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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 魔女は壁に布をはり、そこに大きくハートを描いて得意げにしている。
 
 「だから、見えないって……はぁ……」
 相変わらず、ほぼ見えていないという事を考えていない魔女に魔狼はため息をつく。
 
 「実に微笑ましい光景だと思う、見守ってやろう。若い時は失敗も必要だ」
 魔女の行動を微笑ましいと言ってのけたのは、爪を封じられた毒竜だ。
 毒竜は長い時を生きているせいか妙に爺臭い。
 四天王の年齢順でいうと毒竜、吸血鬼、魔狼、差が開いて魔女なので孫でも見てる気分になっているのだろうか。
 
 「……ん? 魔王様っていくつだっけ」
 「さぁ。私より年上だったはずだが、聞いたことはないな」
 毒竜は首を傾げる。そういえば魔王様はいくつなのか、自分が子供の頃には既に今の姿だったので上なのは確実だろう。
 
 「マジか爺さんより上って……」
 「爺さんと呼ぶな。せめてお爺ちゃんと呼びなさい」
 大差ねぇよ、と魔狼は思ったが妙な拘りのある毒竜の前では言葉を飲み込む。
 
 
 魔狼と毒竜が世間話をしている間に、伝わらなかった魔女がしょんぼりと肩を落として布を回収していた。
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