へっぽこ勇者と色情狂いの王様

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王様ヴァイスと冷宮

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暗い室内では、広い冷宮の大広間の真ん中にヴァイスは足を組んで、つまらなそうに座っていた

凄まじい美貌だけに、それは絵になっており絵画のように美しい

流れる黒髪も、健康的な褐色の肌も、王族らしく見事な刺繍には真っ赤な鳳凰ほうおうが描かれており、ヴァイスの激しい視線や雰囲気によく似合っている

足元に踏みつけられている血塗れの女達がいなければ、見惚れてしまっていただろう

あまりの光景と血腥ちなまぐささに吐き気を催しそうになったが、すんででこらえる

そりゃあウールだって、冷宮のお姉さん達が好きだったわけではない。そうではないが、あまりに惨たらしい凄惨な遺体達は、拷問を受けたのであろう形跡がみえた

頭の中では、どこか他人事のように、まだ夢の中にいるんじゃないかとすら思いながら、睥睨へいげいしているヴァイスの足元にひざまづ

指が震えているのを、握り込みながら挨拶の口上を述べるも遠いスピーカーが音を奏でているように現実味がない

「この度は、ご機嫌麗しく……陛下の面前にご挨拶させていただきまして、誠に至極恐悦で…」

辿々しく言い述べる横にカツンと何かが投げられて、頭を下げたまま目だけ音の方向を追いかける

それは見覚えのある、回復士になったハナが買っていた腕輪だった

血に汚れた腕輪に頭が真っ白になる

リンは何と言っていた?ハナが、ハナがどうとか

ぶるぶる震えながら、縋るように腕輪を手に取る

間違いない、ハナの腕輪だ。まさか、あの死体の山の中に、ハナが?

「動く事も頭を上げていいと言っていないが」

ヴァイスの威圧のある声に、腕輪を手にしたまま向き直り平服する

悍ましく恐ろしい声に、王様は残虐で、冷宮のお姉さん達が顔を引きらせていた意味が今ならよくわかる

「もう、しわけありません…!見覚えのある物だったので…」

「まあ、よい。今まで何処にいた?」

低く、恐い声色で尋ねられて、息を呑む。バレているんだろうか?カタカタと震える喉を抑えて答える

「ず、ずっと部屋に…ベッドの下が落ち…つくので、隠れていた訳ではなく、寝ておりました…」

「そうか。冷宮とはな、我が気に食わない者を罰するための場所でな、そこから笑い声が聞こえたら、反省も見えぬだろう?」

ヴァイスの言葉に平服しながら、頷く

ぼくが訪れることによって、お姉さん達は確かに、だんだん打ち解けて明るくなっていっていた

ぼくのせいでーー

「まあ、それはよい。良い口実だった。それよりも、お前、名前は?」

「な、ナード家のウールです」

ぼくも罰せられるのだろう。怖い、怖い。









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