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侍女長の様子がおかしい
しおりを挟む椅子から立ちあがろうとしたら、侍女長が目の前で平伏して行手を阻む
「あの、ウール様には健全な子供時代を過ごして欲しいと思っています…!その…陛下は…その…2人では会わずに、こう皆様がいらっしゃる時に会うのがいいかと思います!!」
健全な子供時代…?いや、今まさに健全な日々を送っているけれども…
どういうことなのか…
「あの…念の為、ネックガードを装着なさってください…出来れば頑丈であればあるほど良いかと思います…!」
両手を合わせて必死に言い募る侍女長に足を止める
なんか、理由でもあるのか?
胡乱な目で見ながら、考え込む
そういえば、ぼくは陛下であるヴァイスの事は何も知らない
淫蕩が凄まじく、男オメガは寄せ付けず、14にして取っ替え引っ替えの女好きのアルファだとは聞いているが他にも何かあるのだろうか?
侍女長の必死さが気になる
「……ありがとうと伝えておいて」
そう言って座り直すと、侍女長は慌てて礼をして去って行った
陛下がプレゼントしてくれた中にはネックガードもあったが、ぼくは実家から持ってきた箱を開けた
陛下に命じられてから外すようにと父親から厳命されて渡されたネックガードは、渡りもないし余裕そうという理由で放置していたが、陛下の渡りもないのに、首を噛まれでもしたら処刑ものだろう
プレゼントされたネックガードは華奢で宝飾品も付いている事から、飾りの意味が強そうだ
これからパンとも接するし、恐らくアルファだろうから用心に越したことはない
ずっしりと重たいネックガードを着けて、何となく、さっきの侍女長の態度を考える
男嫌いと聞いているから、そのせいか?
情報が足りない…
冷宮のお姉さん達なら、何か知ってるかな?正気を保っていないのが殆どだけど
昨日ついでに買った甘い餅に目をやる
甘味は冷宮にとったら貴重品…ぼくにとってもだけどパンが沢山買ってくれたんだよね
お皿にこんもりと餅を持って、籠に入れて冷宮に向かう
賄賂というか話を聞くためのお礼というか、とにかく持っていって損はないだろう
侍女もいないので、自分で持たなくてはならなくて、なかなか籠が重たい
冷宮の入り口の侍衛に賄賂をこっそり渡して中に入る
それぞれ好きに過ごしていることが多いお姉さん達だが、今日はぼくの手にある籠を目にしてわらわらと集まってきた
冷宮では甘味は貴重なのだ
どうして冷宮にいるのか解らないくらい、お姉さん達は綺麗でいい匂いがする
「差し入れ、持ってきましたよ」
声をかけると、お姉さん達は嬉しそうに歓声を上げて、お菓子を取り囲みだした
「あの、聞きたいことがあります。陛下ってどんな方なんですか?」
にこにこしながら聞くと、皆一様に動揺したように震え上がったり、恐怖を顔色に浮かばせる
これは、もしかしたら陛下は残虐な方かもしれない
抗議に行ったりしたら無事だったか、わからないな
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