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第2話「全知全能(機械音痴)vs 文明の利器」
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居酒屋『大聖天(ムー)』の薄暗い休憩室。
俺――全知全能の主神ゼウスは、絶望していた。 目の前にある、黒くて薄い板。 現代人が「スマートフォン」と呼ぶ神器に、俺のプライドはズタズタにされていた。
「おい、ガネーシャ。この鏡の中に、生意気な女が住んでいるぞ」
俺が画面に向かって「雷(いかずち)を放て!」と命じると、涼しげな女性の声が響く。
『すみません、よくわかりません。Webで検索しますか?』
「なっ……! 全知全能の俺に向かって『よくわからん』だと!?」
俺は思わず立ち上がった。
「貴様、どこの神話の女神だ! 答えろ!」
『私はSiriです。あなたのお手伝いをします』
「尻(しり)だと!? 恥を知れ! 俺は天空の覇者ゼウスだぞ!」
『ゼウスですね。連絡先の「ゼウス」さんに電話をかけますか?』
「自分自身に電話してどうする! そもそも俺の番号を知っているのは嫁のヘラだけだ! 絶対に繋ぐな! 〇されるぞ!」
顔を真っ赤にして機械と喧嘩する俺。
その横では、オーディンがもっと深刻な顔で板を凝視していた。
知恵の神、メルカリで爆死する
「……嘘だろ。知恵の泉を飲んだこの俺が、こんな初歩的な罠に……」
オーディンが震える手で見せてきたのは、フリマアプリ『メルカリ』の画面だった。
【商品名:伝説の槍・グングニル(実戦用)】 【価格:300,000徳ポイント】 【説明:北欧の主神が使っていた本物。投げたら必ず当たります】
「おいオーディン、それお前の槍じゃないか。買い戻したのか?」
「ああ……。愛槍をムー大陸に忘れてきたから、背に腹は代えられんと思ってポチったんだが……」
届いた箱を俺たちが開けると、中から出てきたのは――。
「……これ、ダイソーの物干し竿じゃないか!」
伸縮式のステンレス竿に、金色の折り紙が雑に巻き付けられている。
「投げたらしなって全然飛ばないぞ! 竿の先が『U字』になってるから、どこにも刺さらん!」
「しかも見ろ、出品者の名前……『イタズラ大好き☆LOKI』になってる……」
「ロキじゃねえか!! 完全に身内にカモられてるぞ!」
路上漫才:リベンジ
多額の借金(徳ポイント)を抱えた俺たちは、再び夜の渋谷へと繰り出した。
「おい、ゼウス。やるぞ」 「ああ、文明の利器に負けた怒り、すべて笑いに変えてやるわ!」
俺たちは人混みの中で、声を張り上げた。
ゼウス: 「どうもー! スマホの音声認識に無視され続けて、喉が枯れたゼウスです!」
オーディン: 「フリマアプリで実の弟に偽物を掴まされた、節穴の目を持つ男オーディンです。お願いしますー」
ゼウス: 「いやー、現代の道具は難しいね。さっきも『出前館』で牛丼頼もうとしたんだけどさ」
オーディン: 「神がデリバリー頼むなよ。……で、何が起きたんだ?」
ゼウス: 「住所入力の欄があるだろ? あそこに正直に書いたんだよ」
オーディン: 「なんて?」
ゼウス: 「『オリュンポス山頂、右に曲がって三つ目の雲』って」
オーディン: 「届くかバカ! 登山させる気か!」
ゼウス: 「そしたら配達員からチャットが来たわ。『お前が降りてこい』って」
オーディン: 「当たり前だよ! 配達員はヘルメス(伝令神)じゃないんだよ!」
ゼウス: 「仕方ないからさ、自分の現在地をGPSで正確に送ってやったんだ」
オーディン: 「ほう、現代の機能を使いこなしたな」
ゼウス: 「そしたら俺の指先から漏れた神気に耐えきれず、スマホが熱を持って爆発してさ」
オーディン: 「お前のスマホ、ノート7かよ! デジタルデトックスしろ!」
ゼウス: 「で、爆発したスマホの破片を悲しく拾い集めてたらさ。隣で物干し竿を必死に素振りしてる不審者がいて……」
オーディン: 「俺だよ! 30万ポイント分、元を取ろうとしてるんだよ! もういいよ!」
二人: 「ありがとうございましたー!」
観客からパラパラと、しかし確かな拍手が起こる。
「あのジャガイモコンビ、ちょっと面白いかも」 「物干し竿の悲壮感がリアルすぎるw」
【徳ポイント:+15】
少しずつだが、ポイントが貯まっていく。
だが、その様子を遠くから見つめる影があった。 スサノオは、不敵に笑いながらスマホを操作していた。
「ククク……いい気流に乗ってやがる。なぁツクヨミ、こいつらの動画を『AI加工』でさらにマヌケにしてアップしてやろうぜ」
神々の戦いは、今やSNSを巻き込んだドロ沼の泥仕合へと突入していた。
俺――全知全能の主神ゼウスは、絶望していた。 目の前にある、黒くて薄い板。 現代人が「スマートフォン」と呼ぶ神器に、俺のプライドはズタズタにされていた。
「おい、ガネーシャ。この鏡の中に、生意気な女が住んでいるぞ」
俺が画面に向かって「雷(いかずち)を放て!」と命じると、涼しげな女性の声が響く。
『すみません、よくわかりません。Webで検索しますか?』
「なっ……! 全知全能の俺に向かって『よくわからん』だと!?」
俺は思わず立ち上がった。
「貴様、どこの神話の女神だ! 答えろ!」
『私はSiriです。あなたのお手伝いをします』
「尻(しり)だと!? 恥を知れ! 俺は天空の覇者ゼウスだぞ!」
『ゼウスですね。連絡先の「ゼウス」さんに電話をかけますか?』
「自分自身に電話してどうする! そもそも俺の番号を知っているのは嫁のヘラだけだ! 絶対に繋ぐな! 〇されるぞ!」
顔を真っ赤にして機械と喧嘩する俺。
その横では、オーディンがもっと深刻な顔で板を凝視していた。
知恵の神、メルカリで爆死する
「……嘘だろ。知恵の泉を飲んだこの俺が、こんな初歩的な罠に……」
オーディンが震える手で見せてきたのは、フリマアプリ『メルカリ』の画面だった。
【商品名:伝説の槍・グングニル(実戦用)】 【価格:300,000徳ポイント】 【説明:北欧の主神が使っていた本物。投げたら必ず当たります】
「おいオーディン、それお前の槍じゃないか。買い戻したのか?」
「ああ……。愛槍をムー大陸に忘れてきたから、背に腹は代えられんと思ってポチったんだが……」
届いた箱を俺たちが開けると、中から出てきたのは――。
「……これ、ダイソーの物干し竿じゃないか!」
伸縮式のステンレス竿に、金色の折り紙が雑に巻き付けられている。
「投げたらしなって全然飛ばないぞ! 竿の先が『U字』になってるから、どこにも刺さらん!」
「しかも見ろ、出品者の名前……『イタズラ大好き☆LOKI』になってる……」
「ロキじゃねえか!! 完全に身内にカモられてるぞ!」
路上漫才:リベンジ
多額の借金(徳ポイント)を抱えた俺たちは、再び夜の渋谷へと繰り出した。
「おい、ゼウス。やるぞ」 「ああ、文明の利器に負けた怒り、すべて笑いに変えてやるわ!」
俺たちは人混みの中で、声を張り上げた。
ゼウス: 「どうもー! スマホの音声認識に無視され続けて、喉が枯れたゼウスです!」
オーディン: 「フリマアプリで実の弟に偽物を掴まされた、節穴の目を持つ男オーディンです。お願いしますー」
ゼウス: 「いやー、現代の道具は難しいね。さっきも『出前館』で牛丼頼もうとしたんだけどさ」
オーディン: 「神がデリバリー頼むなよ。……で、何が起きたんだ?」
ゼウス: 「住所入力の欄があるだろ? あそこに正直に書いたんだよ」
オーディン: 「なんて?」
ゼウス: 「『オリュンポス山頂、右に曲がって三つ目の雲』って」
オーディン: 「届くかバカ! 登山させる気か!」
ゼウス: 「そしたら配達員からチャットが来たわ。『お前が降りてこい』って」
オーディン: 「当たり前だよ! 配達員はヘルメス(伝令神)じゃないんだよ!」
ゼウス: 「仕方ないからさ、自分の現在地をGPSで正確に送ってやったんだ」
オーディン: 「ほう、現代の機能を使いこなしたな」
ゼウス: 「そしたら俺の指先から漏れた神気に耐えきれず、スマホが熱を持って爆発してさ」
オーディン: 「お前のスマホ、ノート7かよ! デジタルデトックスしろ!」
ゼウス: 「で、爆発したスマホの破片を悲しく拾い集めてたらさ。隣で物干し竿を必死に素振りしてる不審者がいて……」
オーディン: 「俺だよ! 30万ポイント分、元を取ろうとしてるんだよ! もういいよ!」
二人: 「ありがとうございましたー!」
観客からパラパラと、しかし確かな拍手が起こる。
「あのジャガイモコンビ、ちょっと面白いかも」 「物干し竿の悲壮感がリアルすぎるw」
【徳ポイント:+15】
少しずつだが、ポイントが貯まっていく。
だが、その様子を遠くから見つめる影があった。 スサノオは、不敵に笑いながらスマホを操作していた。
「ククク……いい気流に乗ってやがる。なぁツクヨミ、こいつらの動画を『AI加工』でさらにマヌケにしてアップしてやろうぜ」
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