異世界からの送り者

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1章-エルファッタの想いは伝わらない-

017

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 エルファッタは満面の星空の下、湖の上にいた。湖に星空が風が吹いて、銀髪が靡く。
「ここは……?」
 口は動いたが、体は自らの意思で動かせなかった。手を前に出そうとしてもなんらかの力が働いて、動かせない。
「私の事はクロって呼んで。ここはエルファッタの中、魔力で作られた空間だと思ってちょうだい」
 クロは自分の髪を見て言う。
 後ろに人の気配がする。後ろに振り向けないが、声でわかった。これはもう一人の私だと。
「あなたはもう一人の私ね?」
「ええ、そうよ。今、拘束を解いてあげるわ」
 もう一人のエルファッタ……クロは、指をパチンと鳴らした。エルファッタは後ろを向く。そこには、黒髪も黒目も爪も黒くなっていた私、エルファッタがいた。顔は似ていて体型も形は何もかも同じなのに、少し違うところがあってなんだか違和感にかられる。
 クロはエルファッタを見つめていた。
「……あなたが正真正銘の人格。私は偽物ね……」
「何を言っているの」
 エルファッタはクロに近づく。クロはそのことに気がついて、一歩後ずさる。
「なんで……っ!」
「私は、偽物よ。なエルファッタが触ったら、あなたまで黒く染まって……!」
 エルファッタは目を見開く。
「私は純粋無垢じゃないわ」

 その間にもエルファッタは近づいてくる。パシャンと音を鳴らす。
「クロは私のなりたかった人格だと思うから。エルファッタもクロにも本当、偽物なんかないから」
 クロは顔を上げる。クロとエルファッタの手が合わさる。
「そんな……」
 クロは頬を染め、上目遣いをする。

「私はエルファッタだけど、あなたもエルファッタよ?」
「でも、貴族達が……」
 反論する。クロは怪しく笑う。
「ふふ、あっははは!」
 涙が出るくらい笑っていた。エルファッタは戸惑う。クロのさっきまでの態度が豹変した。
「そんな綺麗事を並べてよく恥ずかしくないわね! この私はエルファッタのなりたかった人格? 馬鹿言わないでちょうだい」
 エルファッタは目を見開く。どう反応すればいいのかわからない。
「私は、人によって作られた害あるものなのよ! ……あなた如きがマスターを名乗らないでよ」
 クロは足の先から黒いモヤになる。エルファッタにどんどん近づいてくる。
「……ぅ…………」
 クロはエルファッタに抱きついてくる。
「私はあなたを乗っ取るためできたのよ」
 その声は震えていた。泣いていたのかもう確認できない。
 エルファッタの周りにはモヤがあった。

 エルファッタがこの魔力で作られた空間から消えた時、エルファッタの銀髪とクロの黒髪が揺れた。
 誰かが呟いた気がした。「ызы-чуулуу. баары жок болот」と。


 エルファッタとクロが会うために作られた空間。満面の星空を眺めている二人がいた。

「エルファッタは邪魔者だね」
「そうだね」

「消さないと。この世界から」

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