へっぽこ勇者と色情狂いの王様

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こうなってしまったからには旅にでも出よう

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冷宮であれだけの騒ぎだったのだ。ぼくに遠慮してあまり詳細は聞けなかったけれど、冷宮で楽しそうにしていただけで、その場にいた使用人を含む全ての妃は処刑されたそうだ

ハナだけは匂いが違うことを咎められての事だったらしいが、匂いが違うって…

まあそれだけ些細なことで処刑にされるし、実際ぼくは隠れていただけということになってもあれだったのだ

ヴァイスに面会を申し込まれての嫌がっての逃走だと思われたら、すぐに処刑されてしまうだろう

お家への咎だが、逃げたのか拐われたのかわからない状態であるならば、そこまで咎められないだろう

真剣に熱いお茶を啜りながら考えていると、パンが終わったのか布でグルグル巻きにされた剣を返してくれた

これはもう前の剣と一緒で鈍器として使っていくしかないな、もう使うの怖いし

「これから出しちゃ駄目だよ、危ないんだから」

パンにこくこく頷きながら、いまさらながらじわりと涙が浮かんでくる

「………怖かった」

ぼくと同じくらいの背丈のくせに、パンはぽりぽりと頬をかいて、頭をよしよしと撫でてくれる

「心配したんだよ、ギルドに来ないし、もう会えないかと思った。ウール、親御さんに連絡しないと。ってパパが言ってるんだけど」

「ぼく、売られた使用人なんだ。騙されてあんな所に…これがバレたら殺されちゃう!ここに置いてくれない?クエスト、手伝うから!荷物持ちでもなんでもするし!」

焦っているパンと難しい顔をしたパンパパが顔を曇らせる

「使用人を横取りしたとされたら……」

「パパ、俺、前に受けるか悩んでたバステラ山脈のクエスト受けるよ!一緒に旅をしていたら、バレても事情も知らず拾っただけだと言えるだろ?ウールと旅に出るよ!」

パンパパは顔を渋めながら首を振る。使用人を使っているとしたら、貴族だからだろう

貴族と揉めたくないのかも知れない

「ウールくん、バレないようにできるか?例えば…変装したり…成長したら別人で誤魔化せるかもしれないが、今見つかるのは非常にまずい…使用人の印も調べさせてもらうがいいか?」

「パパ!そう言って知らせるつもりだろ!殺されるって言ってんじゃん!友達なんだよ!初めて出来た俺の友達なんだよ!」

パンパパが手を伸ばしてきたのを、パンが間に入って必死で止めてくれるのを、俺はジーンとした気持ちで見つめる

友達、なんでいい響き、ぼくも友達ができたのは初めてだ

「パン、いくら強くても、いくらお金があっても、権力とは恐ろしいものなんだよ?ウールくんがどこの家の使用人か知らずに庇えば、災いを呼びかねない」

パンパパの言葉に、はっとする

そうだ、せっかく友達になってくれたパンを巻き込むわけにはいかない
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