Amor et Odium

佐野絹恵(サノキヌエ)

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この村に帰って来たのは、いつぶりだろう?

幼い頃、過ごした村の土地を
十数年ぶりに踏んでいた

この村には仲が良い幼なじみがいる
今では村の神父様だ

近頃、長年交際していた婚約者と
婚礼式を挙げたらしい

結婚式の招待状が来ていたが
残念な事に参加は出来なかったがな

そんな幸せの絶頂の奴が…死んだ…
いゃ、何者かに殺されたと言った方が正確だろう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日は彼奴(あいつ)の葬儀の日

村、唯一の教会の入口に
大勢の人集りが出来ている

はぁ…

思わず、その光景に溜息が漏れる

彼奴…ジャンは人当たりが良く
思いやりもあったからな
村の連中にも好かれていただろ

俺は大勢の人の間を通り抜け、教会の中へ入る





教会の先端部、祭壇に黒い棺(ひつぎ)がある
棺の前で大勢の人達が涙を流していた

その中に泣き崩れている女性がいる

女性…エマはジャンの妻
エマの両親が肩を抱いていた

「…エマ…」

エマの姿に戸惑いが隠せない
俺とジャンとエマは仲が良く、よく遊んでた

幼い頃からエマは気が強く
大人になった今も性格は変わらないと
ジャンの文に記されていた

そんなエマがあんな姿で泣くなんて

「セドリックか、久しぶりじゃのぉ」

声を掛けてきたのは、この村の村長

「村長、お久しぶりです」

「見ての通り…この状況じゃ
こんな時に、申し訳ないんじゃが…
話しがある、少しええかのぉ?」

村長のお願い俺は頷き、教会を後にした





教会を離れ村長の家に移動する

椅子に座る様に促され、椅子に座ると
ミルクが入ったコップを差し出される

「………」

それを受け取るが、口には一切しない
隣の椅子に村長は腰を下ろすと訪ねる

「村長、お話と言うのは」 

「おぉ、そうだったのぉ
…ふむ…おぬしは教会の聖職者だったな?」

「はい」

そうだ
ここではないが、俺も教会の神父をしている

「では、例の話は伝わっているかね?」

「例の話?」

村長の問いに、俺は何気なく村長の顔を見た
……………
自身の顔の血の気が引いていくのを感じる

「さて…何の話の事か…俺には分かりません
申し訳ないですが、話しは切り上げてもらいますよ
街の様子を見てきます」

その場から離れたかった俺は
話しをはぐらかし、椅子から立ち上がると
急いて村長の家を後にした

村長の家を少し離れた所で駆け足になる 
向かったのはエマの家

もうここは危険だ

村長はもう人間ではない…
彼の眼球は全てが黒に包まれていた

上からの指示通り、例の物は持ち帰らせて頂く

エマの家に辿り着くと
玄関のドアを開け、中へ侵入する
早速、物色し始める

「…あった…」

エマの家の中の物が少ない事もあり
探し物は直ぐに見つかった

俺達が幼い頃の思い出の品

年季の入った小さい木箱には
幼い頃、遊んだ玩具が多く入っている

それを片手で持ち上げると
家から出ようと玄関のドアを開けた

!?

先程まで教会にいた村人達が…
そこに…目の前にいる    

しかも、此奴(こいつ)達も村長と同様に
黒い眼球をしていた

目の前にいる奴等(やつら)も…もう人ではない…

俺は逃げる様にその場を立ち去る
後ろを振り向き村人達を確認した

俺の事を指を差し何かを言っている…

「ん…ころ…つぎ…」

集中して村人の唇の動きを見る

!?

言葉を読み取った瞬間、恐ろしくなり 
村の近くで休憩させていた馬に飛び乗り
村から立ち去った
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
奴等は俺に【次、来たら殺す】と
俺が去るまで口を動かし、同じ事を繰り返していた
次この村に入った時、それが俺の最期だ
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