19 / 33
19話【運命の楔(くさび) ―― ダイヤモンドに隠された父の遺志】
しおりを挟む
夜が明ける頃、窓の外の海面に朝日が反射し、最上階のスイートルームを眩いばかりの光で満たした。 彩花はまぶたの裏で小さく揺れる白い光に目を覚ました。意識が覚醒すると同時に、昨夜の情熱的な記憶が波のように押し寄せ、胸の奥が締め付けられる。ふと視線を向けると、窓辺に蓮が立っていた。 朝の黄金色の光が、彼の横顔の輪郭をゆっくりと照らし出す。黒髪に混じった数本の銀糸がきらめき、その背中には、自らの人生を他者に捧げた者特有の、言葉にはできない静けさと深い哀愁が漂っていた。
「……蓮さん、おはよう」
その名を呼んだ瞬間、彩花の唇はかすかに震え、喉の奥に熱い塊が詰まったような感覚に襲われた。 これまで数えきれないほど愛おしく口にしてきた「涼太さん」という響きが、脳内のどこかでノイズのように激しく拒絶反応を起こす。心に染み付いた音の記憶を殺し、未知の「蓮」という新しい音を唇に乗せる作業は、ひどく口に馴染まない違和感となって彩花を苛んだ。愛した男の魂に別の名前を刻み込むような残酷な感覚。その身体的な苦痛が、二人の間に横たわる「喪失」の大きさを改めて浮き彫りにしていた。
蓮はゆっくりと振り返り、穏やかだがどこか影を宿した微笑を浮かべた。もう“涼太”の虚像ではない、仮面を剥いだ本物の桐谷蓮の瞳だった。
「おはよう、彩花さん。昨夜は……僕の告白で、傷つけませんでしたか?」 「いいえ。でも……蓮さんは?」
彩花はベッドから身を起こし、蓮の目の下にある深い疲労の隈へそっと指を伸ばした。触れた瞬間、蓮の肩がかすかに揺れる。 「大丈夫だ。少し……君を騙し続けてきた罪と、これから君をさらなる危険に晒すことへの恐怖を考えていた」
「……でも、どうして“涼太”から“蓮”に戻れたんですか? あの告白を聞いた時、私は、涼太はもういないのだと思っていました」
彩花の問いに、蓮はふと目を伏せた。窓から差し込む光が、彼の顔に長い影を落とす。失われた記憶の海へ、深く意識が沈んでいくような沈黙が流れた。 彼はしばらくして顔を上げると、真っ直ぐに彩花を見つめた。その瞳に宿っていたのは――偽りの“涼太”ではなく、“桐谷蓮”としての確かな意志と感謝だった。
「それは……君の愛と、そして“涼太”のおかげだ」
蓮の声は、静かで、温かくて、どこか切ない感謝に満ちていた。
「君と過ごした時間、君の笑顔、君の言葉。その全部が、眠っていた“僕自身”を呼び戻してくれた。でも、決定的に僕を救ったのは、僕に流し込まれたはずの“涼太”の人格だったんだ」
蓮は彩花の手を包み込むように握った。その温もりは、言葉では足りないほどの、複雑な真実の愛を運んでいた。 そして、蓮は語り始めた。それは、暗闇を裸足で歩くような、痛みと孤独に満ちた道のりだった。静寂の底で、ときおり自分ではない「もう一つの声」が響くことがあった。優しく、どこか懐かしい声――涼太。
『蓮、君は独りじゃない。僕がそばにいるよ』
その声音は、凍りついた蓮の心に、じんわりと灯をともした。蓮は初め、彼を必死に拒んだ。涼太はクロノスによって作り上げられた“偽りの人格”であり、自分を支配するための檻だと知っていたからだ。 だが涼太は、蓮の胸の深い傷へそっと手を伸ばすように語りかけてきた。蓮が言葉にできない痛みや恐怖を、まるで自分のことのように理解しながら。
『蓮。真実は君を傷つける。でも、同時に君を自由にもするんだ。僕が君に教えた愛を信じて、前に進め』
その声は、濃い霧の中に差し込む光だった。 蓮は少しずつ、自分の過去へと向き合い始める。実験台で味わった悲鳴のような記憶。自分の手がどれほど多くの人を傷つけてきたかという現実。その全てが蓮の胸に突き刺さり、彼を絶望へと沈めたが、涼太が彩花を通じて経験した愛の残響が、彼を支え続けた。
「偽りの人格が、僕にとっては真実の愛を運ぶ光になったんだ。涼太が君を想う気持ちが強かったからこそ、僕は僕を取り戻すことができた。……だから、今の僕の中には、涼太も共に生きている」
その告白は、彩花の心を震わせた。愛した涼太は消えたのではなく、蓮という一人の男の魂の一部として昇華されたのだ。
蓮は決意を固めたように、彩花をバルコニーへ誘った。海は光を受けて黄金色に染まり、空は夜明けの藍と朱が溶け合う劇的なグラデーションを描いていた。 蓮はポケットから、小さなダイヤモンドのネックレスを取り出した。 「君が、僕を信じると決めた理由……それが、このネックレスの存在だと言うのなら、僕は真実を告げなければならない。……彩花さん。このネックレスは、涼太からの贈り物ではありません。いいえ、これは──君のお父様、奥野聡史さんが、僕に命を賭して託したものです」
彩花の胸が凍りつく。蓮の声は、真実の重みで震えていた。 「奥野博士は、僕が記憶を消される直前、これを僕の掌に押し込んだ。いつか、君を見つけ出し、この輝きが君を守る楔(くさび)になるようにと。……涼太として君を愛したのは偽装かもしれない。でも、このネックレスを持って君の前に現れたのは、僕の中に残った唯一の『真実の意志』だったんだ」
蓮はネックレスを彩花の手に乗せた。それは、奥野博士が、自分の死と引き換えに、娘と、蓮の魂を救うために遺した、運命の楔だった。ネックレスが、朝陽を受けて、運命の光のように輝きを放った。
***
――だが、その一瞬の希望は、無慈悲な音によって叩き潰された。 彩花のスマートフォンが、静寂を切り裂くように甲高く鳴り響いたのだ。 見慣れない番号。彩花の胸に氷のような予感が落ちる。 一瞬前まで「希望」に見えた朝の光が、急に冷え切った鋭いものに感じられる。このスイートルームの**「冷たい豪華さ」**――広すぎる部屋、高価な調度品、眩しすぎる朝日が、自分たちを外界から隔絶し、逃げ場のない檻に閉じ込めているような錯覚を彩花に抱かせた。
「……もしもし?」
受話器から聞こえてきたのは、低く、感情の一切を削ぎ落とした、砂を噛むような冷酷な男の声だった。
『奥野彩花さん……ですね。……騙されてはいけません。桐谷蓮は、クロノスが放ったスパイだ。お前の父親を死に追いやった、計画の実行犯でもある』
心臓を氷の楔で貫かれたような衝撃。彩花は、無意識に蓮から一歩だけ距離を取った。その身体的な断絶に、蓮の顔から血の気が引く。
「……あなたは誰? なぜ父のことを」
『……忘れたのですか。あなたのすぐそばに、死神がいるということを』
男は最後に、ふっと鼻を鳴らすように笑うと、小さな声である**「旋律」**をハミングした。 彩花の全身が、かつてないほどの恐怖で硬直した。 それは、記憶の底に沈んでいた、かつて自分に優しくしてくれた「あのお兄さん」の鼻歌。そして何より、父が亡くなったあの夜、書斎の廊下を去っていく人影が口ずさんでいた「死の旋律」そのものだった。
「……うそ……なんで……」
切断音が響き、世界が急に静まり返る。ネックレスの重みが、今は父を裏切った証のように重く、冷たく感じられた。昨夜の告白も、このネックレスも、すべてはあの夜の「犯人」が仕組んだ、さらなる罠だったのではないか。
「彩花さん、どうかしましたか?」
蓮は眉間に深い皺を寄せた。その瞳の奥には、怒りと、「再び疑われることへの激しい絶望」が混じり合っていた。
「……クロノスの、最後の抵抗か」
低く呟くその声は、過去の地獄の扉を再び開くように、かすかに震えていた。 蓮は、蘇った悪夢を振り払うように、深く息を吸った。 ――白い実験室。自分を形作る記憶が、脳の奥からナイフで削り取られ、別の「誰かの人生」が無理やり流し込まれていく恐怖。 「クロノスは、新薬の開発を隠れ蓑に、記憶操作技術を完成させようとしている。彼らが作っている《ネメシス》は、人間の記憶と感情を――自由に書き換えるための道具、記憶操作兵器です」
蓮の声には、底知れない怒りが宿っていた。彩花は、まっすぐに蓮を見つめる。先ほどの電話の声、そして「あの歌」の衝撃が胸を抉るが、目の前の蓮の苦痛もまた真実に見えた。
「それが『偽り』だったとしても、私に届いた愛は、本物でした。蓮さん。あなたは、涼太としての幻を超えて、私にとってかけがえのない、ただ一人の人になったんです」
蓮の瞳に、初めて、救いの光が灯った。だが、その光をさえぎるように、再び現実が牙を剥く。
【第19話:あとがき】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「蓮。君は強い。……そして、彩花さんをよろしくね」 物語の最初から彩花を支え、読者の皆様にも愛されてきた「涼太」という人格が、その役割を終えて蓮へとすべてを託すシーン。切なくも温かい、究極の自己犠牲と愛の継承に、執筆しながら胸が熱くなりました。
そして、父・奥野博士が遺した執念の暗号。 それは、娘にしか解けない、そして蓮と共になければ辿り着けない「映画の台詞」の中に隠されていました。スクリーン越しに語りかけてくる父の「老教授」としての姿。父は、研究者としての知性と、親としての情愛のすべてを賭けて、この日のための「台本」を書き上げていたのです。
次なる目的地は、地図から消された「廃墟リゾート」。 そこには、父が命を懸けて隠したクロノスの核心的秘密、そして蓮が「死神」と呼ばれたあの夜の真実が眠っています。
「もし、君がすべてを忘れてしまっても……必ず迎えに行く」
父の約束を胸に、二人はついに禁断の地へと足を踏み入れます。
次回、第20話『完全覚醒 ―― 暗号が示す廃墟リゾートの危険な座標』。 闇の奥で待ち受けるのは、救済か、それともさらなる絶望か。物語はクライマックスへ向けて加速します!
涼太との別れに涙した!お父さんの愛が深すぎる!と思った方は、 ぜひ【お気に入り登録】と【応援ポイント】をお願いいたします! 皆様の応援が、彩花たちが廃墟の闇を切り裂くための力になります!
「……蓮さん、おはよう」
その名を呼んだ瞬間、彩花の唇はかすかに震え、喉の奥に熱い塊が詰まったような感覚に襲われた。 これまで数えきれないほど愛おしく口にしてきた「涼太さん」という響きが、脳内のどこかでノイズのように激しく拒絶反応を起こす。心に染み付いた音の記憶を殺し、未知の「蓮」という新しい音を唇に乗せる作業は、ひどく口に馴染まない違和感となって彩花を苛んだ。愛した男の魂に別の名前を刻み込むような残酷な感覚。その身体的な苦痛が、二人の間に横たわる「喪失」の大きさを改めて浮き彫りにしていた。
蓮はゆっくりと振り返り、穏やかだがどこか影を宿した微笑を浮かべた。もう“涼太”の虚像ではない、仮面を剥いだ本物の桐谷蓮の瞳だった。
「おはよう、彩花さん。昨夜は……僕の告白で、傷つけませんでしたか?」 「いいえ。でも……蓮さんは?」
彩花はベッドから身を起こし、蓮の目の下にある深い疲労の隈へそっと指を伸ばした。触れた瞬間、蓮の肩がかすかに揺れる。 「大丈夫だ。少し……君を騙し続けてきた罪と、これから君をさらなる危険に晒すことへの恐怖を考えていた」
「……でも、どうして“涼太”から“蓮”に戻れたんですか? あの告白を聞いた時、私は、涼太はもういないのだと思っていました」
彩花の問いに、蓮はふと目を伏せた。窓から差し込む光が、彼の顔に長い影を落とす。失われた記憶の海へ、深く意識が沈んでいくような沈黙が流れた。 彼はしばらくして顔を上げると、真っ直ぐに彩花を見つめた。その瞳に宿っていたのは――偽りの“涼太”ではなく、“桐谷蓮”としての確かな意志と感謝だった。
「それは……君の愛と、そして“涼太”のおかげだ」
蓮の声は、静かで、温かくて、どこか切ない感謝に満ちていた。
「君と過ごした時間、君の笑顔、君の言葉。その全部が、眠っていた“僕自身”を呼び戻してくれた。でも、決定的に僕を救ったのは、僕に流し込まれたはずの“涼太”の人格だったんだ」
蓮は彩花の手を包み込むように握った。その温もりは、言葉では足りないほどの、複雑な真実の愛を運んでいた。 そして、蓮は語り始めた。それは、暗闇を裸足で歩くような、痛みと孤独に満ちた道のりだった。静寂の底で、ときおり自分ではない「もう一つの声」が響くことがあった。優しく、どこか懐かしい声――涼太。
『蓮、君は独りじゃない。僕がそばにいるよ』
その声音は、凍りついた蓮の心に、じんわりと灯をともした。蓮は初め、彼を必死に拒んだ。涼太はクロノスによって作り上げられた“偽りの人格”であり、自分を支配するための檻だと知っていたからだ。 だが涼太は、蓮の胸の深い傷へそっと手を伸ばすように語りかけてきた。蓮が言葉にできない痛みや恐怖を、まるで自分のことのように理解しながら。
『蓮。真実は君を傷つける。でも、同時に君を自由にもするんだ。僕が君に教えた愛を信じて、前に進め』
その声は、濃い霧の中に差し込む光だった。 蓮は少しずつ、自分の過去へと向き合い始める。実験台で味わった悲鳴のような記憶。自分の手がどれほど多くの人を傷つけてきたかという現実。その全てが蓮の胸に突き刺さり、彼を絶望へと沈めたが、涼太が彩花を通じて経験した愛の残響が、彼を支え続けた。
「偽りの人格が、僕にとっては真実の愛を運ぶ光になったんだ。涼太が君を想う気持ちが強かったからこそ、僕は僕を取り戻すことができた。……だから、今の僕の中には、涼太も共に生きている」
その告白は、彩花の心を震わせた。愛した涼太は消えたのではなく、蓮という一人の男の魂の一部として昇華されたのだ。
蓮は決意を固めたように、彩花をバルコニーへ誘った。海は光を受けて黄金色に染まり、空は夜明けの藍と朱が溶け合う劇的なグラデーションを描いていた。 蓮はポケットから、小さなダイヤモンドのネックレスを取り出した。 「君が、僕を信じると決めた理由……それが、このネックレスの存在だと言うのなら、僕は真実を告げなければならない。……彩花さん。このネックレスは、涼太からの贈り物ではありません。いいえ、これは──君のお父様、奥野聡史さんが、僕に命を賭して託したものです」
彩花の胸が凍りつく。蓮の声は、真実の重みで震えていた。 「奥野博士は、僕が記憶を消される直前、これを僕の掌に押し込んだ。いつか、君を見つけ出し、この輝きが君を守る楔(くさび)になるようにと。……涼太として君を愛したのは偽装かもしれない。でも、このネックレスを持って君の前に現れたのは、僕の中に残った唯一の『真実の意志』だったんだ」
蓮はネックレスを彩花の手に乗せた。それは、奥野博士が、自分の死と引き換えに、娘と、蓮の魂を救うために遺した、運命の楔だった。ネックレスが、朝陽を受けて、運命の光のように輝きを放った。
***
――だが、その一瞬の希望は、無慈悲な音によって叩き潰された。 彩花のスマートフォンが、静寂を切り裂くように甲高く鳴り響いたのだ。 見慣れない番号。彩花の胸に氷のような予感が落ちる。 一瞬前まで「希望」に見えた朝の光が、急に冷え切った鋭いものに感じられる。このスイートルームの**「冷たい豪華さ」**――広すぎる部屋、高価な調度品、眩しすぎる朝日が、自分たちを外界から隔絶し、逃げ場のない檻に閉じ込めているような錯覚を彩花に抱かせた。
「……もしもし?」
受話器から聞こえてきたのは、低く、感情の一切を削ぎ落とした、砂を噛むような冷酷な男の声だった。
『奥野彩花さん……ですね。……騙されてはいけません。桐谷蓮は、クロノスが放ったスパイだ。お前の父親を死に追いやった、計画の実行犯でもある』
心臓を氷の楔で貫かれたような衝撃。彩花は、無意識に蓮から一歩だけ距離を取った。その身体的な断絶に、蓮の顔から血の気が引く。
「……あなたは誰? なぜ父のことを」
『……忘れたのですか。あなたのすぐそばに、死神がいるということを』
男は最後に、ふっと鼻を鳴らすように笑うと、小さな声である**「旋律」**をハミングした。 彩花の全身が、かつてないほどの恐怖で硬直した。 それは、記憶の底に沈んでいた、かつて自分に優しくしてくれた「あのお兄さん」の鼻歌。そして何より、父が亡くなったあの夜、書斎の廊下を去っていく人影が口ずさんでいた「死の旋律」そのものだった。
「……うそ……なんで……」
切断音が響き、世界が急に静まり返る。ネックレスの重みが、今は父を裏切った証のように重く、冷たく感じられた。昨夜の告白も、このネックレスも、すべてはあの夜の「犯人」が仕組んだ、さらなる罠だったのではないか。
「彩花さん、どうかしましたか?」
蓮は眉間に深い皺を寄せた。その瞳の奥には、怒りと、「再び疑われることへの激しい絶望」が混じり合っていた。
「……クロノスの、最後の抵抗か」
低く呟くその声は、過去の地獄の扉を再び開くように、かすかに震えていた。 蓮は、蘇った悪夢を振り払うように、深く息を吸った。 ――白い実験室。自分を形作る記憶が、脳の奥からナイフで削り取られ、別の「誰かの人生」が無理やり流し込まれていく恐怖。 「クロノスは、新薬の開発を隠れ蓑に、記憶操作技術を完成させようとしている。彼らが作っている《ネメシス》は、人間の記憶と感情を――自由に書き換えるための道具、記憶操作兵器です」
蓮の声には、底知れない怒りが宿っていた。彩花は、まっすぐに蓮を見つめる。先ほどの電話の声、そして「あの歌」の衝撃が胸を抉るが、目の前の蓮の苦痛もまた真実に見えた。
「それが『偽り』だったとしても、私に届いた愛は、本物でした。蓮さん。あなたは、涼太としての幻を超えて、私にとってかけがえのない、ただ一人の人になったんです」
蓮の瞳に、初めて、救いの光が灯った。だが、その光をさえぎるように、再び現実が牙を剥く。
【第19話:あとがき】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「蓮。君は強い。……そして、彩花さんをよろしくね」 物語の最初から彩花を支え、読者の皆様にも愛されてきた「涼太」という人格が、その役割を終えて蓮へとすべてを託すシーン。切なくも温かい、究極の自己犠牲と愛の継承に、執筆しながら胸が熱くなりました。
そして、父・奥野博士が遺した執念の暗号。 それは、娘にしか解けない、そして蓮と共になければ辿り着けない「映画の台詞」の中に隠されていました。スクリーン越しに語りかけてくる父の「老教授」としての姿。父は、研究者としての知性と、親としての情愛のすべてを賭けて、この日のための「台本」を書き上げていたのです。
次なる目的地は、地図から消された「廃墟リゾート」。 そこには、父が命を懸けて隠したクロノスの核心的秘密、そして蓮が「死神」と呼ばれたあの夜の真実が眠っています。
「もし、君がすべてを忘れてしまっても……必ず迎えに行く」
父の約束を胸に、二人はついに禁断の地へと足を踏み入れます。
次回、第20話『完全覚醒 ―― 暗号が示す廃墟リゾートの危険な座標』。 闇の奥で待ち受けるのは、救済か、それともさらなる絶望か。物語はクライマックスへ向けて加速します!
涼太との別れに涙した!お父さんの愛が深すぎる!と思った方は、 ぜひ【お気に入り登録】と【応援ポイント】をお願いいたします! 皆様の応援が、彩花たちが廃墟の闇を切り裂くための力になります!
1
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる