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王妃の憎しみ
しおりを挟む豪華絢爛な内装は、後宮でしかなされない王妃ならではの離宮で、ぼくの住まいは、その横の更に小さな小屋だった
挨拶に出向いたら、王妃様は、ぼくを汚い物を見るような目で頭のてっぺんから爪先まで眺めて目には憎しみと軽蔑の色に染めていた
後宮に男オメガ性を入れることに、一番反対していたのは王妃様なので仕方ないかもしれないんだけど
「挨拶はよい。下賤で汚らしい。なぜ、毎日会わねばならないのか?いらぬ。」
扇子で口元を隠しながら吐き捨てるように言われて、王妃様の離宮から追い出されてから、王妃から何の匂いもしない事に気が付いた
アルファの傲慢な香りも、オメガの絡みつくような香りも何もしない
王妃はおそらくベータ性なのだろう
だから、オメガ性を深く憎しむような視線を送ってきたのだろうか
それよりも、ぼくは一応、貴族でありナード家の子息なのだ
それなのに、こんな汚い小屋に押し込められるなんて許されるのでしょうか
それぐらい、ぼくが住むとされた小屋は汚かった
汚いというか、絶対に使用人が使う物置きだった
屋根も雨ざらしになっていて雨漏りもひどいし、掃除道具や雑多な物で溢れている小屋に押し込めるなんて
「大丈夫ですか?ウール様、一応リンは側女なんですけど2部屋与えられてます。どうせ荷物もないしリンの部屋に移動します?」
心配顔のリンが、ぼくの小屋を見て顔を引き攣らせていたので、やっぱり酷い処遇なのだろう
「う、うん。こんなとこ、やだ」
リンに手を引かれて立派な離宮を通り抜けて、側女達が暮らす離宮に連れて行ってもらった
「うーん、ウール様、下賜品は売れないので物置に置いておきます?一応、割り当ての部屋に全くいないのも荷物がないのも問題になるかもですよ?」
ぼくがリンとハナの輿入れの際に貰った下賜品を、せっせと運び込もうとする姿を見て、リンが苦笑いを浮かべた
「下賜品を盗む人もいませんよ。死罪になりますから。目録もちゃんと作ってるでしょうし。ウール様、寝床を作らないとなので…」
リンはすでに、ぼくの侍女でもないのに、ちゃんと世話をしてくれて申し訳ないような気持ちにもなる
「湯浴みは流石に、側女とはいえど男性体であるウール様は側女用の大浴場ご一緒できないので…王妃様の離宮で入るしかないんですけど、難しいですよね?」
リンの言葉に、こくこくと頷く
これリンがいなかったら、ぼくはどうなってたんだよと不安も沸き起こる
まさか浴場も使わせないとか、あり得ないと思いたいけれど、あの王妃様だと有り得そうだ
リンによると、王妃様は男女関係なくオメガ性を憎んでいるようだ
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