話せない魔女と見えない魔王

福々 ゆき

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才能はない

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 魔女はぎこちない手付きで楽器を練習していた。どうやら音楽で気持ちを伝えるらしい。
 いつもの魔女と違い、まともな手段だった。
 
 魔女は目の前に並べた楽器を満足そうに見ている。これだけ集めれば自分に合ったものが見つかるだろう。
 先ずはピアノ、何故ビョーンと鳴るのだろうか、却下。
 次はヴァイオリン、悪魔の叫び声みたいな音がでた……止めておこう。
 その次はサックス、落とした。悲しい。
 気を取り直してフルート、鳴らない。
 諦めずにいこうクラリネット、鳴った! しかし狼の遠吠えのような音だった。
 何となく嫌な予感が……いやまだ諦めるのは早い、次は…………!
 
 …………。
 
 
 
 「一応聞くけど、何やってんだ魔女」
 魔狼の前に、何故かポクポク鳴っているカスタネットを叩いている魔女がいた。
 魔女に楽器の才能は無いらしい。
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