ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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朽ち果てた玉座と王冠 1



 カーテンの隙間から流し見る風景に感慨はない。

 指を離せばひらりと揺れたカーテンが世界を閉ざす。腕を組み、瞳を閉じて背もたれに背を預けた。揺れる振動、馬車が走るのは母さんの故郷だ。
 だが一度も訪れたことのないその地に懐かしさなど在りもせず、縁戚が跡を継いだ領地とはもはや関わりすらない。

 目的地はそんな母さんの故郷を越えた先。

 今はもう何処どこの国でもない、地図の上では何も存在しない荒れた大地。


此処ここが……?」

 そこは、朽ちた神殿のような建物だった。
 騎士の一人が古びて色あせた紙を広げる。

「これは例の廃墟はいきょ瓦礫がれきの下から発見した地図です。この×印が此処で……」

 地図に置かれた指が×印から真っすぐに動き、細い線を辿り一際大きな×印へと続く。

 この場所はジュエラルの国境ギリギリの位置で到達点は国を出た先。地図には道らしき線が描かれているが、アンジェス亡き今、国の外に広がるのは見渡す限りの大地のみだ。

「事前の調査で神殿内の地下に入り口を発見しました。方向はこの地図とも適合します」

「つまり隠し通路があると?」

「はっ!前回のことがありますので、詳しい確認は出来ておりませんが恐らく」

 やたら畏まってくれる騎士から借りた地図をじっと見る。

 前回のこととは、例の実験施設のような拠点が崩壊し廃墟と化したことだろう。その教訓を活かし、人員や能力者を揃えての再調査が今日。

 ……で、そんな危険性もある調査にのこのこ参加を申し出た高位貴族が俺、と。

「必ずお守りします」と力強く誓ってくれる誠実な騎士さんに申し訳なさが募る。

 のこのこしゃしゃり出た自覚がある分「お貴族様の物見遊山かよ」って邪険にされるより罪悪感が刺激されます。すんません。

 俺のことはリフやハンゾーが守ってくれるんで、お気になさらず!

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