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1章-エルファッタの想いは伝わらない-
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「カラス様……!? やめ……っ……」
カラスは首に衝撃を与え、エルファッタを気絶させた。
エルファッタが最初に想像したカラスと同じような目つきをしていた。……冷酷無慈悲な目をしていた。
「ちょっと、勝手にされちゃあ困るよ。兄さん」
カラスが二人いた。いや、違う。カラスに似た人がいた。
「カラス。そんなこと言っている場合じゃない」
冷たくカラスを突き放す。どうやら弟がカラスのようだ。
「タカノア兄さん! エルファッタ嬢は人質だよ……」
兄はタカノアというらしい。先程エルファッタを引きずり部屋に連れてきたのはタカノアということになる。
「黙れ」
タカノアが一言を言うと、カラスは黙る。謎の魔力が込められたみたいだ。
「エルファッタ嬢は元の世界に戻す。こちらに必要のないからな」
「え、待っ……!」
カラスが止める暇もなく、タカノアは消えた。エルファッタを連れて。
魔法には他者も巻き込む事ができるものもある。主な魔法は転移魔法だ。今、タカノアが使った魔法も転移魔法だ。
「ヒロインは……どうすればいいんだよ……」
髪をぐしゃぐしゃにする。カラスは乙女ゲームの存在、内容までも知っていた。
乙女ゲームの内容はこうだ。
乙女ゲーム、「乙女に捧げる薔薇を。」はヒロインが魔法、剣を使い、バトルをしながらも恋愛していくというよくあるゲームだ。ただ、他のゲームと違うところがある。それは攻略対象者の性格をゲームが用意した選択肢の中で変える事ができるのだ。選択肢は温厚、勤勉、ツンデレ、ヤンデレ、クール、寡黙(無口)、従順などがある。少し高いがその分人気だ。攻略対象者は皇子、アルファスから暗殺者まで多岐に渡る。攻略対象者は公式では発表されていない。
「はぁ……」
カラスは一人溜め息を吐く。
そうしていたら、扉がバタン! と大きな音を立てて開く。
「エルファッタはどこ!? …………しなきゃいけないのに」
アオイは一瞬冷静になったかと思えば、また興奮してくる。何をしなければならないのか聞き取れなかったが、カラスは何かやばい事だとわかる。
「お、落ち着いて! ヒロイン……」
「そうよ、私はヒロインなのよ! なのに誰かに洗脳されて……」
カラスはアオイが可笑しくなったのか頭を悩ませる。
そうこうしている間にもアオイは暴れ回る。ガシャーン! と音がしたかと思うとカラスに殴りかかってきた。カラスはさっと避けたが、止まれなかったアオイの手がガラスに向かっていく。
(ん……? アオイから魔法の匂いがする)
横に通り抜けた時にカラスが匂いを嗅ぎ分けた。カラスは鼻が良い。
ガラスにひびが入る。と同時に呪文を唱える。
「ύπνος」
アオイにかけられた魔法がカラスの魔法を避ける。カラスの誰にもかけられなかった魔法は光の玉となり、消えていく。
「これは面倒だ」
「エルファッタ様を出して……」
アオイにはもう自我がなかった。
***
「エルファッタ嬢を返します」
突然現れたカラスによく似た人物。そう、タカノアがカリアの目の前に出て話しかけていた。
「は……?」
急に現れ、エルファッタを返すと言われたら誰もが唖然とするだろう。タカノアはそんなことも気にせず来た。
「こっち側にはもう必要ない」
そう言ってエルファッタを残して消え去った。
とりあえず、エルファッタをソファの上に乗せる。クッションを枕代わりにした。
「……エルファッタ様……」
エルファッタを揺らす。
何も反応はない。まるで屍のようだ。
起きそうだが、少しも起きない。魔法が使われている気配はない。でも、寝ているだけではないとここに居る誰しもが思った。
カラスは首に衝撃を与え、エルファッタを気絶させた。
エルファッタが最初に想像したカラスと同じような目つきをしていた。……冷酷無慈悲な目をしていた。
「ちょっと、勝手にされちゃあ困るよ。兄さん」
カラスが二人いた。いや、違う。カラスに似た人がいた。
「カラス。そんなこと言っている場合じゃない」
冷たくカラスを突き放す。どうやら弟がカラスのようだ。
「タカノア兄さん! エルファッタ嬢は人質だよ……」
兄はタカノアというらしい。先程エルファッタを引きずり部屋に連れてきたのはタカノアということになる。
「黙れ」
タカノアが一言を言うと、カラスは黙る。謎の魔力が込められたみたいだ。
「エルファッタ嬢は元の世界に戻す。こちらに必要のないからな」
「え、待っ……!」
カラスが止める暇もなく、タカノアは消えた。エルファッタを連れて。
魔法には他者も巻き込む事ができるものもある。主な魔法は転移魔法だ。今、タカノアが使った魔法も転移魔法だ。
「ヒロインは……どうすればいいんだよ……」
髪をぐしゃぐしゃにする。カラスは乙女ゲームの存在、内容までも知っていた。
乙女ゲームの内容はこうだ。
乙女ゲーム、「乙女に捧げる薔薇を。」はヒロインが魔法、剣を使い、バトルをしながらも恋愛していくというよくあるゲームだ。ただ、他のゲームと違うところがある。それは攻略対象者の性格をゲームが用意した選択肢の中で変える事ができるのだ。選択肢は温厚、勤勉、ツンデレ、ヤンデレ、クール、寡黙(無口)、従順などがある。少し高いがその分人気だ。攻略対象者は皇子、アルファスから暗殺者まで多岐に渡る。攻略対象者は公式では発表されていない。
「はぁ……」
カラスは一人溜め息を吐く。
そうしていたら、扉がバタン! と大きな音を立てて開く。
「エルファッタはどこ!? …………しなきゃいけないのに」
アオイは一瞬冷静になったかと思えば、また興奮してくる。何をしなければならないのか聞き取れなかったが、カラスは何かやばい事だとわかる。
「お、落ち着いて! ヒロイン……」
「そうよ、私はヒロインなのよ! なのに誰かに洗脳されて……」
カラスはアオイが可笑しくなったのか頭を悩ませる。
そうこうしている間にもアオイは暴れ回る。ガシャーン! と音がしたかと思うとカラスに殴りかかってきた。カラスはさっと避けたが、止まれなかったアオイの手がガラスに向かっていく。
(ん……? アオイから魔法の匂いがする)
横に通り抜けた時にカラスが匂いを嗅ぎ分けた。カラスは鼻が良い。
ガラスにひびが入る。と同時に呪文を唱える。
「ύπνος」
アオイにかけられた魔法がカラスの魔法を避ける。カラスの誰にもかけられなかった魔法は光の玉となり、消えていく。
「これは面倒だ」
「エルファッタ様を出して……」
アオイにはもう自我がなかった。
***
「エルファッタ嬢を返します」
突然現れたカラスによく似た人物。そう、タカノアがカリアの目の前に出て話しかけていた。
「は……?」
急に現れ、エルファッタを返すと言われたら誰もが唖然とするだろう。タカノアはそんなことも気にせず来た。
「こっち側にはもう必要ない」
そう言ってエルファッタを残して消え去った。
とりあえず、エルファッタをソファの上に乗せる。クッションを枕代わりにした。
「……エルファッタ様……」
エルファッタを揺らす。
何も反応はない。まるで屍のようだ。
起きそうだが、少しも起きない。魔法が使われている気配はない。でも、寝ているだけではないとここに居る誰しもが思った。
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