魔族の便利屋

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一冊目 魔王軍は個性的

四話 リュウコツ君(1)

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 魔界歴同年五月十三日、良き曇天。
 昨日から徹夜でリッチの研究室の方と共同開発していたゴーレムの試運転を終え、遂に竜骨で出来た素体の中に魔法式を刻んだ膨大な魔力を生み出す虹色の魔石を組み込む時が来ました。
 一応死霊である私ですが、何日も徹夜をすると生者と同じく凄く眠くなって、無理をするといつの間にか数日間寝続けていたという事もありましたが、一徹ぐらいなら平気です。
 昨夜の木の人形によるテストでは予想通りの動きをしたので恐らく大丈夫だと思いますが、魔力量の多い竜骨の体では予想外の挙動を起こすかもしれません。
 そのため万が一に備えて人型ゴーレムの起動は魔王軍訓練場にて、魔王様とブラッドリィ様の監視の元行われます。
 とはいえ魔王様は臆病ですからもし暴走したら真っ先に逃げる可能性が高く、そうなればこの場のメンバーでは竜骨を簡単に砕ける者は居なくなりますが、ブラッドリィさんとフォール様のお二人でも抑える事は出来るでしょう。
 ですので不死の私が魔石を嵌め込み、魔王様とブラッドリィ様が近くで待機、フォール様は後方で魔法を構えて待機という状況の中、竜骨を削り組み合わせて人形にした素体の開いた胸の中にある窪みに虹色の魔石を嵌め込みました。


 私は魔石を嵌め込むとすぐに手を離して一歩後ろへと下がりました。
 そして魔石から魔力が流れ出して体を制御する為の全身のチェックを始め、すぐに弱点である魔石を竜骨の中でも最も硬い大牙で覆うと黒い双眸に青い魔力の炎が灯ります。
 そうして全身に魔力を張り巡らせた人型ゴーレムは俯いていた顔を上げました。

「起動フェーズ……初期設定を参照中……現マスター名を読み上げます……『レイコ』……以上一名……マスターの存在を感知、ご命令を」

 そう魔法式を読み上げたゴーレムは直立不動のまま待機する。
 起動実験は成功、次は性能の制御の実験を行う。
「その場で一度、五メートル跳ねて下さい」
 命じると、ゴーレムはキッチリ五メートルのジャンプを行う。
「右脚を上げて片足立ち三分、終われば反対の足もです」
 重心バランスを保てるかのチェックも一度もふらつく事なく完遂。
「登録番号演舞、壱の型」
 ゴーレムは命じられるまま、式に組み込まれた動きを一寸の狂いもなく再現する。
「武装、骨刀こっとう構え」
 そう言うと、右腕の装甲につけられた竜骨製の片刃の剣がスルスルと手元まで移動したそれを素早く握る。

 その後も搭載している全武装の出し入れと基本の型、回避動作からのカウンターなど一通りの作動テストを終えました。
「これで動作テストは終了します」
 そう私が言った時、これまで不測の事態に備えてず構えていた皆さんがホッと胸を撫で下ろす。
「いやはやこれ程までの物を作り上げて下さるとは、やはりレイコ殿は素晴らしいです」
「いえ、ブラッドリィさんが下さった魔石のおかげです!本当に、本当にありがとうございます!」
「レイコさん、今日はやけにテンションが高いですね」
「ええ!この子は私の夢を叶える為の第一歩ですから。長い、本当に長い道のりでした」
「ほうほうほう、その夢とやらは聞いてもよいかなぁ?」
「少しお恥ずかしい話になりますが……」
 私はそう切り出して、昔、昔の思い出を簡潔にまとめました。

「私が魔王軍に従事した頃のお話ですが、当時から不死であった私は当時の魔王様の命令で勇者様に特攻、特攻、特攻の日々で、数百数千数万数億と吹き飛ばされていました。最終的にはその勇者は魔王様に討伐されたのですが、その時私は心に誓ったのです!今はこんな弱い私でも、いずれ力をつけて勇者を皆殺しにしてやるって!」

 もうここ千年は激昂したことのない私ですが、この時ばかりはつい興奮してしまいました。
 でも、ええ。これは仕方がない事なんです!
 幾ら痛みが無いとはいえ、勇者一行を付き纏っていた時の屈辱は今でも決して忘れません!
「ですが今でも非力なままのゴーストの私の唯一の利点は不老不死である事ですから、その余りある時間を使って魔術を極めてゴーレム作成の知識と技術を磨き、その努力の末に完成したのがこの!『リュウコツ君』なのです!!」
「りゅ、リュウコツ君?」
「とってもカッコかわいい名前だと思いませんか!」
「ホッホ、儂は良い名前だと思いますぞ」
「素材をそのまま名前にするとはねぇ」

 何だか皆さん名前に対して反応がイマイチなようでしたが、いいんです!
 私のリュウコツ君はこれまでになかった『学習』するゴーレムですから、これから色々と教えて打倒勇者!あの吹き飛ばされ続けた日々の恨みは忘れません!
 だからこれからよろしくね、リュウコツ君!
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