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第7話:書き損じの愛おしさ
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カラン、という、かつて何度も聞いたはずのドアベルの音が、今の私には「異世界の境界を越える音」のように響いた。 喫茶店メテオの店内は、銀河の猛威が嘘のように静まり返っている。使い込まれた焦げ茶色のカウンター、壁に並ぶ青いコーヒーカップ、そして、古びたスピーカーから流れる、埃を被ったような古いジャズの調べ。すべてが、私の知っているあの場所のままだった。
ただ一つ、窓の外に広がっているのが東京の街角ではなく、ゆっくりと渦巻く巨大な銀河の雲であるという一点を除いては。窓から差し込む光は陽光ではなく、死にゆく星々が放つ冷たい残光だった。
窓際の指定席に、彼がいた。 陽光を透かしたような、淡い青の輪郭。航は、一口もつけられていない冷めきったコーヒーを前にして、何かをずっと書き続けていた。その横顔は、私が一文字綴るたびに自分の中から削り取ってきた「航」という存在の、最も純粋で、最も痛々しいエッセンスだった。
「……航」
声が震えた。空っぽの胸の奥で、名前という音だけが熱を帯びて弾ける。彼がこちらを向いた瞬間、私は息を呑んだ。 彼の目の前にあるのは、整然とした数式ではない。原稿用紙を埋め尽くしているのは、無数のバツ印と、激しい筆圧による紙の破れ、インクの大きな滲み、そして何度も書き直された形跡のある、歪な「言葉」の羅列だった。
「……紬。来ちゃったんだね。あんなに、僕の数式が君を拒んでいたのに。あんなに、僕という存在から君を遠ざけようとしたのに」
航の声は、記憶を失った私の空っぽの胸を、直接震わせた。今の私には、彼と出会った日の雨の匂いも、彼を好きになった具体的な理由も、もう一つも思い出せない。けれど、この声を聞いた瞬間に、全身の細胞が「待っていた」と叫んでいることだけが分かった。理由は消えても、本能が彼を求めていた。
「……あなたの数式が、私を追い払おうとしていたのは分かったわ。でも、私はもう綴り続けるって決めたの。あなたが何を隠していても、たとえ私が誰だか分からなくなっても、この物語の最後の一行を、空白のままにはしておかない」
私は震える足で一歩、また一歩と彼に近づく。足元の床板が軋む音さえ、宇宙の静寂の中では審判の音のように聞こえた。航は悲しげに微笑み、目の前の原稿用紙を指差した。
「見てよ、紬。僕は完璧な計算で、君の人生から『僕の死』という最大のエラーを取り除こうとした。この銀河郵便局のシステムを逆手に取って、因果律の数式を書き換えれば、君は悲しまなくて済むはずだったんだ。でも、どうしても計算が合わない場所がある。どれだけ美しく、神に届くような式を立てても、このインクのシミひとつ、たった一行の『書き損じ』に、僕の論理は勝てないんだよ」
私は彼の隣に立ち、その原稿用紙を覗き込んだ。 そこには、数学者の彼が忌み嫌うはずの「不確定要素」がびっしりと書き込まれていた。 私との何気ない喧嘩の、理不尽な言い合い。待ち合わせに遅れた私が、息を切らして付いた下手な嘘。一緒に焦がして笑い合ったトーストの、苦くて香ばしい匂い。誕生日でも記念日でもない、名前のつかない退屈な火曜日の午後。 彼が「無駄な不純物」として人生の数式から排除しようとした、生活の断片たちが、ロイヤルブルーのインクで愛おしく、そして無様に綴られていた。
「秩序からすれば、これはゴミだ。人生を美しく完成させるためには、切り捨てるべきノイズなんだ。でも、僕にとっては、この『書き損じ』こそが、君と生きた唯一の証だった。紬、僕は……失敗ばかりの、この不完全な僕たちの毎日を、どうしても『正解』に置き換えることができなかった。それを消すことは、僕自身を殺すことよりも、ずっと怖かったんだ」
航の瞳から、一滴のインクのような涙がこぼれ、原稿用紙に新しい滲みを作った。 その時、喫茶店の外壁が激しく震えた。絶対零度の風が窓ガラスを揺らし、執行官・九条の時計の針が、この聖域を破壊しようと迫っている。局長の銀時計も、非情な速度で秒針を刻んでいた。
「紬さん! 7文字目を! 彼の未完成な『書き損じ』を、あなたのインクで肯定するのです! 完璧な正解など、この宇宙のどこにも存在しないことを、あなたが証明するのです!」
局長の声が、壁を透過して響き渡る。 私は、ロイヤルブルーの万年筆を構えた。 今回、私が差し出さなければならない代償。それは、私の心に最後に残された、重くて硬い防壁――「自分を許す力(プライド)」だった。 作家として、言葉で世界を支配しようとしてきた傲慢。美しく、論理的に、誰からも肯定される人生を歩みたかったという虚栄心。失敗した自分や、醜い感情を持つ自分を許せず、常に「正しい私」を演じてきた心の殻。それらをすべて捨て、泥臭い「失敗」と、不格好な「愛」と共に生きる覚悟を、インクに変える。
私はペン先を、自らの胸ではなく、航が「間違い」だと言い切ったその原稿用紙の余白へと突き立てた。
私の中から、自分を守ろうとする最後の一線が崩落していく。自分が正しくありたい、美しくありたいと願った自尊心のすべてが、指先から吸い出され、万年筆の中で青黒い業火となって燃え盛る。 私は、完璧ではない、弱くて不格好で、理由も思い出せないまま彼を求めるだけの自分を、そのまま航へと差し出した。
『抱』
それは、正解も不正解も、美しさも醜さも、すべてを飲み込み、引き受けるという意志。 書き損じだらけの彼の人生を、そして空っぽになった私の未来を、一つの物語としてまるごと「抱きしめる」ための文字。 文字が刻まれた瞬間、航の原稿用紙に溢れていたバツ印が、一つ残らず眩しい光を放ち始めた。 完璧だった数式はガラスのように砕け散り、代わりに、人間臭い「書き損じ」たちが手を繋ぎ、銀河の闇を照らす巨大な星座へと変わっていく。失敗はエラーではなく、私たちがこの残酷な世界で呼吸した証としての「祝福」へと反転したのだ。
「……紬。君は、本当に……バカだね。僕の計算を、全部台無しにするなんて」
航が笑った。その笑顔は、かつて当たり前のようにそばにあったはずの温かな質感を伴って、私の鼓膜を震わせた。 彼の手が、今度は透過することなく、私の頬に触れた。温かかった。失ったはずの「熱」が、今、記憶としてではなく、共有された「現在」として私の肌に、魂に、深く刻み込まれる。
しかし、その幸福な時間は長くは続かなかった。 メテオの壁が、絶対零度の風によって引き裂かれ、天井から銀河の砂が降り注ぐ。局長が静かに扉を開け、その先にある「審判の場所」を示した。
「行きましょう、紬さん。文字は刻まれましたが、因果の天秤はまだ釣り合っていません。次に向かうのは、カシオペアの深淵。……すべての記憶が精算される、『銀河の天秤』が待っています」
私は、航の手を強く握りしめた。理由も、出会いも、自分自身のプライドも消えていく。私はもう、自分がどんな人間だったのかさえ思い出せない。 けれど、この手に残る「不完全な熱」だけが、私を次の絶望へと、そしてその先にあるはずの光へと歩ませる唯一の力だった。
(第8話へ続く)
【第7話 あとがき】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 航が「消したかった失敗」を、紬が「抱きしめるべき宝物」として上書きする。
この行為こそが、数式(論理)に言葉(感情)が打ち勝つ瞬間です。この局面で、紬が捨てた「プライド」は、彼女を縛っていた「正しさ」の呪縛でもありました。それを失うことで、彼女はより深く航と繋がることができたのです。不完全だからこそ愛おしい。そんな書き損じだらけの二人の物語を、どうか最後まで見守ってください。
▼『銀河の郵便局』の深淵を聴く(物語を「完成」させるために) 単なるBGMではありません。これらは、紬が失った記憶の残響であり、航が数式に込めた祈りの結晶です。音楽という名のインクで綴られた、もう一つの物語を体験してください。
①『祝福の螺旋 ―Bleeding Blue―』 ――紬が「プライド」を捨て、不完全な愛を肯定した瞬間の、痛切な旋律。 激しく重厚なシンフォニック・サウンドが、紬の絶望と決意を象徴します。歌詞に刻まれた「Bleeding Blue(滴る青い血)」は、文字を綴るたびに魂が削られていく痛みの記録。美しさと暴力性が同居するこの旋律を聴くとき、あなたは紬と共に、銀河郵便局の重き扉を押し開けることになるでしょう。
②『Stardust Ink ― 神様にも消せない宛先 ―』 ――航の書き損じが星屑となって舞い上がる、幻想的な光景と共に。 疾走感溢れるリズムと、天を貫くような高潔なボーカルが、神(局長)の支配に抗う紬の「叛逆」を奏でます。宇宙の塵(Stardust)となって消えゆく記憶を、強引に言葉として定着させようとする切実な祈り。聴く者の胸を締め付けるサビの旋律は、時空を超えて航へと届く「光の道標」そのものです。
③『Inkwell of Galaxy -The Core Score-』 ――この瞬間の推奨曲。喫茶店に流れる古いジャズが、銀河の崩壊音へと溶けていく静寂。 局長が刻む銀時計の秒針、そして航が遺した死の数式……。それらが噛み合う不穏な胎動を、電子音と重低音が完璧に描き出します。物語の裏側でうごめく「宇宙の真理」を覗き込むような、没入型のスコア。この音を聴くとき、あなたは銀河の「インク壺(Inkwell)」の中に沈み、物語の真実へと加速します。
④『銀河の郵便局 (GALAXY POST)』 ――全てを燃やし尽くした先、静寂の中に灯る「再会」の主題歌。 19の文字を綴り終え、自己を消滅させた紬が辿り着いた、最終回答。温かくもどこか儚いメロディは、記憶を失ってもなお消えない「魂の筆跡」を祝福します。物語のグランドフィナーレを飾るこの曲の最後の一音を聴き終えたとき、あなたの心には、一通の「宛先のない手紙」が静かに届いているはずです。
音楽と共に、物語の真の結末へ。
これらの楽曲は、物語を彩る装飾ではなく、紬と航が命を懸けて奏でた「叫び」そのものです。 テキストを読み、音楽を聴き、二つの感覚が交差したとき――『真・銀河の郵便局』は、あなたの心の中で本当の「完成」を迎えます。
【物語とシンクロする公式リンク】
Music (Suno): https://suno.com/song/@108sund (※ここで全曲のフルバージョンを、物語の進行に合わせて聴くことができます)
TikTok: @108sund
X (Official): @108Sund
もし少しでも「失敗さえも愛として綴る紬の決意」に心が揺さぶられたなら、【お気に入り登録】や【感想】、【ポイント投票】をいただけますと、彼女のペンを動かす大きな力になります。
【次回予告:第8話「銀河の天秤」】
カシオペアの最深部。そこに鎮座するのは、全宇宙の因果を司る黄金の天秤。 航を救うために必要な最後の重り。それは、紬がこの旅を始めた理由そのもの――「航を愛した最初の一歩(出会いの記憶)」だった。
「理由を捨てて、それでも私は、あなたを愛すると誓える?」
第8話:銀河の天秤 ――さよなら、私の始まり。
ただ一つ、窓の外に広がっているのが東京の街角ではなく、ゆっくりと渦巻く巨大な銀河の雲であるという一点を除いては。窓から差し込む光は陽光ではなく、死にゆく星々が放つ冷たい残光だった。
窓際の指定席に、彼がいた。 陽光を透かしたような、淡い青の輪郭。航は、一口もつけられていない冷めきったコーヒーを前にして、何かをずっと書き続けていた。その横顔は、私が一文字綴るたびに自分の中から削り取ってきた「航」という存在の、最も純粋で、最も痛々しいエッセンスだった。
「……航」
声が震えた。空っぽの胸の奥で、名前という音だけが熱を帯びて弾ける。彼がこちらを向いた瞬間、私は息を呑んだ。 彼の目の前にあるのは、整然とした数式ではない。原稿用紙を埋め尽くしているのは、無数のバツ印と、激しい筆圧による紙の破れ、インクの大きな滲み、そして何度も書き直された形跡のある、歪な「言葉」の羅列だった。
「……紬。来ちゃったんだね。あんなに、僕の数式が君を拒んでいたのに。あんなに、僕という存在から君を遠ざけようとしたのに」
航の声は、記憶を失った私の空っぽの胸を、直接震わせた。今の私には、彼と出会った日の雨の匂いも、彼を好きになった具体的な理由も、もう一つも思い出せない。けれど、この声を聞いた瞬間に、全身の細胞が「待っていた」と叫んでいることだけが分かった。理由は消えても、本能が彼を求めていた。
「……あなたの数式が、私を追い払おうとしていたのは分かったわ。でも、私はもう綴り続けるって決めたの。あなたが何を隠していても、たとえ私が誰だか分からなくなっても、この物語の最後の一行を、空白のままにはしておかない」
私は震える足で一歩、また一歩と彼に近づく。足元の床板が軋む音さえ、宇宙の静寂の中では審判の音のように聞こえた。航は悲しげに微笑み、目の前の原稿用紙を指差した。
「見てよ、紬。僕は完璧な計算で、君の人生から『僕の死』という最大のエラーを取り除こうとした。この銀河郵便局のシステムを逆手に取って、因果律の数式を書き換えれば、君は悲しまなくて済むはずだったんだ。でも、どうしても計算が合わない場所がある。どれだけ美しく、神に届くような式を立てても、このインクのシミひとつ、たった一行の『書き損じ』に、僕の論理は勝てないんだよ」
私は彼の隣に立ち、その原稿用紙を覗き込んだ。 そこには、数学者の彼が忌み嫌うはずの「不確定要素」がびっしりと書き込まれていた。 私との何気ない喧嘩の、理不尽な言い合い。待ち合わせに遅れた私が、息を切らして付いた下手な嘘。一緒に焦がして笑い合ったトーストの、苦くて香ばしい匂い。誕生日でも記念日でもない、名前のつかない退屈な火曜日の午後。 彼が「無駄な不純物」として人生の数式から排除しようとした、生活の断片たちが、ロイヤルブルーのインクで愛おしく、そして無様に綴られていた。
「秩序からすれば、これはゴミだ。人生を美しく完成させるためには、切り捨てるべきノイズなんだ。でも、僕にとっては、この『書き損じ』こそが、君と生きた唯一の証だった。紬、僕は……失敗ばかりの、この不完全な僕たちの毎日を、どうしても『正解』に置き換えることができなかった。それを消すことは、僕自身を殺すことよりも、ずっと怖かったんだ」
航の瞳から、一滴のインクのような涙がこぼれ、原稿用紙に新しい滲みを作った。 その時、喫茶店の外壁が激しく震えた。絶対零度の風が窓ガラスを揺らし、執行官・九条の時計の針が、この聖域を破壊しようと迫っている。局長の銀時計も、非情な速度で秒針を刻んでいた。
「紬さん! 7文字目を! 彼の未完成な『書き損じ』を、あなたのインクで肯定するのです! 完璧な正解など、この宇宙のどこにも存在しないことを、あなたが証明するのです!」
局長の声が、壁を透過して響き渡る。 私は、ロイヤルブルーの万年筆を構えた。 今回、私が差し出さなければならない代償。それは、私の心に最後に残された、重くて硬い防壁――「自分を許す力(プライド)」だった。 作家として、言葉で世界を支配しようとしてきた傲慢。美しく、論理的に、誰からも肯定される人生を歩みたかったという虚栄心。失敗した自分や、醜い感情を持つ自分を許せず、常に「正しい私」を演じてきた心の殻。それらをすべて捨て、泥臭い「失敗」と、不格好な「愛」と共に生きる覚悟を、インクに変える。
私はペン先を、自らの胸ではなく、航が「間違い」だと言い切ったその原稿用紙の余白へと突き立てた。
私の中から、自分を守ろうとする最後の一線が崩落していく。自分が正しくありたい、美しくありたいと願った自尊心のすべてが、指先から吸い出され、万年筆の中で青黒い業火となって燃え盛る。 私は、完璧ではない、弱くて不格好で、理由も思い出せないまま彼を求めるだけの自分を、そのまま航へと差し出した。
『抱』
それは、正解も不正解も、美しさも醜さも、すべてを飲み込み、引き受けるという意志。 書き損じだらけの彼の人生を、そして空っぽになった私の未来を、一つの物語としてまるごと「抱きしめる」ための文字。 文字が刻まれた瞬間、航の原稿用紙に溢れていたバツ印が、一つ残らず眩しい光を放ち始めた。 完璧だった数式はガラスのように砕け散り、代わりに、人間臭い「書き損じ」たちが手を繋ぎ、銀河の闇を照らす巨大な星座へと変わっていく。失敗はエラーではなく、私たちがこの残酷な世界で呼吸した証としての「祝福」へと反転したのだ。
「……紬。君は、本当に……バカだね。僕の計算を、全部台無しにするなんて」
航が笑った。その笑顔は、かつて当たり前のようにそばにあったはずの温かな質感を伴って、私の鼓膜を震わせた。 彼の手が、今度は透過することなく、私の頬に触れた。温かかった。失ったはずの「熱」が、今、記憶としてではなく、共有された「現在」として私の肌に、魂に、深く刻み込まれる。
しかし、その幸福な時間は長くは続かなかった。 メテオの壁が、絶対零度の風によって引き裂かれ、天井から銀河の砂が降り注ぐ。局長が静かに扉を開け、その先にある「審判の場所」を示した。
「行きましょう、紬さん。文字は刻まれましたが、因果の天秤はまだ釣り合っていません。次に向かうのは、カシオペアの深淵。……すべての記憶が精算される、『銀河の天秤』が待っています」
私は、航の手を強く握りしめた。理由も、出会いも、自分自身のプライドも消えていく。私はもう、自分がどんな人間だったのかさえ思い出せない。 けれど、この手に残る「不完全な熱」だけが、私を次の絶望へと、そしてその先にあるはずの光へと歩ませる唯一の力だった。
(第8話へ続く)
【第7話 あとがき】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 航が「消したかった失敗」を、紬が「抱きしめるべき宝物」として上書きする。
この行為こそが、数式(論理)に言葉(感情)が打ち勝つ瞬間です。この局面で、紬が捨てた「プライド」は、彼女を縛っていた「正しさ」の呪縛でもありました。それを失うことで、彼女はより深く航と繋がることができたのです。不完全だからこそ愛おしい。そんな書き損じだらけの二人の物語を、どうか最後まで見守ってください。
▼『銀河の郵便局』の深淵を聴く(物語を「完成」させるために) 単なるBGMではありません。これらは、紬が失った記憶の残響であり、航が数式に込めた祈りの結晶です。音楽という名のインクで綴られた、もう一つの物語を体験してください。
①『祝福の螺旋 ―Bleeding Blue―』 ――紬が「プライド」を捨て、不完全な愛を肯定した瞬間の、痛切な旋律。 激しく重厚なシンフォニック・サウンドが、紬の絶望と決意を象徴します。歌詞に刻まれた「Bleeding Blue(滴る青い血)」は、文字を綴るたびに魂が削られていく痛みの記録。美しさと暴力性が同居するこの旋律を聴くとき、あなたは紬と共に、銀河郵便局の重き扉を押し開けることになるでしょう。
②『Stardust Ink ― 神様にも消せない宛先 ―』 ――航の書き損じが星屑となって舞い上がる、幻想的な光景と共に。 疾走感溢れるリズムと、天を貫くような高潔なボーカルが、神(局長)の支配に抗う紬の「叛逆」を奏でます。宇宙の塵(Stardust)となって消えゆく記憶を、強引に言葉として定着させようとする切実な祈り。聴く者の胸を締め付けるサビの旋律は、時空を超えて航へと届く「光の道標」そのものです。
③『Inkwell of Galaxy -The Core Score-』 ――この瞬間の推奨曲。喫茶店に流れる古いジャズが、銀河の崩壊音へと溶けていく静寂。 局長が刻む銀時計の秒針、そして航が遺した死の数式……。それらが噛み合う不穏な胎動を、電子音と重低音が完璧に描き出します。物語の裏側でうごめく「宇宙の真理」を覗き込むような、没入型のスコア。この音を聴くとき、あなたは銀河の「インク壺(Inkwell)」の中に沈み、物語の真実へと加速します。
④『銀河の郵便局 (GALAXY POST)』 ――全てを燃やし尽くした先、静寂の中に灯る「再会」の主題歌。 19の文字を綴り終え、自己を消滅させた紬が辿り着いた、最終回答。温かくもどこか儚いメロディは、記憶を失ってもなお消えない「魂の筆跡」を祝福します。物語のグランドフィナーレを飾るこの曲の最後の一音を聴き終えたとき、あなたの心には、一通の「宛先のない手紙」が静かに届いているはずです。
音楽と共に、物語の真の結末へ。
これらの楽曲は、物語を彩る装飾ではなく、紬と航が命を懸けて奏でた「叫び」そのものです。 テキストを読み、音楽を聴き、二つの感覚が交差したとき――『真・銀河の郵便局』は、あなたの心の中で本当の「完成」を迎えます。
【物語とシンクロする公式リンク】
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もし少しでも「失敗さえも愛として綴る紬の決意」に心が揺さぶられたなら、【お気に入り登録】や【感想】、【ポイント投票】をいただけますと、彼女のペンを動かす大きな力になります。
【次回予告:第8話「銀河の天秤」】
カシオペアの最深部。そこに鎮座するのは、全宇宙の因果を司る黄金の天秤。 航を救うために必要な最後の重り。それは、紬がこの旅を始めた理由そのもの――「航を愛した最初の一歩(出会いの記憶)」だった。
「理由を捨てて、それでも私は、あなたを愛すると誓える?」
第8話:銀河の天秤 ――さよなら、私の始まり。
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