dreadnought/ドレッドノート 神と悪魔の手

有角 弾正

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第三話 デンジャラスデリンジャー 1/4

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 俺はキッチンにダッシュした。

 「コラ!ムラマサー!!お前これどーすんだよ!俺の家財の中では一番高級なんだぞこれ!

 あーあ!コレ酒冷やせなくなったらどーすんだよ!!なに考えてんだよ、お前ぇーー!」


 俺は冷蔵庫に穿たれた弾痕に呆然とした。

 女物のパンツを被ったムラマサは、ガンスモークを吹きながら
「新しいの、買えよ。」

 
 こいつーー!!

 やっぱりコイツら部屋に入れるんじゃなかったぁー!!

 今更ながらに俺は猛烈に後悔したが、後に立つのが後悔だ。



       ー少し前ー


 ビリヤード玉大の氷が床を転がり、タバコにぶつかり、ジュッ!と音を立て、その火を消した。


 ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイーーー!


 スンゴイ見てるー!


 虎南「おい、ムラマサ……。今から少し、変なこと言うぞ。

 良いな?落ち着いて聞いてくれ。

 今、あの氷の玉が、河村の左手のひらから出たように、俺には見えたんだが……お前も、そう見たか?」
ピッチリした黒い長袖の、ビルダーみたいなのが、俺を真正面から凝視しながら言った。


 隣の銀髪の美男子は目を細め、同じく俺をじっと見ている。

「んー……そうだな。

 でも、どー考えても、俺の知ってるこいつは、手品なんか出来るほど器用じゃない……。

 今日のコイツ、何か変だ。」


 ムラマサがティッシュ箱を手に取る。

 俺が、あっ!と言う間もなくだった。

 当然、鮮やかな緑の両生類がうずくまっている。

 
 虎南「うん?カエル、の箸置きか。」
腕組みで少し身を乗り出す。

 ムラマサ「いや、箸置きはトクントクン脈動したりはしねー。
虎南、こいつはな、青蛙っていうんだ。

 普通、冬の今頃、大学生のアパートに住んでる生き物じゃねー。」


    あぁー!ヤバイーーーー!



 「虎南、空けろ。」
ムラマサの目が据わっている。

 隣の筋肉オバケは黙ってうなずき、一度だけ俺の顔をうかがい、容赦なくスポーツバッグを開く。


 あぁ、終わった。
はい、出ましたお金の山。


 二人の瞳孔が開いていく。

 ムラマサは、新しいタバコを出して火を着け、一服すると。

       カキンッ!

 と、ライターの蓋を閉じた。

 俺はその音に、ビクッと首をすぼめた。

 
 「フム。河村君、さぁ君のターンですよー。説明を始めて下さい。」
唇を横に寄せ、誰も居ない方向に紫煙を吐いた。


 くっそー!こうなりゃ、もう逃げられねえ!


 「分かった!分かったよ!あらいざらい話してやる!
ただし、条件がある!

 1つ、今から話す事は絶対に人に話すな。
 2つ、話の最後まで嘘だろ?って言うな。
 3つ、お前、病院行けって言うな!
どうだ!守れるか?」
俺は一気に捲し立て、三本指を立てた。


 ムラマサは細い片眉を上げ。
「まっ、そちらさんの品、次第だな。
今の俺達を納得させるに足るか、だ。」

 隣の岩もうなずいた。

 クッソ!

 俺は早朝の謎の外国人との遭遇から、この二人が来るまでを、身ぶり手振りで全て話してやった。


 「以上だ。プレゼンを終る。」
冷めきったコーヒーをあおった。

 あれだな、コーヒーってのは、喉が乾いた時に飲むもんじゃねーな。


 虎南「フム。どーだ?ムラマサ。
確かに奇妙な話ではあるが、物語に妙な整合性はある、と思うが。」


 当ったり前だ!
全部ホントなんだからな!


 ムラマサは膝の上に頬杖をついたまま
「あぁ。こいつには強盗をする度胸も、ペットショップでカエルを買って、机に置いとく洒落ッ気も、あんなデカイ氷を掌から出すほどの器用さも無え。
おまけに一人の彼女も居ねぇ。」
言い捨て、最後に笑った。


 「うるせー!彼女は関係ねーだろ!!彼女はよー!!」
俺は激昂し、ムラマサを指差した。

 「それより絶!対!に誰にも話すなよ?!
大変なことになるからな?!」
能力の他言は俺の命に関わる、しっかりと念を入れておく。


 虎南が雄牛のような身体を揺すり、笑った。

 ムラマサも吹き出す。
「言わねーよ!つか第一誰が信じるよ?こんなやっすいSFみたいな話!
まっ、お前のプレゼンテーションはギリ合格だな。
敢闘賞、みたいな感じか?

 あとはあれだ、プレイの方だな。
ここで俺達の前でやってもらおうじゃねーか。
そのゴッドハンドプレーをよ!」
痩せた左手を俺に向け、ヒラヒラとかざす。


 ま、そうくるよな。


 「良いだろう!じゃあ、もう一回氷を……。」
左の袖から手首を前に伸ばす。


 「待て。」
ムラマサが止めた。
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