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予言は案の定的中した
なんだろうこの状況??
そんな疑問を抱きつつ、クラレンスは大人しく腰かけていた。
大きな手が不器用に頭をなでる。
わしゃわしゃと頭をなでる手はごつごつとして、剣を握ることに慣れた力強い手だ。
だけどその手つきは子猫でもなでるようにどこかぎこちない。
力加減を間違えてしまわないように、そんな感情が見えるようななで方だった。
「えっと……父さん?」
「どうした?疲れたか?」
「いや、それは一休みしたから平気なんだけど……」
心配そうに向けられた顔にふるふると首を振る。
長時間の移動というのは疲れるものだ。
自然とテンションがあがっている行きはともかく、帰り道となればなおさら。
実際、旅行を終え王都の屋敷に戻ってきたクラレンスはとても疲れていた。
帰りの馬車でもウトウトしていたがその疲れは取れず、みんなにただいまをしておみやげを配ったりしたあとはさっきまで部屋でお昼寝をしていた。
夕方になって目覚め、やがて帰ってきた父を出迎え……いまに至る。
「僕、なんで父さんのうえに座ってるの?」
クラレンスの疑問。
それはいまの自分の状況だ。
帰ってきた父は笑顔で「おかえりなさい」を告げたクラレンスに「ただいま」と告げたあと、スタスタと歩み寄ってその体をひょいっと抱き上げた。
そして着替えもせずにソファに直行し腰を下ろした。
クラレンスのお尻の下にあるのはソファではなく父の膝。
どっしりした父と小柄なクラレンスだから収まりは悪くないが……小さい子ならともかく、13歳の息子をお膝だっこはどうなのか?
疑問を抱きつつも疲れの滲んだ顔で「いやか?」と問われれば首を横に振るしかない。
別にいやなわけではない。
ただなんで?って疑問があるだけで。
筋肉質な太ももは固く、座り心地最高!とはならないが安定感は抜群だし。
「旅は楽しかったか?」
「うん。あのね…………」
謎状況のまま旅の思い出を語っていると、温かい紅茶が運ばれてきた。
「メイド長?」
セバスでもメイドでもなく、メイド長が給仕をするなんて珍しい。
「一週間近くもクラレンスが居らっしゃらなかったんですもの。わたくしたちも旦那様も寂しくて仕方がありませんでしたのよ」
「ティーセットを奪い取られてしまいました」
焼き菓子の皿を並べるメイド長のそばでセバスが苦笑いをこぼす。
そんな姿を見ながらパチパチと瞬き、首を父へと向ける。
ちょっとだけ気まずそうに視線を逸らした父はまた不器用に頭をなでた。
「イザークたちが居なくて書類仕事は大変だし、家に帰ってもお前たちは居ない。イリーネは拗ねてご機嫌ななめだ。少しぐらい癒しを補給してもいいだろう?」
ほんのりと赤い耳と、うろつく視線がおかしくてクラレンスは笑った。
「お仕事、大丈夫だった?」
「まぁ頑張った。いくつか終わってないのもあるが、書類が溜まらないように最大限努力はしたぞ?」
「ええ。旦那様は家でも書類を片してましたもの。褒めてあげてくださいね?」
「すごーい!お疲れ様、父さん!」
悪戯っ子のようなメイド長に促され、素直にクラレンスは称賛を口にした。
正直、書類が鬼のように溜まってるんだろうな……と絶望的な光景を思い浮かべていただけに、心の底からの労りだった。
きっとイザークたちも大喜びだろう。
セバスも主の頑張りに感激している。
「そうだ!お土産」
ふと思い出して声をあげるも……腰を支えたままのたくましい腕。
これは一度降ろしてって言うべき?とか考えている間に、使用人さんが魔法の鞄を持ってきてくれた。
ゴソゴソと中身を漁り、父へもお土産を渡しながら旅の思い出に話が弾む。
お土産話ならたくさんあるのです。
「明日はイリーネお嬢様が飛んで帰ってらっしゃるでしょうねぇ」
「確実に抱きつぶされるな」
楽しそうなメイド長の声に続いた父の真顔の一言に思わず黙る。
今日はお仕事で泊まりのイリーネだ。
恐らく父の予言は確実に当たるだろうと誰もが確信した。
女性だろうと現役騎士の姉や母の抱きしめはかなりの破壊威力なのだ。
それを考えると父のこのお膝抱っこはいたって平和的なのかもしれない。
父さんに本気で抱きつぶされたらたぶん死ぬ。
そんなことを思ったクラレンスだったのでした。
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