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首輪と首輪
しおりを挟む「匂いの元は、お前だったのだなウール」
スンスンと美貌のヴァイスが首筋に顔を埋めてきて鼻を鳴らすのを、死刑宣告を受けるような気持ちで体を強張らす
ひいぃ、匂ってきてるよ…死んだ、ぼく死んだ…。
「この首輪は、なんだ?」
ガリッと爪を立てるように首輪を爪で引っ掛れ、頭を下げたまま縮こまる
なんだ?とはどういう意味だろう?あ、昨日贈られてきていた首輪をつけていないからだろうか?あんな装飾いっぱいの首輪は邪魔で仕方ないのだが
「ひぃっ…こ、これは、実家の父が…へ、陛下に命じられて初めて外して良いと……!な、なので、陛下がお命じになるまで外せません…」
頭を擦り付けるように声を絞り出すと、頭上の怒りの雰囲気が和らいだように思う
恐る恐る少し頭を上げると、後ろから抱き上げるように立たされた
そのまま抱き上げられ、ヴァイスの膝に乗せられて目を白黒させる
「男なんてとんでもないと思っていたが、子供のせいか、あまり嫌悪感はないな。あの侍女の匂いが変わったのも、ウールと接していなかったせいか…しかし、幼い。後宮で美姫達に匂いを移させるか…ウール、今日から後宮で暮らせ」
感情の読めない笑顔でヴァイスが手を上げると侍女達が下がり侍女長が跪く
「どの宮をご用意しますか?」
「うーむ、王妃の横の宮が良いな。なるべく王妃にウールと接見するよう命じる」
侍女長も下がると、ヴァイスと2人きりになり非常に気まずい
しかも、あれだけ反対意見が出ていた後宮に移動して本当に大丈夫なのだろうか?
今の王妃は、アルサンブル家の皇女で、ぼくより位が遥かに高い上に、ナード家とは敵対関係にある
そんな場所に移動して本当に大丈夫なのだろうか?
ヴァイスは残虐だが、王妃も負けず劣らず難しい方だと、よく聞く
折檻で死んだ侍女が運び出されるのを何度か目撃した事があるし、冷宮にいた、お姉さんの何人かは王妃に罰せられて冷宮送りになっていたはずだ
ぶるりと背筋が震える
「早く大人になれ。そうすれば家門にも褒美をつかわそう」
ぼくをぬいぐるみかなにかのように抱きしめながら、うっとりと目を細めるヴァイスに何故か腹の底から虫が身体中を這い回るような怖気を感じる
肉食獣が獲物を狩るような、猫が鼠を痛ぶるような目の光は、お前なぞどうとでもなると物語っている
首元で舌舐めずりをしている舌や、お腹を撫でる手が、何か意味を持っているようで恐ろしい
「ありがたき幸せにございます…」
震える唇で御礼を口上すると、恐ろしいまでの美貌で、ヴァイスは唇をくっとあげた
凶悪な笑顔に固まっていると、侍女長がぼくを迎えにきてくれて、新しい後宮の宮、王妃の隣の宮に案内してくれたのだった
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