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バルデモニウムの策略
しおりを挟む魔法石の牢を出ると、ぼくにもみなぎる力が戻ってくる
そんなには強くないけど、留守中の"ぼく"を作るくらいには魔力はある
寝ているようにベッドに偽物の"ぼく"を寝かせると、忍足で宮廷の中庭に向かう
前回もだけど、見張りがいらないくらい魔法石の牢は凄いんだな。思考力すら奪うから当たり前だけど
ミルディコが、牢を出るように言わなかったら、あの牢からは二度と出れなかっただろう
助けすら断るつもりだった思考力にぞくりとする
しかし助けてもらおうにも、問題がある
ぼくが発情期を迎えてしまったせいで、番契約もしてないのにヴァイスから離れるのは物凄い苦痛を伴うということ
あとは単純に実家の心配だ。ただでさえ目の敵にされているのに、人質が逃げたとヴァイスが知ったら…
どうなるんだろう?取り乱す?怒る?冷静に妹を迎える?
ぎゅうとシャツの裾を握る
早足で辿り着いた宮廷の中庭は久しぶりに見た日差しが眩しく、ポピーの花が咲き乱れていた
ガゼボに座り空を見上げるも、あの口悪い白い龍は見当たらない
バルデモニウムの図体では、すぐに見つかり撃ち落とされるだろうに、ぼくも何を期待したのだか
だらしなくポピーを数本摘み、花冠をつくりはじめる
乳母が教えてくれたんだよな、懐かしい
想い出に浸っていると、ガゼボに人影が伸びてきた
顔を上げると、不機嫌な顔をした白い髪に、蒼い目を眇め、正装をしたバルデモニウムを彷彿とさせる美丈夫が立っていた
「ま、まさか、バルデモニ…もがっ!?」
「しっ!アスモ閣下は無事だ。さあ、下等の虫ケラよ此処から早く抜け出すぞ!」
「あ、バルデモニウム、ぼくは行かないよ。帰るつもりだったんだけど、発情期迎えたんだ。魔族にセカンドセクシャリティないじゃん?辛いだけだから、ヴァイスといるよ」
「正気か?脳味噌はないとは知っていたが、お前の妹を輿入れさせる算段をしている男と一緒になるつもりか?」
バルデモニウムの言葉に、ぐっと黙る
妹の輿入れは、ぼくが見つからなかった場合だろう?ぼくはずっといるのに、妹は輿入れなんてしない。ヴァイスは、ぼくに番になって欲しがってるのに
「……バルデモニウム、ぼくがいるから、ぼくと番うのに、ヴァイスは妹を輿入れなんてさせないよ」
「龍は番は唯一だから理解できないな。それならば、実家とやらに帰ってみよう。お前も目を覚ますだろう。それに発情期が辛いならば、クルクルを連れて帰ろう。ピンクの奴と逃げたが、あやつは逆らえんでな。あやつアルファ性だろう?閣下が面白がって、そっちの機能強化してたから」
疑い半分のぼくの腕を引き、バルデモニウムが腰を抱く
アスモに逃がさないように言われてるのかもしれない
それにしたってクルクル…可哀想に…
「クルクルは嫌だ」
なんかどうりでミルディコが艶々してるはずだよ。理由考えたくない。
「なんか適当に攫ってきてやるから、我儘言うな。ほら、ナード家は今や輿入れ準備でおおわらわだぞ?陛下に愛されて、運命の番として出迎えられると。最初からネックガードなしで、輿入れされるそうだ」
意地悪そうな顔で笑うバルデモニウムを、きっと睨む
いくらなんでも、ぼくへの嫌がらせだとしてもタチが悪すぎる
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