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諦めないこの想い

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 魔女と魔王がじっと見つめ合って(?)いる。何処か既視感のある光景だ。

 「先程から魔王様と魔女があのまま動かないのだが……」
 「またか。ちょっと行ってくる」
 目の前の光景に首を傾げる毒竜を置いて魔狼は魔女に近寄った。

 「おい、また念話か……っと!?」
 魔女は魔狼に視線を寄越さずにずっしりと重いものを投げつけた。危ない。
 どうやら本のようだ。読めと言うことだろうか。

 「何だ? 《超上級者向け! 選ばれた者のみが出来る念話》……いや、難しけりゃいいってもんじゃ――」
 「わかった!」
 無い、と続けようとした魔狼の言葉をよく通る魔王の声が遮った。
 念話が通じた!? と驚愕している魔狼の視線と、期待に目を輝かせた魔女の視線が魔王を向く。

 「我のマントが欲しかったのか! 今日替えたばかりだがよくわかったな」

 魔王は笑いながら、一枚やろうと若干涙目の魔女にマントを手渡した。そうじゃない。
 魔狼は微妙な表情でその光景を見ていた。


 「あー……残念だったな、魔女。やっぱ念話は無理……」

 (魔女は手元をじっと見た後、嬉しそうにマントを付けてその場でくるくる回り始めた)

 「……これはこれで嬉しそうだな」
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