2 / 48
第一章 別れの後に、出会いがある。
その男、恋敵につき。
しおりを挟む
「……さて、と」
(悲しい願いと書いて)悲願達成し、ラブホを一人で抜け出したはいいものの、まだ外は真っ暗だった。
そりゃ、そーだ。
時計を見ると、まもなく午前3時を回ろうとしているところだ。
「……ふーう」
いや、いっそ清々しいほどのピンチじゃん。
始発まで、あとまだ1時間以上もある。俺はあと、1時間以上も女装したままで(なんで女の子の服ってこんなに薄いの!?)、クリスマスに、こんな姿で街中をうろついてないといけないのか……?
うっかりネットカフェでも入ったら、朝までぐうすか寝ちまいそうだし、ビジネスホテルは……いや、無理だな。変質者扱いで通報されかねねーし……。
ふと、こんなときに思い浮かぶのは、いつだって、「たろさん」のことだ。
たろさんは、俺が高校時代に山田と連れ立って、よく行ってた本屋のバイトの人なんだけど、なんと名前を山田太郎という。
山田とごっちゃになるから、「たろさん」と呼ばせてもらってるけど、たろさんは、その平凡すぎる名に相応しくないくらい、めちゃくちゃイケメンな人だ。
俺らは、ただの「本屋の店員と、客」っていう、薄い関係ではあるんだけど、でも俺たちには絶対的に分厚すぎる共通点があった。
俺と、たろさんとは、なんと恋敵なのだ。
初めて、そのことを知ったとき、めちゃくちゃ驚いたし、フツーに信じられなかった。だって、たろさんみたいなイケメンが、なんでわざわざ山田を好きになるんだよ、ジョーダンだろと、俺はちょっと詰め寄っちゃったかもしんない。(もち、山田もめちゃくちゃイケメンなんだけどな、ぐふふ)
……そのときに、俺は、たろさんにゲイであることを教えてもらったってわけ。
しかも聞いてみれば、たろさんが山田を好きになったの、まだ俺たちが高校生のときらしくて、ほぼ俺と片想い歴がおんなじだったから、マジでビビったんだけども。
まったく、山田も罪作りな男だよなあー。
――そもそも、たろさんに声をかけたのは、俺の方だった――
大学に入って、ほぼ山田と音信不通になっちゃった俺は、たまに暇なときなんかに気が向くと、駅前の本屋に立ち寄るようになっていた。
そこは、いわゆる高校時代に、よく山田と2人で通っていた本屋で……。まあ、正直、ワンチャン山田に会えるかもと期待していたわけだが、何度行っても全く会える気がしなかったから、思いきって店員さんに声をかけてみたのがきっかけ。
「……あのう」
「あ、大吉クンなら来てないよ、卒業してから一度も来てない(早口)」
「……えっと」
……ん?
俺まだ何も言ってねーよな……?
え?
なに、この人……えっ、コワイ……!
いや、まさか、たまたま話しかけた本屋のバイトが恋のライバルだなんてフツー思わないじゃん? しかも、たろさん、山田との恋に願掛けして、もうずっと、髪の毛切ってないらしくて、めっちゃロン毛なんだわ。
でもそれ、何のための努力? 本屋の店員だから、客に声かけることもできねーし、ましてやナンパするなんてぜってえー無理だし(そんなん俺が許さねえし)、ロン毛やって何か意味あんの?
だけど、そう言えば言うほど、全部がぜんぶブーメランで、自分にも跳ね返ってきちゃうわけで……。
山田に会えるわけでもないのに、何で本屋に通ってんの? 奇跡的な運命みたいにバッタリ会えるとでも思ってる? 月9じゃねえーんだからさ!
……そんで、俺たちは、なんかめちゃくちゃ仲良しになったんだよな。恋敵だってのにさ、ウケる。
でもさ……。
限りなく報われない恋敵同士ってところで、仲間意識が爆上がりしたんだわ。
それから、ちょっと寂しいときとか、心にすき間風が吹いたときみたいなさ……あと、単純に山田の件で愚痴りたいときなんかに、気づいたら本屋に行くようになってて、しばらくしてLINE交換してからは、お互いたまに電話もする仲なんだよな。
まあ、フツーなら恋敵と仲良くなるだなんて、あり得ないんだろうけどさ。
俺にしてみりゃ、山田の話を気兼ねなくできる相手なんて、初めてだったから。そっちの方が重要だったってワケ。だって、人間って、誰だって話したいし、話を聞いてほしくてたまらない生き物だろ?
そんなわけで、俺は、気づけばたろさんに電話を掛けていた。
大都会のクリスマス当日、深夜3時の女装姿で。
(悲しい願いと書いて)悲願達成し、ラブホを一人で抜け出したはいいものの、まだ外は真っ暗だった。
そりゃ、そーだ。
時計を見ると、まもなく午前3時を回ろうとしているところだ。
「……ふーう」
いや、いっそ清々しいほどのピンチじゃん。
始発まで、あとまだ1時間以上もある。俺はあと、1時間以上も女装したままで(なんで女の子の服ってこんなに薄いの!?)、クリスマスに、こんな姿で街中をうろついてないといけないのか……?
うっかりネットカフェでも入ったら、朝までぐうすか寝ちまいそうだし、ビジネスホテルは……いや、無理だな。変質者扱いで通報されかねねーし……。
ふと、こんなときに思い浮かぶのは、いつだって、「たろさん」のことだ。
たろさんは、俺が高校時代に山田と連れ立って、よく行ってた本屋のバイトの人なんだけど、なんと名前を山田太郎という。
山田とごっちゃになるから、「たろさん」と呼ばせてもらってるけど、たろさんは、その平凡すぎる名に相応しくないくらい、めちゃくちゃイケメンな人だ。
俺らは、ただの「本屋の店員と、客」っていう、薄い関係ではあるんだけど、でも俺たちには絶対的に分厚すぎる共通点があった。
俺と、たろさんとは、なんと恋敵なのだ。
初めて、そのことを知ったとき、めちゃくちゃ驚いたし、フツーに信じられなかった。だって、たろさんみたいなイケメンが、なんでわざわざ山田を好きになるんだよ、ジョーダンだろと、俺はちょっと詰め寄っちゃったかもしんない。(もち、山田もめちゃくちゃイケメンなんだけどな、ぐふふ)
……そのときに、俺は、たろさんにゲイであることを教えてもらったってわけ。
しかも聞いてみれば、たろさんが山田を好きになったの、まだ俺たちが高校生のときらしくて、ほぼ俺と片想い歴がおんなじだったから、マジでビビったんだけども。
まったく、山田も罪作りな男だよなあー。
――そもそも、たろさんに声をかけたのは、俺の方だった――
大学に入って、ほぼ山田と音信不通になっちゃった俺は、たまに暇なときなんかに気が向くと、駅前の本屋に立ち寄るようになっていた。
そこは、いわゆる高校時代に、よく山田と2人で通っていた本屋で……。まあ、正直、ワンチャン山田に会えるかもと期待していたわけだが、何度行っても全く会える気がしなかったから、思いきって店員さんに声をかけてみたのがきっかけ。
「……あのう」
「あ、大吉クンなら来てないよ、卒業してから一度も来てない(早口)」
「……えっと」
……ん?
俺まだ何も言ってねーよな……?
え?
なに、この人……えっ、コワイ……!
いや、まさか、たまたま話しかけた本屋のバイトが恋のライバルだなんてフツー思わないじゃん? しかも、たろさん、山田との恋に願掛けして、もうずっと、髪の毛切ってないらしくて、めっちゃロン毛なんだわ。
でもそれ、何のための努力? 本屋の店員だから、客に声かけることもできねーし、ましてやナンパするなんてぜってえー無理だし(そんなん俺が許さねえし)、ロン毛やって何か意味あんの?
だけど、そう言えば言うほど、全部がぜんぶブーメランで、自分にも跳ね返ってきちゃうわけで……。
山田に会えるわけでもないのに、何で本屋に通ってんの? 奇跡的な運命みたいにバッタリ会えるとでも思ってる? 月9じゃねえーんだからさ!
……そんで、俺たちは、なんかめちゃくちゃ仲良しになったんだよな。恋敵だってのにさ、ウケる。
でもさ……。
限りなく報われない恋敵同士ってところで、仲間意識が爆上がりしたんだわ。
それから、ちょっと寂しいときとか、心にすき間風が吹いたときみたいなさ……あと、単純に山田の件で愚痴りたいときなんかに、気づいたら本屋に行くようになってて、しばらくしてLINE交換してからは、お互いたまに電話もする仲なんだよな。
まあ、フツーなら恋敵と仲良くなるだなんて、あり得ないんだろうけどさ。
俺にしてみりゃ、山田の話を気兼ねなくできる相手なんて、初めてだったから。そっちの方が重要だったってワケ。だって、人間って、誰だって話したいし、話を聞いてほしくてたまらない生き物だろ?
そんなわけで、俺は、気づけばたろさんに電話を掛けていた。
大都会のクリスマス当日、深夜3時の女装姿で。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる