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しおりを挟むバルジアン…なんでこんな目に…
そっとバルジアンの背中を押すと、バルジアンの背中はぷるぷる震えていた
「全員、顔、覚えたからな」
あっ
そういうところだ。そういうところも手伝っていると思う。
あまりにのバルジアンの凶悪な表情に場の空気が凍る
ぴたりと止まった哄笑に、大きな箱を抱えたまま急いで門から出ると、バルジアンはもう泣いていなかった。
けろりとした顔に不安が過ぎる。
「ば…バルジ……」
「行こう。良い出来だといいんだけど」
ぐいぐいとバルジアンに手を引かれて、今度は宮殿の方に向かう
そこでまた箱を受け取って、御殿に帰る頃には陽が傾いていた
いつものバルジアンの海が見える執務室の机に箱を2つ重ねておくと、バルジアンが大きな箱、つまり皇后からもらった箱を撫でていた
バルジアンも思うところがあるのだろう
「席を外しましょうか?」
バルジアンに聞くと、首を振った
「それよりも、これ…ああ良い出来だ」
宮廷から受け取った箱の中には更に青いベルベット生地の箱が入っており中から、あの蒼い宝石で形どられた首飾りを手に取り、俺の後ろに回りつける
重たくひんやりとした首飾りを不思議に思いながら振り向くと、バルジアンが慈愛の微笑みを浮かべていた
なんだこれ
これはデザイヒンの宝石ではなかっただろうか
モンちゃんが偽物を盗んで行ったらしいが
「これをつけているのを見られたらモンちゃんが…」
なにかされないだろうか?
「命令だ。ずっとつけていろ。そんなに長くはないだろう…、それとこれ…」
もう一つ箱の中に入っていたのは、大きめの真鍮でできた懐中時計だった
丸い冷たい感触に、受け取るとバルジアンが時計の部分を指差す
「これは肌身離さず身につけてね。ここ、この針が5のところに来たら必ず帰ってくること」
淡々と言うバルジアンに、ん?と思う
これもしかして、門限決められてない?しかも母親でもなくバルジアンに
「本当に…暗くなるまで遊んで困る」
大人っぽく言ってくるが、別に俺は遊んでいるわけではない。食料調達のために働いているのに、この言い種よ
「ちょっと待ってほしい。俺は遊んでいるわけでは…」
俺の抗議を指先をあててきて封じる
「逆らうな」
こんなところは王族っぽいんだよな
ぐうっと黙った俺に抱きつきながら、バルジアンは腕や肘をさわさわと触ってくる
アンダーシアンと同じような動きなので、多分、魔法に関わる事だろう
「道は通っているから、すぐ使えるようになるだろう。毎日こうして手を翳して、手のひらに集中する練習から始めよう。手のひらから光が出たら教えてくれ」
耳元で擽る様に囁いて、バルジアンの手が離れる
なんとなくそれが寂しいように思うのは何故だろうか
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