異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。

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お嬢さまの恋を見守り隊は不滅です! (ミーナ)

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自分を鼓舞し、必死に考えた結果……。

ぎゅっと固く拳を握り、決意を秘めた顔をお嬢様たちへと向けました。

「お嬢様方……いっそエリシュオン様に打ち明けられては?」

シルクお嬢様たちだけでなく、隊員たちも目を見開きます。

正気なの?!と心の声が聞こえてきそうなそれに、こくりと一つ頷きました。

「もう他に方法がありません……っ。エリシュオン様のあの悲し気なお顔に耐えられるのですか?」

誰もが苦し気に息を飲み、ふるふると首を振ります。

「ならばいっそ打ち明け、そしてご納得いただくよりないかと」

「そうね……。それが一番だわ……」

よろりと立ち上がったお嬢様がエリシュオン様へと歩み寄り、その細い両肩に手を置きました。
そしてこれから“聖オズワルドデー”のチョコ作りをすることを打ち明けます。

ご自分あてのチョコもあることと「どんなお菓子か当日まで楽しみにしててね」というお嬢様の言葉に納得していただけ、笑顔を浮かべたエリシュオン様に一同胸をなで下ろしました。

良かった……。

エリシュオン様つきのメイドも無事、沼から生還できました。
もちろん、クラレンス様たちに内緒にしていただくよう口止めも忘れていません。


さて、そんなこんなで乙女の聖戦に取りかかる前にだいぶ疲れ切っていますが……ここからが本番です。

髪をゆるく三つ編みにし、エプロンを身につけた超絶美少女たちの前にあるのは、きれいに焼き上がったクッキー。

「ではこれをテンパリングしたチョコに半分ほど浸しましょう」

料理長の言葉にお嬢様たちは重々しく頷きます。

その表情はいつかと同じく、真剣そのもの。

ちなみに、なんでクッキーが焼き上がってるかって?

生地作りや、焼きはともかく、型抜きはお嬢様たちがやっても……とお思いの方もいるかもしれません。

お嬢様たちの不器用さ、舐めんな……です。

型抜きって意外に難しいんですよ?

いえ、技術的にはそれほどの作業ではないですが……型から抜く時に指で押したらその部分が歪に伸びたり、形がくずれたり……。

ぶっちゃけ、お嬢様たちは不器用です。

可愛くて大事なお嬢様ですが、私は事実は事実として認める派です。

なので、失敗の可能性を排除するため、料理長には焼き上がったクッキーを用意して頂きました!

なお、不器用さは不器用さで認めているものの……これだけの才色兼備なお嬢様なんだから不器用ぐらいなんだとも思っております。

我が家のお嬢様は素晴らしいです!
そこは断固譲りません!!

最初は「これお友だち同士のお菓子作りだよね?」って疑問がわくほど、真剣ガチ顔で緊迫感に包まれていた厨房ですが、数を重ねるごとに楽しむ余裕もでてきたようです。

きゃっきゃっ言いつつチョコがけしたクッキーをトッピングしていくお嬢様たち、眼福です。

なんなら絵師を手配したい……。

「見て!ミーナ、可愛くできたでしょう?!」

台の上にのせたクッキーをお嬢様が自信満々に見せてくれます。
その笑顔は輝かんばかりに満開です。

「はい、とってもお上手です。クラレンス様もエリシュオン様もきっと喜んでくださると思います」

両手を合わせて絶賛の言葉を返しました。

少し前には見られなかったお嬢様の笑顔。

黒蜘蛛オブスキュリテの毒液が奪ったのは、その美しい顔だけでなく、笑顔や希望、たくさんのモノたち。

苦しみの中、それでも凛とあろうとしたシルクお嬢様は気高く……そして痛々しかった。

なにも出来ない自分たちの身が、歯がゆくて仕方がありませんでした。

例えるならかつてのランドバーク家は閉ざされた冬。
そうして訪れたクラレンス様は、春の陽だまりそのものでした。

お嬢様の顔を癒し、なによりも心を癒してくださった。

あの日の奇跡を思い出すたび、涙が溢れそうになる。

滲みかけた涙腺を叱咤し、晴れやかな笑顔を作る。

「お嬢様たちの世界に一つの手作りです。どこの店よりも綺麗にラッピングしてみせますわ!」

この笑顔がいつでも輝いていられるよう、私たちはお嬢さまの恋を見守り続けます。


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