話せない魔女と見えない魔王

福々 ゆき

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わるくない

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 聖女が一人で訪ねて来た。

「うふふ、こんにちは。魔女さん」
 ふわりと花が咲く幻が見えるくらい、聖女の笑顔は可憐である。
 にこにこと完璧に輝く表情のまま、愛らしい声で魔女に聞いた。

「聖騎士がここに来た、と聞いたのですが……」
 未だによくわからない変なお茶会を思い出して、魔女はこくりと頷く。

 瞬間。

「すみません! 悪気は恐らく無いのです……!!」

 ふわふわとした雰囲気が剥がれ落ちた聖女は
 何故か魔女に大きなケーキを押し付け、謝罪した。


 ……。


「少し過敏になっていたようです。お騒がせしました」
 落ち着いた聖女は恥ずかしそうに目を伏せている。
 魔女が聖女の言葉に首を傾げると、聖女は眉を下げた。

「……最近お兄様と聖騎士が周りを……あの、何と言えばいいのか……」
 魔女は、気まずそうに視線を逸らす聖女の言葉を止めた。

 聖女の兄は聖王である。

 その聖王と聖騎士の二人が、周りに何をしたのか魔女は察した。
 聖騎士も聖王と一緒に『羽虫』潰してる。

「胃が痛い……」
 
 魔女は心配そうな表情で胃薬を手渡す。
 愛しの聖女が胃を痛めている事実に、二人共早く気づいた方がいい。








 魔王の大雑把な助言の事は、速やかに魔女の胸に仕舞われた。
 まおうさまわるくない。
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