異世界からの送り者

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1章-エルファッタの想いは伝わらない-

015

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 エルファッタは飲み込まれていく。手から垂れていく黒くどろどろの液体。
「……たす……け…………」
 青い光がぼんやりとき来ているのがわかる。でも、黒い液体が跳ね返す。そうかこの液体は、私の憎悪、邪悪なるものなのだとようやくわかった。

 醜く穢れていく姿など、誰にも見てほしくない。エルファッタが選んだのは拒絶だった。エルファッタの美しい髪色が、瞳が、爪が穢れていく。髪色と瞳と爪は黒色へ。肌はもっと白く変わっていった。穏やかでありそうな目つきは何も思わない無感情な人にも思えた。エルファッタとは別人のような、そうじゃないような違和感に囚われる。いや、エルファッタの心の奥底に眠っていた、いつもなら目覚めなかった人格が目を覚ます。それがこの変わってしまったエルファッタの正体なのだろう。

「もう、二度と穏やかなエルファッタという人格に会えないようにしなきゃ」
 そう変わってしまったエルファッター変わってしまったエルファッタの事はクロと呼ぶことにするーは呟いた。涙は枯れ果てたようにいつもの人格ではない事を悲しむことはない。支配していた穏やかな人格は眠り、新たな人格の誕生を迎えたのだからそれは当然だろう。

 また青い光が来る。それに触れる。すると、パチと音を鳴らしてクロを包む。相性が合わないのかバチバチとさらに鈍い音を鳴らす。バチバチと鳴らすあれは、電気か何かなのだろう。クロもそれを感じているようで、苦痛に耐えていた。そして一面真っ白になった後、暗転した。怖くなったので、クロは目を開ける。目に入ったのは、カラスにカリアや父、アルファスの姿だった。

「エルファッタ……!」
 クロは舌打ちを鳴らす。
「うるさい」
 低い声でとても不機嫌そうに言う。
「起きて早々これ? 全く、目障りにも程があるわよ」
 ここに居る皆は目を真ん丸にしていた。
「は……? どうしたんだ、エルファッタ……」
 父、ロイアスファルが言う。クロはしかめっ面をする。
「あーあー、うざいうざい! だから静かにしろって言ってんだよ!」
 クロは無詠唱魔法を使う。
σκάσε το στόμα σου黙れ
 クロとカラス以外の人は口を閉ざされている。無理矢理にだ。
「なんで、お前は閉じないのよ!」
「訓練受けてるんだよ~。こんなので勝つと思ってんの? ま、威力は強いけどね」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ。カラスが煽ったおかげで、少し隙ができたみたいだ。エルファッタが出てくる。
「助け……っ!」
 急に人格が変わったりするものだから、可笑しくなったのかと思った。だが、人格が変わっていることに気づく。アルファスを除いて。

 アルファス以外の人は無詠唱魔法を使い、クロという人格を殺そうとする。精神破壊魔法だ。精神は破壊されるもすぐに治せば、問題はない。スピード勝負だ。その考えは一致した。
 カラスは関係ないが、エルファッタをこうしたのは兄のせいでもあるから、尽くせるところは尽くしたいと思っている。
 だが、その前に念話を使う。

⦅今から、エルファッタに精神魔法を使うが、異論のあるものはいないか⦆
⦅ありません⦆

 シリズール伯爵が指揮を取る。

⦅では、始めるぞ。カリアは精神破壊魔法の使い手を、カラスは精神修正魔法を。その他は応援を⦆
⦅わかりました~⦆

⦅では、作戦開始!⦆

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