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わからない

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 聖騎士と魔女がお茶会をしている。

 何故こうなったという疑問に答えは出ず、魔女はぬるいミルクティーをこくりと飲んだ。

「……はぁ」
 先程からため息をついている天使族の聖騎士は、普段から無口で無表情だ。
 何となく機嫌が悪いような気がするものの、その表情はピクリとも動かない。

 ため息をつきながらすごい勢いでクッキーを消費している――魔女の分が無くなった――聖騎士の表情を読み取る能力など、魔女には無い。

 ただ、聖騎士の白い羽は苛ついたようにバサバサとはばたいていた。
 そこそこ煩い。

「……聖女様」
 ぽつりと聖騎士が呟く。

「……聖女様は可憐で……お優しい」
 惚気だろうか。魔女は隠していたカップケーキをちまちま食べながら、適当に頷いた。

「その優しさにつけ込んであいつ等は……鬱陶しい」
 嫉妬? 嫉妬の話? と魔女が首を捻っていると聖騎士は小さく呟き始めた。
 恐らく話というより独り言に近い聖騎士の言葉は、断片的でよくわからない。


「……切り落とすか」
 
 わからないのだが、何か怖い。
 

 魔女はこれで落ち着いてと思いながら、もう一つのカップケーキをそっと差し出した。
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