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定番おかずのお弁当でお庭ピクニック
しおりを挟む剣だこのあるごつごつした手を引いてクラレンスはお庭にでた。
目指す木の下に向かえば、先に案内済みだった姉のイリーネが芝生に敷かれたシートのうえに座り手を振ってくる。
部屋でくつろいでいたところにひょいと顔をのぞかせた愛息子に「お外でごはん、食べましょー」と引っ張ってこられた父も促されるまま腰を下ろす。
どうやら急に思い立った、というわけではないらしい。
木陰に敷かれたシートのうえにはいくつかのふたつきの容器のほかに、氷入りの飲み物が入った瓶、おしぼりに焼き菓子のつまった籠など色々と準備がされていた。
「なんだこれは?」
「おうちピクニックです!今日は天気もいいので」
首を傾げる父に、にこにこしながらクラレンスは返す。
なお、クラレンスにとってお外でごはんはそう珍しいことじゃない。
ぽかぽか陽気のなかで食べるごはんはおいしいし、病弱だった小さい頃は自由に遊びまわることもままならず「せめて気分だけでも」と使用人たちがお庭にピクニックもどきの準備をしてくれたものだ。
「なんかクラレンスがお弁当……?を作ってくれたんだってっ!」
「お弁当??」
「これです」
じゃーん!!とクラレンスは自分の分のお弁当箱を掲げた。
料理人さんたちにしたのと同じような説明をし、それぞれのお弁当箱を開けるよううながす。
イリーネが2段ので、父はもちろん大きいのだ。
「わぁ……」
ふたを開け、小さくイリーネが声をあげる。
そんな姿をセバスはじめ何人かの使用人たちは微笑まし気に見ていた。
ちょっと体の向きをずらしたイリーネは弟からは見えないように指を一本くちびるの前に立てて彼らへと示した。
実はイリーネ……可愛い弟が作ってくれた“お弁当”なるものが気になりすぎて、父を呼びに行っている間にこっそり中身を確認してたり。
使用人たちに「内緒よ」と口止めもし、ささっと元に戻して何気ない顔でクラレンスたちを出迎えてました。
それでも漏れた感動の声は嘘ではない。
箱の中にバランスよく詰められたそれは美しく、なにより美味しそうだった。
「ほぉ、これは美味しそうだ」
同じ感想を漏らした父に「ねー」と相槌を打ってなんどもうなづく。
「おっ、から揚げもある」
から揚げはいまやブロンデル家でも大人気のメニューだ。
「おにぎりがすっごい可愛い!これとかちょっとクラレンスっぽくない?」
そういってイリーネがつかんだのは小ぶりのおにぎり。
のりで作った目や口、ハムのピンクほっぺのふにゃりと笑んでいる顔は似ていないこともない。
全然自分っぽくとか意識してなかったクラレンスは「えー?」と声をあげるが、父も姉も「似てる」「似てる」と笑っている。
「すごーい!このウィンナーとかタコなんだけど!」
「タコさんウィンナーです」
キリっとドヤ顔でクラレンスは告げた。
ちなみに足は6本。
8本にすると足が千切れやすいんですよね……。
お弁当箱の中身は、ほにゃ~とした和む表情のおにぎり。
おかずは定番のから揚げ、たまご焼きにタコさんウィンナー。ニンジンとゴボウを牛肉で巻いた八幡巻きにブロッコリーのペペロンチーノ風、プチトマトなどだ。
旅行に持っていく重箱弁当にはこれらのおかずのほかにも料理人さんたちが張り切って作ってくれたあれやこれがこれでもか!というほど詰まっている。
「お弁当ってこんな可愛いんだ」
「ん~、ごくシンプルなのもありますよ。これはちょっと茶目っ気でやってみただけ。キャラ弁っていって色んなキャラクターを模した凝ったのとかもあるし」
「……手間がかかるだろうに」
「えー、私は食べてみたーい」
「たぶん今度食べれるよ」
あはは……とちょっぴり遠い目でクラレンスは笑う。
なにせ茶目っ気をだしておにぎりに顔をつけたり、ウィンナーをタコさんにしたクラレンスから彼らは聞いてしまった。
“キャラ弁”の存在を。
料理に関しては探求心が凄まじい料理人さんたちだ。
キラキラと目を輝かせながらクラレンスを質問攻めにし、あんなのはどうか?いや、こんなのは……。と盛り上がっていた。
クオリティーの高いキャラ弁がお昼ごはんとして登場する日も近いだろう。
ふわぁ……。
お腹もいっぱいになり、温かな日差しがポカポカで、こしっとクラレンスは欠伸をこぼし目をこする。
やがてこてんとシートに転がりお昼寝をはじめたクラレンス。
日向ぼっこする子猫みたいな弟のほっぺを、起こさない程度にイリーネはちょんっ……と突き、父はそんなこどもたちを優しい目で見守る。
「ふふ、かわいー。父さん、今度絶対おでかけしましょうね!」
「そうだな」
明日からしばらくこの子がいないなんて……!と改めて力強く約束を交わした父と娘だった。
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