2 / 15
第2話「全知全能(機械音痴)vs 文明の利器」
しおりを挟む
居酒屋『大聖天(ムー)』の薄暗い休憩室。
俺――全知全能の主神ゼウスは、絶望していた。 目の前にある、黒くて薄い板。 現代人が「スマートフォン」と呼ぶ神器に、俺のプライドはズタズタにされていた。
「おい、ガネーシャ。この鏡の中に、生意気な女が住んでいるぞ」
俺が画面に向かって「雷(いかずち)を放て!」と命じると、涼しげな女性の声が響く。
『すみません、よくわかりません。Webで検索しますか?』
「なっ……! 全知全能の俺に向かって『よくわからん』だと!?」
俺は思わず立ち上がった。
「貴様、どこの神話の女神だ! 答えろ!」
『私はSiriです。あなたのお手伝いをします』
「尻(しり)だと!? 恥を知れ! 俺は天空の覇者ゼウスだぞ!」
『ゼウスですね。連絡先の「ゼウス」さんに電話をかけますか?』
「自分自身に電話してどうする! そもそも俺の番号を知っているのは嫁のヘラだけだ! 絶対に繋ぐな! 〇されるぞ!」
顔を真っ赤にして機械と喧嘩する俺。
その横では、オーディンがもっと深刻な顔で板を凝視していた。
知恵の神、メルカリで爆死する
「……嘘だろ。知恵の泉を飲んだこの俺が、こんな初歩的な罠に……」
オーディンが震える手で見せてきたのは、フリマアプリ『メルカリ』の画面だった。
【商品名:伝説の槍・グングニル(実戦用)】 【価格:300,000徳ポイント】 【説明:北欧の主神が使っていた本物。投げたら必ず当たります】
「おいオーディン、それお前の槍じゃないか。買い戻したのか?」
「ああ……。愛槍をムー大陸に忘れてきたから、背に腹は代えられんと思ってポチったんだが……」
届いた箱を俺たちが開けると、中から出てきたのは――。
「……これ、ダイソーの物干し竿じゃないか!」
伸縮式のステンレス竿に、金色の折り紙が雑に巻き付けられている。
「投げたらしなって全然飛ばないぞ! 竿の先が『U字』になってるから、どこにも刺さらん!」
「しかも見ろ、出品者の名前……『イタズラ大好き☆LOKI』になってる……」
「ロキじゃねえか!! 完全に身内にカモられてるぞ!」
路上漫才:リベンジ
多額の借金(徳ポイント)を抱えた俺たちは、再び夜の渋谷へと繰り出した。
「おい、ゼウス。やるぞ」 「ああ、文明の利器に負けた怒り、すべて笑いに変えてやるわ!」
俺たちは人混みの中で、声を張り上げた。
ゼウス: 「どうもー! スマホの音声認識に無視され続けて、喉が枯れたゼウスです!」
オーディン: 「フリマアプリで実の弟に偽物を掴まされた、節穴の目を持つ男オーディンです。お願いしますー」
ゼウス: 「いやー、現代の道具は難しいね。さっきも『出前館』で牛丼頼もうとしたんだけどさ」
オーディン: 「神がデリバリー頼むなよ。……で、何が起きたんだ?」
ゼウス: 「住所入力の欄があるだろ? あそこに正直に書いたんだよ」
オーディン: 「なんて?」
ゼウス: 「『オリュンポス山頂、右に曲がって三つ目の雲』って」
オーディン: 「届くかバカ! 登山させる気か!」
ゼウス: 「そしたら配達員からチャットが来たわ。『お前が降りてこい』って」
オーディン: 「当たり前だよ! 配達員はヘルメス(伝令神)じゃないんだよ!」
ゼウス: 「仕方ないからさ、自分の現在地をGPSで正確に送ってやったんだ」
オーディン: 「ほう、現代の機能を使いこなしたな」
ゼウス: 「そしたら俺の指先から漏れた神気に耐えきれず、スマホが熱を持って爆発してさ」
オーディン: 「お前のスマホ、ノート7かよ! デジタルデトックスしろ!」
ゼウス: 「で、爆発したスマホの破片を悲しく拾い集めてたらさ。隣で物干し竿を必死に素振りしてる不審者がいて……」
オーディン: 「俺だよ! 30万ポイント分、元を取ろうとしてるんだよ! もういいよ!」
二人: 「ありがとうございましたー!」
観客からパラパラと、しかし確かな拍手が起こる。
「あのジャガイモコンビ、ちょっと面白いかも」 「物干し竿の悲壮感がリアルすぎるw」
【徳ポイント:+15】
少しずつだが、ポイントが貯まっていく。
だが、その様子を遠くから見つめる影があった。 スサノオは、不敵に笑いながらスマホを操作していた。
「ククク……いい気流に乗ってやがる。なぁツクヨミ、こいつらの動画を『AI加工』でさらにマヌケにしてアップしてやろうぜ」
神々の戦いは、今やSNSを巻き込んだドロ沼の泥仕合へと突入していた。
俺――全知全能の主神ゼウスは、絶望していた。 目の前にある、黒くて薄い板。 現代人が「スマートフォン」と呼ぶ神器に、俺のプライドはズタズタにされていた。
「おい、ガネーシャ。この鏡の中に、生意気な女が住んでいるぞ」
俺が画面に向かって「雷(いかずち)を放て!」と命じると、涼しげな女性の声が響く。
『すみません、よくわかりません。Webで検索しますか?』
「なっ……! 全知全能の俺に向かって『よくわからん』だと!?」
俺は思わず立ち上がった。
「貴様、どこの神話の女神だ! 答えろ!」
『私はSiriです。あなたのお手伝いをします』
「尻(しり)だと!? 恥を知れ! 俺は天空の覇者ゼウスだぞ!」
『ゼウスですね。連絡先の「ゼウス」さんに電話をかけますか?』
「自分自身に電話してどうする! そもそも俺の番号を知っているのは嫁のヘラだけだ! 絶対に繋ぐな! 〇されるぞ!」
顔を真っ赤にして機械と喧嘩する俺。
その横では、オーディンがもっと深刻な顔で板を凝視していた。
知恵の神、メルカリで爆死する
「……嘘だろ。知恵の泉を飲んだこの俺が、こんな初歩的な罠に……」
オーディンが震える手で見せてきたのは、フリマアプリ『メルカリ』の画面だった。
【商品名:伝説の槍・グングニル(実戦用)】 【価格:300,000徳ポイント】 【説明:北欧の主神が使っていた本物。投げたら必ず当たります】
「おいオーディン、それお前の槍じゃないか。買い戻したのか?」
「ああ……。愛槍をムー大陸に忘れてきたから、背に腹は代えられんと思ってポチったんだが……」
届いた箱を俺たちが開けると、中から出てきたのは――。
「……これ、ダイソーの物干し竿じゃないか!」
伸縮式のステンレス竿に、金色の折り紙が雑に巻き付けられている。
「投げたらしなって全然飛ばないぞ! 竿の先が『U字』になってるから、どこにも刺さらん!」
「しかも見ろ、出品者の名前……『イタズラ大好き☆LOKI』になってる……」
「ロキじゃねえか!! 完全に身内にカモられてるぞ!」
路上漫才:リベンジ
多額の借金(徳ポイント)を抱えた俺たちは、再び夜の渋谷へと繰り出した。
「おい、ゼウス。やるぞ」 「ああ、文明の利器に負けた怒り、すべて笑いに変えてやるわ!」
俺たちは人混みの中で、声を張り上げた。
ゼウス: 「どうもー! スマホの音声認識に無視され続けて、喉が枯れたゼウスです!」
オーディン: 「フリマアプリで実の弟に偽物を掴まされた、節穴の目を持つ男オーディンです。お願いしますー」
ゼウス: 「いやー、現代の道具は難しいね。さっきも『出前館』で牛丼頼もうとしたんだけどさ」
オーディン: 「神がデリバリー頼むなよ。……で、何が起きたんだ?」
ゼウス: 「住所入力の欄があるだろ? あそこに正直に書いたんだよ」
オーディン: 「なんて?」
ゼウス: 「『オリュンポス山頂、右に曲がって三つ目の雲』って」
オーディン: 「届くかバカ! 登山させる気か!」
ゼウス: 「そしたら配達員からチャットが来たわ。『お前が降りてこい』って」
オーディン: 「当たり前だよ! 配達員はヘルメス(伝令神)じゃないんだよ!」
ゼウス: 「仕方ないからさ、自分の現在地をGPSで正確に送ってやったんだ」
オーディン: 「ほう、現代の機能を使いこなしたな」
ゼウス: 「そしたら俺の指先から漏れた神気に耐えきれず、スマホが熱を持って爆発してさ」
オーディン: 「お前のスマホ、ノート7かよ! デジタルデトックスしろ!」
ゼウス: 「で、爆発したスマホの破片を悲しく拾い集めてたらさ。隣で物干し竿を必死に素振りしてる不審者がいて……」
オーディン: 「俺だよ! 30万ポイント分、元を取ろうとしてるんだよ! もういいよ!」
二人: 「ありがとうございましたー!」
観客からパラパラと、しかし確かな拍手が起こる。
「あのジャガイモコンビ、ちょっと面白いかも」 「物干し竿の悲壮感がリアルすぎるw」
【徳ポイント:+15】
少しずつだが、ポイントが貯まっていく。
だが、その様子を遠くから見つめる影があった。 スサノオは、不敵に笑いながらスマホを操作していた。
「ククク……いい気流に乗ってやがる。なぁツクヨミ、こいつらの動画を『AI加工』でさらにマヌケにしてアップしてやろうぜ」
神々の戦いは、今やSNSを巻き込んだドロ沼の泥仕合へと突入していた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる