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しおりを挟む「今日は此処で野営だな。おい、お前たち2人は見張り番しろよ」
ニヤニヤしながら言ってくるロイに、バルジアンが物凄い表情で振り向こうとしたのを、腕を引いて止める
「わ、わかりました!休んでください!俺たちは、ちょっと周りを見てきますので!!」
不服そうなバルジアンの口を塞ぎ、腕を引いて、岩の影に連れていく
もう限界なんだ…
「みず、水をください、バルジアン様…」
懇願するようにバルジアンに頼むと、バルジアンの機嫌が浮上していくのがわかる
「頑張ったからな。ご褒美だ。まずは綺麗にしてからにしよう」
大量に水を被った後、泥が溶けて流れ落ちていくのがわかる
血生臭さも消え、ぷるぷる頭を振りながら、水を舐めているとバルジアンの指を唇に差し込まれ、甘く感じる水を貪るように飲み込む
バルジアンが笑っている気配がする
直に触れる指の感触に、シャツを着ていない事を思い出す
喉から水が溢れ、目を開くとバルジアンが熱い目で此方を見ていた
視線で炙るように、胸元や腹、唇から溢れる水を見ている
やがて指が抜かれ、首に腕を回すとバルジアンが触れるだけのキスをしてきた
「無事で、良かった…」
バルジアンの長い指が頬を撫でながら、温かい熱風で髪が乾いていくのがわかる
「こんな姿、誰にも見せられないな…うーむ、茎と蔦から繊維とコボルトの毛皮を失敬するか…」
俺の口に干し肉を放り込みながら、テキパキといつものように、被服を作成していくバルジアンを座って眺める
いつ見ても、綺麗な魔法だ。きらきらと光を放ちながら、糸を作り、形になっていく
「ヒーラーの服ってこんなんだよな。お揃いにしよう」
少し楽しそうなバルジアンを、ニコニコして待つ
なんだか、幸せだなあと思いながら
出来上がった白い羽織の服を受け取り袖を通す。バルジアンから貰った懐中時計も忘れないように、鎖を服に通す。帯まで準備してくれて、コボルトを使ったからだろうか肌触りの良さに頬擦りしたくなる。
ドラゴンの皮の編み込みサンダルまで作成してくれたので、ボロボロになっていた靴を捨てて、ありがたく履くと、バルジアンも自分用のサンダルを履いていた
バルジアンはフードもついている仕様で、それを被ると、宝石みたいな蒼い目をほそめ手を取られた
「生存率を上げるために、あいつらに着いていこう。でも下に行くつもりなんだよな?」
バルジアンの言葉に頷く。子ドラゴンを屠りまくった下の階層に戻るのは、気が進まないが、メビウスが強く行きたがっているし、仕方ないだろう
「ドラゴンがいたら、また隠れたらいいんじゃないですか?まだ二層あるらしいですけど」
「いや、下の階層で最下層だ。アンダーシアンの嫌がらせなんだから、あそこが最下層だろう。ただ、二つに分かれているから二層と言ってるのかもな。本当にやばいのはドラゴンじゃない……あれがいるから駆除しておきたかったドラゴンと対峙しなかっただけだし…」
「おい、ちゃんと見張しろ!これだから坊ちゃんは……誰だ?お前ら…」
考え込むバルジアンの背中から、鋭い声がかかる。ライモンに振り向くバルジアンを見て、ライモンが目を白黒させていた
まあ、無理もない。ガタイの良さはそのままだが、先程まで見窄らしい泥まみれ血塗れの人だったのだ。今のキラキラした姿は同一人物には見えないだろう
「あー、すみませぇん。見張ってるので、ゆっくり休んでくださいねー。」
嫌味っぽい返しに、バルジアンだとわかったのだろう。ライモンはむっとした表情で踵を返した
「ダメですよ、バルジアン様、友好的じゃないです…」
諌める俺の頭を撫でて、手を引いてバルジアンと戻れば、全員絶句していた。
そうだろう、そうだろう。
あふれる気品、流れる白髪、艶やかな体つき、白いまつ毛に縁取られた宝玉のような蒼い瞳は、国宝ウォータームーンにも引けを取らない
こんな美貌見た事ないだろう。メビウスですら、ぽーと頬を赤らめている
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