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1章-エルファッタの想いは伝わらない-
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謎の二人は容姿がとても似ていた。おそらく双子だろう。褐返色の髪に両サイドの髪が片方だけ出ている。一人は右で、もう一人は左だ。他国の王子のような服を着ていた。
「エルファッタは本当のシナリオ通りに進んでくれたらよかったのに」
「裏切りやがって、カラス」
二人の青年は顔を見合わせる。
「「俺たちが戻そう。エルファッタが死ぬ世界に」」
***
エルファッタは何処かの室内で昏睡していた。室内はとてもアンティークなもので埋め尽くされていた。クロはエルファッタが起きるのを抑えているから、いつまで待ってもエルファッタは起きない。
「マスター……今はどこにいますか? 顔も何もかも忘れてしまった……だけどあなたをずっと求めています」
マスターはクロを作り出した張本人だ。マスターの何もかもを忘れたというのに、探し求める。そこまでして会いたいのか。そう問いたい。
「エルファッタを媒体にしていつか会いにいきます」
握り拳を作る。
またエルファッタが起きようとする。それをまたクロが抑えている。
「ύπνος」
エルファッタという人格が眠っている水の中hq手錠などをかけられているくらい体が重かった。ぶくぶくと泡が出るが、普通に息ができた。
エルファッタは抗っていた。クロに勝つために。少しだけでもエルファッタという人格を出すために。必死に水の上へ浮かんでいきたい。でも、体が重い。動かなかった。
そのエルファッタは眠っている間にクロの記憶を見ていた。
クロはモヤとして生まれてきた。クロは空気中を飛び、世界中を旅した。空気の流れに身を任せて、世界を見た。貧困で困っている人も見たし、虐待で痣だらけな子も見た。でも、知識と加えられるだけで、助けてあげられない。可哀想など思わない。感情もただ彷徨う気体なのだから。時には人の転移魔法を使う現場に居合わせ、違う世界などへ来てしまったり。そんなこともあった。
クロはただの気体だが、知識を蓄えていたことで人や動物などにもなれた。でも、クロはいつもマスターを求めていた。人は必ず親を持っていると聞いた時からマスターを追い求めた。
人間の学習能力という性質が加えられていたらしい。
でも、生まれてから長い年月が経っていた。
マスターの家も知らないし、容姿も変わっている。何もかも忘れたし、知らない。でも、面影はあるはずだから。そう信じて探し回っていた。
そして今に至る、という感じだった。
エルファッタはクロについて、何かわかった気がする。世間知らずなお嬢様だけど、この世界の黒いところを見てきた。だからこうなったんだとそう思った。
『私の勝手な解釈をしないでちょうだい。……私は決してそんなんじゃないわ……』
エルファッタはごめんなさいと心の中で謝る。でも、通じない。伝わらない。クロに触れたいけど、触れられない。助けてあげたいけど、助けられない……。
口も動かない。ただただ底に沈んでいくだけだった。
クロはエルファッタに怒っていた。でも、クロにとって新鮮だった。
「あーれ、なに住み着いてるの? このモヤ。とっちゃおうか?」
「いいね、そうしようか」
「エルファッタは本当のシナリオ通りに進んでくれたらよかったのに」
「裏切りやがって、カラス」
二人の青年は顔を見合わせる。
「「俺たちが戻そう。エルファッタが死ぬ世界に」」
***
エルファッタは何処かの室内で昏睡していた。室内はとてもアンティークなもので埋め尽くされていた。クロはエルファッタが起きるのを抑えているから、いつまで待ってもエルファッタは起きない。
「マスター……今はどこにいますか? 顔も何もかも忘れてしまった……だけどあなたをずっと求めています」
マスターはクロを作り出した張本人だ。マスターの何もかもを忘れたというのに、探し求める。そこまでして会いたいのか。そう問いたい。
「エルファッタを媒体にしていつか会いにいきます」
握り拳を作る。
またエルファッタが起きようとする。それをまたクロが抑えている。
「ύπνος」
エルファッタという人格が眠っている水の中hq手錠などをかけられているくらい体が重かった。ぶくぶくと泡が出るが、普通に息ができた。
エルファッタは抗っていた。クロに勝つために。少しだけでもエルファッタという人格を出すために。必死に水の上へ浮かんでいきたい。でも、体が重い。動かなかった。
そのエルファッタは眠っている間にクロの記憶を見ていた。
クロはモヤとして生まれてきた。クロは空気中を飛び、世界中を旅した。空気の流れに身を任せて、世界を見た。貧困で困っている人も見たし、虐待で痣だらけな子も見た。でも、知識と加えられるだけで、助けてあげられない。可哀想など思わない。感情もただ彷徨う気体なのだから。時には人の転移魔法を使う現場に居合わせ、違う世界などへ来てしまったり。そんなこともあった。
クロはただの気体だが、知識を蓄えていたことで人や動物などにもなれた。でも、クロはいつもマスターを求めていた。人は必ず親を持っていると聞いた時からマスターを追い求めた。
人間の学習能力という性質が加えられていたらしい。
でも、生まれてから長い年月が経っていた。
マスターの家も知らないし、容姿も変わっている。何もかも忘れたし、知らない。でも、面影はあるはずだから。そう信じて探し回っていた。
そして今に至る、という感じだった。
エルファッタはクロについて、何かわかった気がする。世間知らずなお嬢様だけど、この世界の黒いところを見てきた。だからこうなったんだとそう思った。
『私の勝手な解釈をしないでちょうだい。……私は決してそんなんじゃないわ……』
エルファッタはごめんなさいと心の中で謝る。でも、通じない。伝わらない。クロに触れたいけど、触れられない。助けてあげたいけど、助けられない……。
口も動かない。ただただ底に沈んでいくだけだった。
クロはエルファッタに怒っていた。でも、クロにとって新鮮だった。
「あーれ、なに住み着いてるの? このモヤ。とっちゃおうか?」
「いいね、そうしようか」
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