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5話 トラウマ
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オークはひざをつき、ゆっくりと前に倒れた。
両腕のだっきゅうの激痛で気を失ったのである。
アヤメはポーズをといて数歩歩き、オークの出てきた船室のドアを開けてみた。
「あっ階段だ。ヨシロウこっちこっちー。降りてみようよ」
「うん!」
赤い腹かけをした黒い子熊が直ぐに走りよった。
階段は暗く、所々にしょく台のろうそくの灯があるだけ。
相当大きな船なのか、階段は意外に長く続いた。
アヤメは鼻歌で軽やかにかけ降りて行く。
「何か冒険だねー!ヨシロウ早く早く!」
「うん」
長い階段のゴールは、縦三メートル、横二メートルほどの大きな樫(かし)の木の扉だった。
アヤメは青銅のドアノブを回してみた。
鍵がかかっている。
「うーん困ったなぁ。多分さっきのお兄さん達のどっちかが鍵を持ってるんだろうけど、また上まで戻るのめんどうだしなー」
白い人差し指を口にあて悩む和風美少女。
ヨシロウと目が合った。
「そうだ!ヨシロウお願い!道具がないから開けられないの!
ヨシロウパンチ、やって?」
子熊は小さな足で立って腰に手をやり 「えー?お腹減るからやだよー」
「えー?イヤなのー?でもでもさっきのお兄さん達がここから出て来たってことは、ここに食べ物あるかも知れないよ?」
「あぁそっかー!じゃあボク、ヨシロウパンチやってみるよー」
月の輪熊の子供は樫のドアに左手をついた。
そして小さな右の手を弓を引くように構え、ピンクの肉球を見せ
「ヨシロウパンチ!」
ポン!
アヤメは眉をハの字にして
「ヨシロウ……ダメだよーそれ全然ヨシロウパンチじゃないじゃん!」
「やっぱりダメ?」
「ちゃんとやって下さい」
その時、ドアの向こうから声がした。
「何か声がする!女の人の声だ!
オークじゃない!」
「誰かが助けに来てくれたんだ!!」
「ママー!」
どう聞いてもどれも幼い子供の声だった。
アヤメがドアに近づき
「ねぇねぇこの船で何してるのー?」
ドアの向こうから
「ボクたちオークにさらわれたんだー」
アヤメは細い腰に手をやり
「おーくって何?」
幼い子達の声はいっせいに
「豚みたいな怪物!」
アヤメはハッとして
「ヨシロウ!怪物ってさっきのお兄さん達の事かな?
じゃあ、あれマスクじゃなくって本物の豚の顔だったのかな?」
「うん、ボクはそー思ってたけど」
ドアの向こうから
「助けに来てくれたの?」
「うん、助けてあげるよー!だから開けてくれない?」
「ダメなんだよ!オークが鍵をかけていったんだー!こっちからじゃあ開けられないんだ!」
「そっかー。分かったー!今から開けるからすごーく離れててー!これ壊しちゃうからねー!」
ドアの向こうからどよめきが聞こえ、気配が離れて行くのが分かった。
アヤメは子熊を見下ろして
「じゃ、子供がいっぱいいるなら食べ物もきっとあるよね?
コレ、ヨシロウパンチだね?」
「えー?豚の人の所に取りに行こうよー」
「久しぶりに見たいなーヨシロウパンチ。子供達も絶対ヨシロウのことカッコいいーって言うよ!」
「そっかー。エヘヘじゃあやってみるかー」
アヤメはほほえみ、しゃがむとヨシロウの背中でゴソゴソ。
赤い腹かけがとられた。
裸のヨシロウが立ち上がるとアヤメは階段を数歩登る。
ゴキゴキ!メキメキ!!モリモリモリモリ!!
なんとヨシロウの小さな体が、黒い毛の生えた風船のようにふくらみ、みるみる大きくなった。
「おりゃー!!」
ゴンッ!
「あ痛っ!」
ついに月の輪熊は三メートル以上ある天井に頭をぶつけた。
痛がる声は子熊のヨシロウのものだったが、姿は大きな熊だった。
アヤメは階段から拍手でむかえた
「うわー、やっぱり可愛くないなー!」
月の輪熊はどんなに成長してもこんなに大きくない。
黒い熊の化け物は、かぎ爪の熊の手を振りかぶり
「ヨシロウパンチ!!」
バギャンッ!!
激しい破壊音。
樫の扉は粉砕された。
中にいた子供達が悲鳴を上げる。
なにしろ、助けてもらえると安心したところへ、巨大な黒い獣がなだれこんで来たのだ。
船底に監禁されていた5、6歳ほどの10人いた子供達全員が気絶した。
アヤメはヨシロウに続いて中に入り、ビヨーンと伸びる腹かけを巨大な月の輪熊の首に巻く。
すると今度はさっきとは反対に、熊の化け物はみるみるしぼみ、元の子熊のヨシロウに戻った。
アヤメはコテンと尻をつくヨシロウの小さな頭をなでて
「やっぱりヨシロウパンチスゴいなー!
ヒーローの登場シーンはやっぱりインパクトがあった方がいいよね?」
ヨシロウは白目を向いて横たわる子供達を眺めて
「インパクトありすぎだったみたいだねー。ボク、ちょっと傷付くなー」
子供たちの心の傷の方が大きかった。
両腕のだっきゅうの激痛で気を失ったのである。
アヤメはポーズをといて数歩歩き、オークの出てきた船室のドアを開けてみた。
「あっ階段だ。ヨシロウこっちこっちー。降りてみようよ」
「うん!」
赤い腹かけをした黒い子熊が直ぐに走りよった。
階段は暗く、所々にしょく台のろうそくの灯があるだけ。
相当大きな船なのか、階段は意外に長く続いた。
アヤメは鼻歌で軽やかにかけ降りて行く。
「何か冒険だねー!ヨシロウ早く早く!」
「うん」
長い階段のゴールは、縦三メートル、横二メートルほどの大きな樫(かし)の木の扉だった。
アヤメは青銅のドアノブを回してみた。
鍵がかかっている。
「うーん困ったなぁ。多分さっきのお兄さん達のどっちかが鍵を持ってるんだろうけど、また上まで戻るのめんどうだしなー」
白い人差し指を口にあて悩む和風美少女。
ヨシロウと目が合った。
「そうだ!ヨシロウお願い!道具がないから開けられないの!
ヨシロウパンチ、やって?」
子熊は小さな足で立って腰に手をやり 「えー?お腹減るからやだよー」
「えー?イヤなのー?でもでもさっきのお兄さん達がここから出て来たってことは、ここに食べ物あるかも知れないよ?」
「あぁそっかー!じゃあボク、ヨシロウパンチやってみるよー」
月の輪熊の子供は樫のドアに左手をついた。
そして小さな右の手を弓を引くように構え、ピンクの肉球を見せ
「ヨシロウパンチ!」
ポン!
アヤメは眉をハの字にして
「ヨシロウ……ダメだよーそれ全然ヨシロウパンチじゃないじゃん!」
「やっぱりダメ?」
「ちゃんとやって下さい」
その時、ドアの向こうから声がした。
「何か声がする!女の人の声だ!
オークじゃない!」
「誰かが助けに来てくれたんだ!!」
「ママー!」
どう聞いてもどれも幼い子供の声だった。
アヤメがドアに近づき
「ねぇねぇこの船で何してるのー?」
ドアの向こうから
「ボクたちオークにさらわれたんだー」
アヤメは細い腰に手をやり
「おーくって何?」
幼い子達の声はいっせいに
「豚みたいな怪物!」
アヤメはハッとして
「ヨシロウ!怪物ってさっきのお兄さん達の事かな?
じゃあ、あれマスクじゃなくって本物の豚の顔だったのかな?」
「うん、ボクはそー思ってたけど」
ドアの向こうから
「助けに来てくれたの?」
「うん、助けてあげるよー!だから開けてくれない?」
「ダメなんだよ!オークが鍵をかけていったんだー!こっちからじゃあ開けられないんだ!」
「そっかー。分かったー!今から開けるからすごーく離れててー!これ壊しちゃうからねー!」
ドアの向こうからどよめきが聞こえ、気配が離れて行くのが分かった。
アヤメは子熊を見下ろして
「じゃ、子供がいっぱいいるなら食べ物もきっとあるよね?
コレ、ヨシロウパンチだね?」
「えー?豚の人の所に取りに行こうよー」
「久しぶりに見たいなーヨシロウパンチ。子供達も絶対ヨシロウのことカッコいいーって言うよ!」
「そっかー。エヘヘじゃあやってみるかー」
アヤメはほほえみ、しゃがむとヨシロウの背中でゴソゴソ。
赤い腹かけがとられた。
裸のヨシロウが立ち上がるとアヤメは階段を数歩登る。
ゴキゴキ!メキメキ!!モリモリモリモリ!!
なんとヨシロウの小さな体が、黒い毛の生えた風船のようにふくらみ、みるみる大きくなった。
「おりゃー!!」
ゴンッ!
「あ痛っ!」
ついに月の輪熊は三メートル以上ある天井に頭をぶつけた。
痛がる声は子熊のヨシロウのものだったが、姿は大きな熊だった。
アヤメは階段から拍手でむかえた
「うわー、やっぱり可愛くないなー!」
月の輪熊はどんなに成長してもこんなに大きくない。
黒い熊の化け物は、かぎ爪の熊の手を振りかぶり
「ヨシロウパンチ!!」
バギャンッ!!
激しい破壊音。
樫の扉は粉砕された。
中にいた子供達が悲鳴を上げる。
なにしろ、助けてもらえると安心したところへ、巨大な黒い獣がなだれこんで来たのだ。
船底に監禁されていた5、6歳ほどの10人いた子供達全員が気絶した。
アヤメはヨシロウに続いて中に入り、ビヨーンと伸びる腹かけを巨大な月の輪熊の首に巻く。
すると今度はさっきとは反対に、熊の化け物はみるみるしぼみ、元の子熊のヨシロウに戻った。
アヤメはコテンと尻をつくヨシロウの小さな頭をなでて
「やっぱりヨシロウパンチスゴいなー!
ヒーローの登場シーンはやっぱりインパクトがあった方がいいよね?」
ヨシロウは白目を向いて横たわる子供達を眺めて
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子供たちの心の傷の方が大きかった。
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