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第11話:海の底の図書館
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右腕を蝕む「痣」が、心臓を直接叩いている。 ドクン、ドクンと不規則に波打つ脈動は、もはや私の生命の拍動ではなく、侵食するロイヤルブルーのインクが奏でる死へのカウントダウンだった。視界の端々が、水に溶けた絵の具のようにどろりと滲み、現実と虚構の境界が曖昧になっていく。私は、自らの肉体が「人間」という形を保てる限界が、すぐそこまで――あと数時間、あるいは数文字の猶予しかないことを本能で悟っていた。
「……探しに行かなければ。あの人の、本当の言葉を」
局長や執行官たちの冷徹な監視をくぐり抜け、私は銀河郵便局の最深部、禁忌とされる領域へと足を踏み入れた。そこは「海の底の図書館」と呼ばれる場所。銀河に散ったあらゆる生命の、最も古く、最も純粋で、それゆえに最も残酷な記憶が沈殿する墓標だ。航がかつて、遠い目をして語っていた「故郷」――彼が数式という鎧を纏う前に愛した、青い記憶の源泉。
重厚な真鍮の扉を開け、階段を下りるたびに、周囲の空気は目に見えて湿り気を帯び、比重を増していった。 やがて辿り着いたその場所は、息を呑むほどに静謐で、悲劇的なまでに美しかった。 見渡す限りの巨大な本棚が、底の見えない深い藍色の水に浸されている。本棚の隙間を、光る小魚のような形をした人々の記憶の断片が群れをなして泳ぎ、水面からはるか遠い、現世の星々の光が揺らめきながらカーテンのように差し込んでいた。
私は、重い水圧に耐えながら、水底を歩くようにゆっくりと進んだ。 不思議と苦しさはない。肺は酸素ではなく、冷たい情報の海を吸い込んでいる。ただ、一歩進むごとに、私の痣から濃いインクが糸を引くように溶け出し、図書館の青に混ざり合っていく。私が私を失い、この物語の一部へと溶け出していく速度が、この静寂の中で加速していくのがわかった。
「……航。あなたは、ここに何を置いていったの?」
その時、本棚の最下層、白い砂に半分埋もれるようにして一冊の古いスケッチブックが落ちているのが見えた。 革の表紙は水の浸食でボロボロになっていたが、そこに記された筆致を見た瞬間、私の心臓が跳ねた。幼い、けれど迷いのない、几帳面なフォントのような文字。彼の名前。
震える指でページをめくると、そこには無数の、数学者さえも絶句するような難解な数式と、それに不釣り合いなほど繊細で美しい星図が描かれていた。そして、最後のページ。そこには厳重に封印された一通の手紙が挟まれていた。 宛先は――『未来の僕、あるいは、僕を見つけてしまう不運な君へ』。
封を切った瞬間、冷たい衝撃が走った。 中にあったのは、便箋ではない。銀河の星くずを練り込んだような、重みのある不思議な紙。そこに綴られていたのは、まだ少年の面影を残していた頃の航が、ある圧倒的な「確信」を持って記した予言、いや、遺言だった。
『僕は知っている。 僕がこの宇宙から消える瞬間、僕の隣には、僕のせいで全てを失った彼女がいることを。 僕の脳内に絶えず流れるこの「計算」は、呪いだ。 僕が世界を数式で理解しようとすればするほど、未来は残酷な一点へと収斂していく。 僕と彼女が出会えば、因果の歯車が狂い出す。彼女は僕を救いたいと願い、その代価として自分自身を切り刻み、銀河のインクに変えて自らを消滅させてしまうだろう。 もし、今この手紙を読んでいるのが「君」――紬なら、お願いだ。 今すぐにペンを置いて、ここから立ち去ってほしい。 僕が死の運命を受け入れることは、僕が僕の意志で導き出した最善の、そして唯一の「解」なんだ。 君が僕を救おうとすることは、僕が最も恐れていた「計算外」の悲劇……僕の愛が君を壊すという、最悪の証明なんだよ』
紙が、私の目から溢れた涙で濡れ、ロイヤルブルーに滲んだ。 航。あなたは、ずっと前から知っていたのね。 自分と私が出会えば、私を不幸にすると。私を殺してしまうと。 だから、あなたはあんなにも、私に踏み込ませないよう、数学という冷たい壁を築いて自分を隔離していたの? 私を「事故に遭わなかった未来」へ無理やり押し戻すために、自分一人が宇宙の塵になる計算を、あんなにも幼い頃から、たった一人で温めていたというの……?
「……ふざけないでよ、そんなの」
私は、喉を掻き切るような声で叫んだ。 痣が、まるで意志を持っているかのように激しく、灼熱の痛みを持って脈打つ。 彼の「計算」が、私を想うがゆえの究極の献身であったとしても、それが私に生きる理由を、体温を、愛を教えてくれた「彼という存在」をこの世から抹消するものなら、私はそんな救済、死んでも認めない。
少年だった航の、あまりにも純粋で、独りよがりで、悲しい「遺志」。 それは私を遠ざけ、自らの死を「完璧な正解」として完結させるための、呪いの予言だった。 けれど、航。 あなたが完璧だと信じたその予言の中で、唯一、計算できていなかったことがある。 それは、あなたが私を救うために自分を捨てたように、私もまた、あなたを救うためなら自分という存在が消えてなくなることなど、微塵も怖くないほどに――あなたを、理屈も数式も、己の命さえも投げ捨てて愛してしまったことだ。
私は、心臓を食い破ろうとする痣の痛みを気力で抑え込み、万年筆を抜き放った。 そして、航が遺した予言の紙そのものに、真っ向から因果を叩き壊すように文字を刻みつけた。
『遺』
それは、あなたが独りで遺そうとした「悲しい完結」を、私がすべて奪い取るという誓い。 それは、あなたが宇宙に遺した言葉の断片をすべて拾い集め、絶望の予言を、私たちが共に生きる「続き」の物語へと書き換えるための宣戦布告。
文字が刻まれた瞬間、海の底の図書館が、悲鳴を上げるように激しく揺れた。 周囲の本棚から、何万という人々の記憶の頁が剥がれ落ち、私の周囲で青い吹雪のように舞い上がる。航の予言の文字が、私の刻んだ『遺』という一文字に吸い込まれ、黄金の光となって爆ぜた。
「……紬さん。それは、死者への冒涜ですよ」
水底の影から、執行官でも局長でもない、この世のものならぬ冷気を纏った「局長」その人が現れた。彼の足元では、図書館の青い水が、一瞬で黒い氷へと凍りついていく。 「彼は、自ら消えることを望んだ。それが、彼という精緻な計算機が出した最善の、そして最も美しい答えだった。あなたは今、その神聖な数式を、感情という名の汚れたノイズで塗り潰したのです。その代償を、理解していますか?」
「ノイズで結構よ、局長。汚れていても、それが私の愛なんだから」 私は、皮膚が裂け、インクが滴り落ちる右腕を、高々と掲げた。 「彼が遺したものが『絶望の答え』なら、私はそれをインクにして、神様だって予想できなかった最高の『間違い』を書いてみせる。痣が私の心臓を潰し、私が私でなくなるその瞬間まで!」
局長は初めて、その冷徹な仮面の奥で、愉悦とも驚愕ともつかぬ、歪な笑みを浮かべた。 「……素晴らしい。数式を凌駕する、あなたの『執筆』。地獄の果てまで見せていただきましょう」
図書館の水が逆流し、銀河の渦へと私は再び飲み込まれていく。 手の中に残された航のスケッチブックだけが、私と彼の、消えない「遺産」として、凍えそうな私の魂を熱く焦がしていた。
(第12話へ続く)
【第11話 あとがき】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 航の原点である「海の底の図書館」を舞台に、彼が少年時代から抱えていた予言を暴き出しました。
それは、あまりにも孤独で完璧な自己犠牲の記録。文字『遺』は、航が遺した呪縛であると同時に、紬がそれを自らの意志で受け取り、未来へと繋ぐための「遺産」へと昇華させる重要な分岐点です。自らの不幸さえも「彼女を救うための伏線」として受け入れようとした少年の祈りに、今の紬はどう応えるのか。水底の静寂の中で、二人の運命は一つの真実へと収束していきます。
▼『銀河の郵便局』の深淵を聴く(物語を「完成」させるために) 単なるBGMではありません。これらは、紬が失った記憶の残響であり、航が数式に込めた祈りの結晶です。音楽という名のインクで綴られた、もう一つの物語を体験してください。
①『祝福の螺旋 ―Bleeding Blue―』 ――静寂なる水底に響く、予言が砕け散る音。 激しく重厚なシンフォニック・サウンドが、紬の絶望と決意を象徴します。歌詞に刻まれた「Bleeding Blue(滴る青い血)」は、文字を綴るたびに魂が削られていく痛みの記録。美しさと暴力性が同居するこの旋律を聴くとき、あなたは紬と共に、銀河郵便局の重き扉を押し開けることになるでしょう。
②『Stardust Ink ― 神様にも消せない宛先 ―』 ――この瞬間の推奨曲。幼き日の航が、涙を堪えて綴った筆跡の旋律。 疾走感溢れるリズムと,天を貫くような高潔なボーカルが、神(局長)の支配に抗う紬の「叛逆」を奏でます。宇宙の塵(Stardust)となって消えゆく記憶を、強引に言葉として定着させようとする切実な祈り。聴く者の胸を締め付けるサビの旋律は、時空を超えて航へと届く「光の道標」そのものです。
③『Inkwell of Galaxy -The Core Score-』 ――数式と感情が衝突し、宇宙の法則が歪む不協和音。 局長が刻む銀時計の秒針、そして航が遺した死の数式……。それらが噛み合う不穏な胎動を、電子音と重低音が完璧に描き出します。物語の裏側でうごめく「宇宙の真理」を覗き込むような、没入型のスコア。この音を聴くとき、あなたは銀河の「インク壺(Inkwell)」の中に沈み、物語の真実へと加速します。
④『銀河の郵便局 (GALAXY POST)』 ――全てを燃やし尽くした先、静寂の中に灯る「再会」の主題歌。 19の文字を綴り終え、自己を消滅させた紬が辿り着いた、最終回答。温かくもどこか儚いメロディは、記憶を失ってもなお消えない「魂の筆跡」を祝福します。物語のグランドフィナーレを飾るこの曲の最後の一音を聴き終えたとき、あなたの心には、一通の「宛先のない手紙」が静かに届いているはずです。
音楽と共に、物語の真の結末へ。
これらの楽曲は、物語を彩る装飾ではなく、紬と航が命を懸けて奏でた「叫び」そのものです。 テキストを読み、音楽を聴き、二つの感覚が交差したとき――『真・銀河の郵便局』は、あなたの心の中で本当の「完成」を迎えます。
【物語とシンクロする公式リンク】
Music (Suno): https://suno.com/song/@108sund
(※ここで全曲のフルバージョンを、物語の進行に合わせて聴くことができます)
TikTok: @108sund
X (Official): @108Sund
もし少しでも「託された真実の重みを受け止め、歩み続ける紬の姿」に心を寄せたいと感じていただけたら、【お気に入り登録】や【感想】、【ポイント投票】をいただけますと、彼女のペンを動かす大きな力になります。
【次回予告:第12話「航の計算、宇宙の論理」】
ついに明かされる、航が導き出した「救済」の全貌。 それは、紬という存在をこの世界に繋ぎ止めるために、自分という「項」を因果律から完全に抹消する、あまりにも残酷な計算式だった。
「僕が消えれば、君の事故は無かったことになる。これは、僕ができる最初で最後の、完璧な証明なんだ」
紬は、その非情な愛の論理に対し、自らの命をインクに変えて、ありえない「誤答」を突きつける。
第12話:航の計算、宇宙の論理 ――12文字目、それは天を欺く愛の計算『算』。
「……探しに行かなければ。あの人の、本当の言葉を」
局長や執行官たちの冷徹な監視をくぐり抜け、私は銀河郵便局の最深部、禁忌とされる領域へと足を踏み入れた。そこは「海の底の図書館」と呼ばれる場所。銀河に散ったあらゆる生命の、最も古く、最も純粋で、それゆえに最も残酷な記憶が沈殿する墓標だ。航がかつて、遠い目をして語っていた「故郷」――彼が数式という鎧を纏う前に愛した、青い記憶の源泉。
重厚な真鍮の扉を開け、階段を下りるたびに、周囲の空気は目に見えて湿り気を帯び、比重を増していった。 やがて辿り着いたその場所は、息を呑むほどに静謐で、悲劇的なまでに美しかった。 見渡す限りの巨大な本棚が、底の見えない深い藍色の水に浸されている。本棚の隙間を、光る小魚のような形をした人々の記憶の断片が群れをなして泳ぎ、水面からはるか遠い、現世の星々の光が揺らめきながらカーテンのように差し込んでいた。
私は、重い水圧に耐えながら、水底を歩くようにゆっくりと進んだ。 不思議と苦しさはない。肺は酸素ではなく、冷たい情報の海を吸い込んでいる。ただ、一歩進むごとに、私の痣から濃いインクが糸を引くように溶け出し、図書館の青に混ざり合っていく。私が私を失い、この物語の一部へと溶け出していく速度が、この静寂の中で加速していくのがわかった。
「……航。あなたは、ここに何を置いていったの?」
その時、本棚の最下層、白い砂に半分埋もれるようにして一冊の古いスケッチブックが落ちているのが見えた。 革の表紙は水の浸食でボロボロになっていたが、そこに記された筆致を見た瞬間、私の心臓が跳ねた。幼い、けれど迷いのない、几帳面なフォントのような文字。彼の名前。
震える指でページをめくると、そこには無数の、数学者さえも絶句するような難解な数式と、それに不釣り合いなほど繊細で美しい星図が描かれていた。そして、最後のページ。そこには厳重に封印された一通の手紙が挟まれていた。 宛先は――『未来の僕、あるいは、僕を見つけてしまう不運な君へ』。
封を切った瞬間、冷たい衝撃が走った。 中にあったのは、便箋ではない。銀河の星くずを練り込んだような、重みのある不思議な紙。そこに綴られていたのは、まだ少年の面影を残していた頃の航が、ある圧倒的な「確信」を持って記した予言、いや、遺言だった。
『僕は知っている。 僕がこの宇宙から消える瞬間、僕の隣には、僕のせいで全てを失った彼女がいることを。 僕の脳内に絶えず流れるこの「計算」は、呪いだ。 僕が世界を数式で理解しようとすればするほど、未来は残酷な一点へと収斂していく。 僕と彼女が出会えば、因果の歯車が狂い出す。彼女は僕を救いたいと願い、その代価として自分自身を切り刻み、銀河のインクに変えて自らを消滅させてしまうだろう。 もし、今この手紙を読んでいるのが「君」――紬なら、お願いだ。 今すぐにペンを置いて、ここから立ち去ってほしい。 僕が死の運命を受け入れることは、僕が僕の意志で導き出した最善の、そして唯一の「解」なんだ。 君が僕を救おうとすることは、僕が最も恐れていた「計算外」の悲劇……僕の愛が君を壊すという、最悪の証明なんだよ』
紙が、私の目から溢れた涙で濡れ、ロイヤルブルーに滲んだ。 航。あなたは、ずっと前から知っていたのね。 自分と私が出会えば、私を不幸にすると。私を殺してしまうと。 だから、あなたはあんなにも、私に踏み込ませないよう、数学という冷たい壁を築いて自分を隔離していたの? 私を「事故に遭わなかった未来」へ無理やり押し戻すために、自分一人が宇宙の塵になる計算を、あんなにも幼い頃から、たった一人で温めていたというの……?
「……ふざけないでよ、そんなの」
私は、喉を掻き切るような声で叫んだ。 痣が、まるで意志を持っているかのように激しく、灼熱の痛みを持って脈打つ。 彼の「計算」が、私を想うがゆえの究極の献身であったとしても、それが私に生きる理由を、体温を、愛を教えてくれた「彼という存在」をこの世から抹消するものなら、私はそんな救済、死んでも認めない。
少年だった航の、あまりにも純粋で、独りよがりで、悲しい「遺志」。 それは私を遠ざけ、自らの死を「完璧な正解」として完結させるための、呪いの予言だった。 けれど、航。 あなたが完璧だと信じたその予言の中で、唯一、計算できていなかったことがある。 それは、あなたが私を救うために自分を捨てたように、私もまた、あなたを救うためなら自分という存在が消えてなくなることなど、微塵も怖くないほどに――あなたを、理屈も数式も、己の命さえも投げ捨てて愛してしまったことだ。
私は、心臓を食い破ろうとする痣の痛みを気力で抑え込み、万年筆を抜き放った。 そして、航が遺した予言の紙そのものに、真っ向から因果を叩き壊すように文字を刻みつけた。
『遺』
それは、あなたが独りで遺そうとした「悲しい完結」を、私がすべて奪い取るという誓い。 それは、あなたが宇宙に遺した言葉の断片をすべて拾い集め、絶望の予言を、私たちが共に生きる「続き」の物語へと書き換えるための宣戦布告。
文字が刻まれた瞬間、海の底の図書館が、悲鳴を上げるように激しく揺れた。 周囲の本棚から、何万という人々の記憶の頁が剥がれ落ち、私の周囲で青い吹雪のように舞い上がる。航の予言の文字が、私の刻んだ『遺』という一文字に吸い込まれ、黄金の光となって爆ぜた。
「……紬さん。それは、死者への冒涜ですよ」
水底の影から、執行官でも局長でもない、この世のものならぬ冷気を纏った「局長」その人が現れた。彼の足元では、図書館の青い水が、一瞬で黒い氷へと凍りついていく。 「彼は、自ら消えることを望んだ。それが、彼という精緻な計算機が出した最善の、そして最も美しい答えだった。あなたは今、その神聖な数式を、感情という名の汚れたノイズで塗り潰したのです。その代償を、理解していますか?」
「ノイズで結構よ、局長。汚れていても、それが私の愛なんだから」 私は、皮膚が裂け、インクが滴り落ちる右腕を、高々と掲げた。 「彼が遺したものが『絶望の答え』なら、私はそれをインクにして、神様だって予想できなかった最高の『間違い』を書いてみせる。痣が私の心臓を潰し、私が私でなくなるその瞬間まで!」
局長は初めて、その冷徹な仮面の奥で、愉悦とも驚愕ともつかぬ、歪な笑みを浮かべた。 「……素晴らしい。数式を凌駕する、あなたの『執筆』。地獄の果てまで見せていただきましょう」
図書館の水が逆流し、銀河の渦へと私は再び飲み込まれていく。 手の中に残された航のスケッチブックだけが、私と彼の、消えない「遺産」として、凍えそうな私の魂を熱く焦がしていた。
(第12話へ続く)
【第11話 あとがき】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 航の原点である「海の底の図書館」を舞台に、彼が少年時代から抱えていた予言を暴き出しました。
それは、あまりにも孤独で完璧な自己犠牲の記録。文字『遺』は、航が遺した呪縛であると同時に、紬がそれを自らの意志で受け取り、未来へと繋ぐための「遺産」へと昇華させる重要な分岐点です。自らの不幸さえも「彼女を救うための伏線」として受け入れようとした少年の祈りに、今の紬はどう応えるのか。水底の静寂の中で、二人の運命は一つの真実へと収束していきます。
▼『銀河の郵便局』の深淵を聴く(物語を「完成」させるために) 単なるBGMではありません。これらは、紬が失った記憶の残響であり、航が数式に込めた祈りの結晶です。音楽という名のインクで綴られた、もう一つの物語を体験してください。
①『祝福の螺旋 ―Bleeding Blue―』 ――静寂なる水底に響く、予言が砕け散る音。 激しく重厚なシンフォニック・サウンドが、紬の絶望と決意を象徴します。歌詞に刻まれた「Bleeding Blue(滴る青い血)」は、文字を綴るたびに魂が削られていく痛みの記録。美しさと暴力性が同居するこの旋律を聴くとき、あなたは紬と共に、銀河郵便局の重き扉を押し開けることになるでしょう。
②『Stardust Ink ― 神様にも消せない宛先 ―』 ――この瞬間の推奨曲。幼き日の航が、涙を堪えて綴った筆跡の旋律。 疾走感溢れるリズムと,天を貫くような高潔なボーカルが、神(局長)の支配に抗う紬の「叛逆」を奏でます。宇宙の塵(Stardust)となって消えゆく記憶を、強引に言葉として定着させようとする切実な祈り。聴く者の胸を締め付けるサビの旋律は、時空を超えて航へと届く「光の道標」そのものです。
③『Inkwell of Galaxy -The Core Score-』 ――数式と感情が衝突し、宇宙の法則が歪む不協和音。 局長が刻む銀時計の秒針、そして航が遺した死の数式……。それらが噛み合う不穏な胎動を、電子音と重低音が完璧に描き出します。物語の裏側でうごめく「宇宙の真理」を覗き込むような、没入型のスコア。この音を聴くとき、あなたは銀河の「インク壺(Inkwell)」の中に沈み、物語の真実へと加速します。
④『銀河の郵便局 (GALAXY POST)』 ――全てを燃やし尽くした先、静寂の中に灯る「再会」の主題歌。 19の文字を綴り終え、自己を消滅させた紬が辿り着いた、最終回答。温かくもどこか儚いメロディは、記憶を失ってもなお消えない「魂の筆跡」を祝福します。物語のグランドフィナーレを飾るこの曲の最後の一音を聴き終えたとき、あなたの心には、一通の「宛先のない手紙」が静かに届いているはずです。
音楽と共に、物語の真の結末へ。
これらの楽曲は、物語を彩る装飾ではなく、紬と航が命を懸けて奏でた「叫び」そのものです。 テキストを読み、音楽を聴き、二つの感覚が交差したとき――『真・銀河の郵便局』は、あなたの心の中で本当の「完成」を迎えます。
【物語とシンクロする公式リンク】
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(※ここで全曲のフルバージョンを、物語の進行に合わせて聴くことができます)
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もし少しでも「託された真実の重みを受け止め、歩み続ける紬の姿」に心を寄せたいと感じていただけたら、【お気に入り登録】や【感想】、【ポイント投票】をいただけますと、彼女のペンを動かす大きな力になります。
【次回予告:第12話「航の計算、宇宙の論理」】
ついに明かされる、航が導き出した「救済」の全貌。 それは、紬という存在をこの世界に繋ぎ止めるために、自分という「項」を因果律から完全に抹消する、あまりにも残酷な計算式だった。
「僕が消えれば、君の事故は無かったことになる。これは、僕ができる最初で最後の、完璧な証明なんだ」
紬は、その非情な愛の論理に対し、自らの命をインクに変えて、ありえない「誤答」を突きつける。
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