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第5話:執行官の時計
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天文台が崩落し、情報の奔流から放り出された私たちが辿り着いたのは、色のない、灰色に塗りつぶされた世界だった。
そこは、どこまでも続く平原のように見えた。けれど、足元にあるのは土でも草でもない。幾億、幾兆という「動かなくなった時計の部品」が、砂漠の砂のように積み重なっている死の野原だった。 空には星もなく、ただ巨大な懐中時計の文字盤が、月のように冷たく、無機質な白光を放っている。
「……ここは?」
私は、ロイヤルブルーの痣が肩口まで這い上がってきた右腕を抱えながら、かすれた声で問うた。 一文字綴るごとに、私の心からは大切な記憶が剥がれ落ちていく。今はもう、自分がどんな小説を書いていたのか、そのタイトルさえ思い出せない。
「ここは『文字盤の墓場』。役割を終えた代筆者たちが、最後にたどり着く場所です」
局長はいつものように優雅な足取りで歩くが、その背中には、初めて見る「憐憫」のような影が差していた。 「紬さん。あなたが今まで対峙してきた九条という男は、秩序の番人である前に、このシステムの『最大の犠牲者』なのです」
その時、カチ、カチ、という乾いた金属音が平原に響き渡った。 積み上がった歯車の山を割って現れたのは、九条だった。しかし、彼の様子はこれまでの冷徹な執行官とは異なっていた。彼の纏う漆黒の法衣はボロボロに裂け、胸に下げた巨大な懐中時計からは、赤黒いインクが涙のように溢れ出している。
「……来るなと言ったはずだ。これ以上、この領域の奥へ踏み込めば、君の魂は『自分』という形を保てなくなる」
九条の声は、ひび割れたガラスのように震えていた。
彼が掲げた時計の蓋が開く。そこから溢れ出したのは、九条自身の記憶の断片だった。
それは、今から遠い昔――。
九条もまた、私と同じ「代筆者」だった。 彼には、病で明日をも知れぬ命となった恋人がいた。彼は彼女を救うために、銀河郵便局と契約し、自らの記憶をすべてインクに変えて手紙を書き続けた。
親の顔を忘れ、故郷の景色を忘れ、最後には自分の名前さえも捨てて。
けれど、彼が最後の一文字を書き終えたとき、奇跡は起きなかった。 彼が書き上げた手紙は、受け取るべき恋人の元へは届かなかった。なぜなら、彼が記憶をすべて使い果たした瞬間、彼の中から「彼女を愛していた」という事実そのものが消滅してしまい、手紙の『宛先』が宇宙から失われてしまったからだ。
「……私は、彼女を救うためにすべてを捨てた。だが、捨てすぎてしまったんだ。彼女が誰だったのか、どんな声で笑ったのか、なぜ私はこれほどまでに苦しいのか……その理由さえ、私はもう持っていない」
九条が絶叫する。彼の背後に、巨大な時計の幻影が立ち現れる。 それは、時間を巻き戻す装置ではない。持ち主が「忘れたこと」を永遠に刻み続ける、処刑の時計だ。
「紬、君も同じ道を歩んでいる! 航という男を救おうとすればするほど、君の中から『航を救いたい』と願う紬という人間が消えていく。残るのは、誰を待っているのかさえ分からない、空っぽの器だけだ!」
九条の懐中時計から、黒いインクの鎖が飛び出し、私を拘束しようと迫る。それは彼なりの、あまりにも不器用で暴力的な「慈悲」だった。これ以上進めば、私という人間が崩壊することを、彼は誰よりも知っているから。
「紬さん。選ぶのです」
局長が、静かに私の背中を押した。 「九条さんのように、忘却を受け入れて秩序の一部となるか。それとも、自分自身が消滅する恐怖を超えて、なおもそのペンを走らせるか。……次の一文字は、あなたの『存在そのもの』を削ることになります」
私は、感覚を失いつつある右手で、ロイヤルブルーの万年筆を握り直した。 確かに、九条の言う通りかもしれない。 さっき失った「未来の約束」の記憶と共に、私の心にはぽっかりと巨大な穴が開いている。航の顔を思い出そうとしても、水面に映る月のようにゆらゆらと揺れて、輪郭が捉えられない。
けれど、 心臓の奥、まだインクに侵食されていない最後の場所に、一粒の「熱」が残っていた。 それは「彼を救いたい」という理性的な願いではなかった。もっと原始的な、言葉になる前の叫び。 たとえ私が私でなくなっても、このペンが綴る一文字が、宇宙のどこかにいる彼の闇を照らすなら――
「……九条さん。あなたの痛みは、今の私には分かりません。あなたが忘れてしまったものは、もう二度と戻らないのかもしれない」
私は、九条が放つ黒いインクの鎖を、自らの万年筆の先で受け止めた。 「でも、あなたが今、こうして私を止めようとしているその『痛み』だけは……本物です。それは、あなたが彼女を愛していた、消えない証拠じゃないんですか!」
私は、自分の「誕生日」の記憶を――家族に祝われ、自分がこの世に生を受けたことを祝福された、最も根源的な自己肯定の記憶を、インク瓶に注ぎ込んだ。 視界が急激に暗転した。自分がいつ生まれたのか、何歳なのか、自分が誰なのか、その半分が闇に溶けて消えた。
けれど、その巨大な喪失と引き換えに、私のペン先からは、銀河のどの星よりも眩しい白銀の光が放たれた。
『誓』
五文字目。それは自分自身への、そして届かぬ恋人への、血を吐くような約束の言葉。 文字が刻まれた瞬間、九条を縛り付けていた懐中時計が、悲鳴のような金属音を立てて静止した。 黒いインクの鎖は光の塵となって霧散し、灰色だった「文字盤の墓場」に、一瞬だけ、色鮮やかな花が咲き乱れる幻影が見えた。それは九条が、そしてかつての代筆者たちが、守りたかった「いつかの春」の色彩だった。
「……馬鹿な。己の根源(ルーツ)を捨ててまで、文字を綴るというのか……」
九条は膝をつき、力なく笑った。彼の目から、黒いインクではない、透明な涙がひとしずくだけこぼれ落ちた。 「……行け、代筆者。君の物語が、私の結末とは違う場所へ辿り着くことを……今は、願うことしかできない」
九条の姿が、灰色の砂塵の中に消えていく。 私の右手の痣は、ついに肩を超え、鎖骨のあたりまで黒く染まっていた。 「紬さん。よく耐えました。ですが、見てください」
局長が指差した先。 銀河のさらに深淵に、光さえも飲み込むブラックホールの淵に、一軒の小さな、古びた喫茶店が浮かんでいた。 「あそこが『喫茶店メテオ』。航さんが遺した最後の『紬』という文字が、あなたを待っています」
私は、もう自分の名前さえ正しく発音できなくなっていた。 それでも、胸の奥の「熱」だけを頼りに、私は次なる絶望へと足を踏み出した。
(第6話へ続く)
【第5話 あとがき】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 執行官・九条の正体。
それは、かつて自らの記憶をすべて使い果たし、愛する人の名前さえ忘れてしまった「代筆者のなれの果て」でした。彼が紬を厳しく拒絶し続けていたのは、規律を守るためではなく、自分と同じ「空っぽの器」になる悲劇を止めたかったという、痛切なまでの優しさだったのです。紬が今回差し出したのは、自らの「誕生日の記憶」。自己のアイデンティティを削りながら綴られた『誓』の一文字は、九条の凍りついた時を、一瞬だけ動かしました。
▼『銀河の郵便局』の深淵を聴く(物語を「完成」させるために) 単なるBGMではありません。これらは、紬が失った記憶の残響であり、航が数式に込めた祈りの結晶です。音楽という名のインクで綴られた、もう一つの物語を体験してください。
①『祝福の螺旋 ―Bleeding Blue―』 ――自己を削る痛みの中で、紬がさらに深い銀河へと潜っていくテーマ。 激しく重厚なシンフォニック・サウンドが、紬の絶望と決意を象徴します。歌詞に刻まれた「Bleeding Blue(滴る青い血)」は、文字を綴るたびに魂が削られていく痛みの記録。美しさと暴力性が同居するこの旋律を聴くとき、あなたは紬と共に、銀河郵便局の重き扉を押し開けることになるでしょう。
②『Stardust Ink ― 神様にも消せない宛先 ―』 ――第5話推奨曲。九条が失った「宛先」と、紬がそれでも綴り続ける「誓い」。 疾走感溢れるリズムと、天を貫くような高潔なボーカルが、神(局長)の支配に抗う紬の「叛逆」を奏でます。宇宙の塵(Stardust)となって消えゆく記憶を、強引に言葉として定着させようとする切実な祈り。聴く者の胸を締め付けるサビの旋律は、時空を超えて航へと届く「光の道標」そのものです。
③『Inkwell of Galaxy -The Core Score-』 ――九条の懐中時計が刻む、残酷な忘却のリズム。 局長が刻む銀時計の秒針、そして航が遺した死の数式……。それらが噛み合う不穏な胎動を、電子音と重低音が完璧に描き出します。物語の裏側でうごめく「宇宙の真理」を覗き込むような、没入型のスコア。この音を聴くとき、あなたは銀河の「インク壺(Inkwell)」の中に沈み、物語の真実へと加速します。
④『銀河の郵便局 (GALAXY POST)』 ――全てを燃やし尽くした先、静寂の中に灯る「再会」の主題歌。 19の文字を綴り終え、自己を消滅させた紬が辿り着いた、最終回答。温かくもどこか儚いメロディは、記憶を失ってもなお消えない「魂の筆跡」を祝福します。物語のグランドフィナーレを飾るこの曲の最後の一音を聴き終えたとき、あなたの心には、一通の「宛先のない手紙」が静かに届いているはずです。
音楽と共に、物語の真の結末へ。
これらの楽曲は、物語を彩る装飾ではなく、紬と航が命を懸けて奏でた「叫び」そのものです。 テキストを読み、音楽を聴き、二つの感覚が交差したとき――『真・銀河の郵便局』は、あなたの心の中で本当の「完成」を迎えます。
【物語とシンクロする公式リンク】
Music (Suno): https://suno.com/song/@108sund
(※ここで全曲のフルバージョンを、物語の進行に合わせて聴くことができます)
TikTok: @108sund
X (Official): @108Sund
もし少しでも「自分を失いながらも綴り続ける紬の覚悟」に心が動かされたなら、【お気に入り登録】や【感想】、【ポイント投票】をいただけますと、彼女のペンを動かす大きな力になります。
【次回予告:第6話「喫茶店メテオの自衛」】
銀河の辺境に浮かぶ、時が止まった喫茶店。 そこには、航が紬を守るために遺した「最後の盾」――『紬』という自律する文字が、牙を剥いて待ち構えていた。
「愛」が、牙を剥く。愛する人を守るための拒絶。 紬は、自分自身の名前を冠したその文字に、どう立ち向かうのか。
第6話:喫茶店メテオの自衛 ――あなたの愛は、私を拒むための盾ですか?
そこは、どこまでも続く平原のように見えた。けれど、足元にあるのは土でも草でもない。幾億、幾兆という「動かなくなった時計の部品」が、砂漠の砂のように積み重なっている死の野原だった。 空には星もなく、ただ巨大な懐中時計の文字盤が、月のように冷たく、無機質な白光を放っている。
「……ここは?」
私は、ロイヤルブルーの痣が肩口まで這い上がってきた右腕を抱えながら、かすれた声で問うた。 一文字綴るごとに、私の心からは大切な記憶が剥がれ落ちていく。今はもう、自分がどんな小説を書いていたのか、そのタイトルさえ思い出せない。
「ここは『文字盤の墓場』。役割を終えた代筆者たちが、最後にたどり着く場所です」
局長はいつものように優雅な足取りで歩くが、その背中には、初めて見る「憐憫」のような影が差していた。 「紬さん。あなたが今まで対峙してきた九条という男は、秩序の番人である前に、このシステムの『最大の犠牲者』なのです」
その時、カチ、カチ、という乾いた金属音が平原に響き渡った。 積み上がった歯車の山を割って現れたのは、九条だった。しかし、彼の様子はこれまでの冷徹な執行官とは異なっていた。彼の纏う漆黒の法衣はボロボロに裂け、胸に下げた巨大な懐中時計からは、赤黒いインクが涙のように溢れ出している。
「……来るなと言ったはずだ。これ以上、この領域の奥へ踏み込めば、君の魂は『自分』という形を保てなくなる」
九条の声は、ひび割れたガラスのように震えていた。
彼が掲げた時計の蓋が開く。そこから溢れ出したのは、九条自身の記憶の断片だった。
それは、今から遠い昔――。
九条もまた、私と同じ「代筆者」だった。 彼には、病で明日をも知れぬ命となった恋人がいた。彼は彼女を救うために、銀河郵便局と契約し、自らの記憶をすべてインクに変えて手紙を書き続けた。
親の顔を忘れ、故郷の景色を忘れ、最後には自分の名前さえも捨てて。
けれど、彼が最後の一文字を書き終えたとき、奇跡は起きなかった。 彼が書き上げた手紙は、受け取るべき恋人の元へは届かなかった。なぜなら、彼が記憶をすべて使い果たした瞬間、彼の中から「彼女を愛していた」という事実そのものが消滅してしまい、手紙の『宛先』が宇宙から失われてしまったからだ。
「……私は、彼女を救うためにすべてを捨てた。だが、捨てすぎてしまったんだ。彼女が誰だったのか、どんな声で笑ったのか、なぜ私はこれほどまでに苦しいのか……その理由さえ、私はもう持っていない」
九条が絶叫する。彼の背後に、巨大な時計の幻影が立ち現れる。 それは、時間を巻き戻す装置ではない。持ち主が「忘れたこと」を永遠に刻み続ける、処刑の時計だ。
「紬、君も同じ道を歩んでいる! 航という男を救おうとすればするほど、君の中から『航を救いたい』と願う紬という人間が消えていく。残るのは、誰を待っているのかさえ分からない、空っぽの器だけだ!」
九条の懐中時計から、黒いインクの鎖が飛び出し、私を拘束しようと迫る。それは彼なりの、あまりにも不器用で暴力的な「慈悲」だった。これ以上進めば、私という人間が崩壊することを、彼は誰よりも知っているから。
「紬さん。選ぶのです」
局長が、静かに私の背中を押した。 「九条さんのように、忘却を受け入れて秩序の一部となるか。それとも、自分自身が消滅する恐怖を超えて、なおもそのペンを走らせるか。……次の一文字は、あなたの『存在そのもの』を削ることになります」
私は、感覚を失いつつある右手で、ロイヤルブルーの万年筆を握り直した。 確かに、九条の言う通りかもしれない。 さっき失った「未来の約束」の記憶と共に、私の心にはぽっかりと巨大な穴が開いている。航の顔を思い出そうとしても、水面に映る月のようにゆらゆらと揺れて、輪郭が捉えられない。
けれど、 心臓の奥、まだインクに侵食されていない最後の場所に、一粒の「熱」が残っていた。 それは「彼を救いたい」という理性的な願いではなかった。もっと原始的な、言葉になる前の叫び。 たとえ私が私でなくなっても、このペンが綴る一文字が、宇宙のどこかにいる彼の闇を照らすなら――
「……九条さん。あなたの痛みは、今の私には分かりません。あなたが忘れてしまったものは、もう二度と戻らないのかもしれない」
私は、九条が放つ黒いインクの鎖を、自らの万年筆の先で受け止めた。 「でも、あなたが今、こうして私を止めようとしているその『痛み』だけは……本物です。それは、あなたが彼女を愛していた、消えない証拠じゃないんですか!」
私は、自分の「誕生日」の記憶を――家族に祝われ、自分がこの世に生を受けたことを祝福された、最も根源的な自己肯定の記憶を、インク瓶に注ぎ込んだ。 視界が急激に暗転した。自分がいつ生まれたのか、何歳なのか、自分が誰なのか、その半分が闇に溶けて消えた。
けれど、その巨大な喪失と引き換えに、私のペン先からは、銀河のどの星よりも眩しい白銀の光が放たれた。
『誓』
五文字目。それは自分自身への、そして届かぬ恋人への、血を吐くような約束の言葉。 文字が刻まれた瞬間、九条を縛り付けていた懐中時計が、悲鳴のような金属音を立てて静止した。 黒いインクの鎖は光の塵となって霧散し、灰色だった「文字盤の墓場」に、一瞬だけ、色鮮やかな花が咲き乱れる幻影が見えた。それは九条が、そしてかつての代筆者たちが、守りたかった「いつかの春」の色彩だった。
「……馬鹿な。己の根源(ルーツ)を捨ててまで、文字を綴るというのか……」
九条は膝をつき、力なく笑った。彼の目から、黒いインクではない、透明な涙がひとしずくだけこぼれ落ちた。 「……行け、代筆者。君の物語が、私の結末とは違う場所へ辿り着くことを……今は、願うことしかできない」
九条の姿が、灰色の砂塵の中に消えていく。 私の右手の痣は、ついに肩を超え、鎖骨のあたりまで黒く染まっていた。 「紬さん。よく耐えました。ですが、見てください」
局長が指差した先。 銀河のさらに深淵に、光さえも飲み込むブラックホールの淵に、一軒の小さな、古びた喫茶店が浮かんでいた。 「あそこが『喫茶店メテオ』。航さんが遺した最後の『紬』という文字が、あなたを待っています」
私は、もう自分の名前さえ正しく発音できなくなっていた。 それでも、胸の奥の「熱」だけを頼りに、私は次なる絶望へと足を踏み出した。
(第6話へ続く)
【第5話 あとがき】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 執行官・九条の正体。
それは、かつて自らの記憶をすべて使い果たし、愛する人の名前さえ忘れてしまった「代筆者のなれの果て」でした。彼が紬を厳しく拒絶し続けていたのは、規律を守るためではなく、自分と同じ「空っぽの器」になる悲劇を止めたかったという、痛切なまでの優しさだったのです。紬が今回差し出したのは、自らの「誕生日の記憶」。自己のアイデンティティを削りながら綴られた『誓』の一文字は、九条の凍りついた時を、一瞬だけ動かしました。
▼『銀河の郵便局』の深淵を聴く(物語を「完成」させるために) 単なるBGMではありません。これらは、紬が失った記憶の残響であり、航が数式に込めた祈りの結晶です。音楽という名のインクで綴られた、もう一つの物語を体験してください。
①『祝福の螺旋 ―Bleeding Blue―』 ――自己を削る痛みの中で、紬がさらに深い銀河へと潜っていくテーマ。 激しく重厚なシンフォニック・サウンドが、紬の絶望と決意を象徴します。歌詞に刻まれた「Bleeding Blue(滴る青い血)」は、文字を綴るたびに魂が削られていく痛みの記録。美しさと暴力性が同居するこの旋律を聴くとき、あなたは紬と共に、銀河郵便局の重き扉を押し開けることになるでしょう。
②『Stardust Ink ― 神様にも消せない宛先 ―』 ――第5話推奨曲。九条が失った「宛先」と、紬がそれでも綴り続ける「誓い」。 疾走感溢れるリズムと、天を貫くような高潔なボーカルが、神(局長)の支配に抗う紬の「叛逆」を奏でます。宇宙の塵(Stardust)となって消えゆく記憶を、強引に言葉として定着させようとする切実な祈り。聴く者の胸を締め付けるサビの旋律は、時空を超えて航へと届く「光の道標」そのものです。
③『Inkwell of Galaxy -The Core Score-』 ――九条の懐中時計が刻む、残酷な忘却のリズム。 局長が刻む銀時計の秒針、そして航が遺した死の数式……。それらが噛み合う不穏な胎動を、電子音と重低音が完璧に描き出します。物語の裏側でうごめく「宇宙の真理」を覗き込むような、没入型のスコア。この音を聴くとき、あなたは銀河の「インク壺(Inkwell)」の中に沈み、物語の真実へと加速します。
④『銀河の郵便局 (GALAXY POST)』 ――全てを燃やし尽くした先、静寂の中に灯る「再会」の主題歌。 19の文字を綴り終え、自己を消滅させた紬が辿り着いた、最終回答。温かくもどこか儚いメロディは、記憶を失ってもなお消えない「魂の筆跡」を祝福します。物語のグランドフィナーレを飾るこの曲の最後の一音を聴き終えたとき、あなたの心には、一通の「宛先のない手紙」が静かに届いているはずです。
音楽と共に、物語の真の結末へ。
これらの楽曲は、物語を彩る装飾ではなく、紬と航が命を懸けて奏でた「叫び」そのものです。 テキストを読み、音楽を聴き、二つの感覚が交差したとき――『真・銀河の郵便局』は、あなたの心の中で本当の「完成」を迎えます。
【物語とシンクロする公式リンク】
Music (Suno): https://suno.com/song/@108sund
(※ここで全曲のフルバージョンを、物語の進行に合わせて聴くことができます)
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もし少しでも「自分を失いながらも綴り続ける紬の覚悟」に心が動かされたなら、【お気に入り登録】や【感想】、【ポイント投票】をいただけますと、彼女のペンを動かす大きな力になります。
【次回予告:第6話「喫茶店メテオの自衛」】
銀河の辺境に浮かぶ、時が止まった喫茶店。 そこには、航が紬を守るために遺した「最後の盾」――『紬』という自律する文字が、牙を剥いて待ち構えていた。
「愛」が、牙を剥く。愛する人を守るための拒絶。 紬は、自分自身の名前を冠したその文字に、どう立ち向かうのか。
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