話せない魔女と見えない魔王

福々 ゆき

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報告はありません

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 暇をもて余している魔王が、何か変わった事が無いか配下の四天王に聞いている。
 
 「変わった事っすか。そういえば最近、妹に子供が生まれました!」
 「うむ。それは変わった事では無くめでたい事だな、魔狼。後で祝いの品を送っておこう」
 嬉しそうな魔狼に魔王は頷いて返事をする。望んでいたような報告では無いが、これはこれで喜ばしい出来事だ。

 「他には無いか?」
 「他にですか、実はお城にあったワインが全部無くなっているのです! これは由々しき事態ですよねぇ」
  片手に空のワイングラスを持った吸血鬼がつまらなそうに言っているが、犯人はこいつである。

 「……貴様またやったな?」
 魔王が鋭い視線を送っても吸血鬼は、ふふふと笑うだけだ。酔っぱらいめ、と魔王はため息をつく。

 「魔王様、私が吸血鬼を少々叱ってきます」
 「ほどほどにな、毒竜」
 毒竜は吸血鬼を引きずって部屋を出ていった。



 「そういえば魔女はどうした?」
 いつも、ちょこちょこと動いて何かをしている魔女が、今日は静かにしている。

 「寝てます」
 「ん ?」
 「カスタネットがポクポク鳴ったのでふて寝してます」
 「わからん」
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