせてくれる?」
思いきってそう言うと、アスモが離れる
「いい加減、此処で生きていくことを納得して欲しいんだよ。ウールは僕のもので、人間側じゃない。それに、そういうのと引き換えにはしたくないからしない」
「ぼくの家族や大事な人は人間だよ」
そう言いながらも、迷ってしまう。ここ数年で、ぼくの大事な人は、アスモやクルクルに変わってきている。アスモが黙って出て行ってしまうと入れ替わりにクルクルがやってくる
「なあ、クルクル。顔隠すかなんかないかなあ?人にバレてしまって、ぼくの家族に何かあると困るんだよ」
「布を顔に巻けばいいだろ」
クルクルは面倒くさそうなので、後で城の中漁るか
。
。
。
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