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第四話 昇格 4/4

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 先ずだなー。この部屋、エアコンかかっているから、冬とはいえ、かなり温かい。
なのにこのカエル、最初に見たときから動いてない。

 確かに腹は脈打ち、粘膜まばたきも時々してる……だが、うずくまったまんまだ。」

 
 確かに。慌ててバタバタと金をバッグにしまっていたときも、逃げも跳びもしなかったな。


 ムラマサは、ひょいと青蛙をつまむと俺の目の前、水が入ったグラスに落とした。

 ポチャン!

 「おい!何すんだよ?!汚ぇだろ?!」


 アラっ?カエルはひっくり返ったまま、丸まった姿勢で沈んでゆく。

 足掻きも泳ぎもしないぞ?


 ムラマサ「思った通りだ。多分、このカエルは精巧に出来たフィギュアだ。

 んー……。ゴッドの方は本物のゴッド(神)ほどじゃねぇみてーだな。

 つまりはその左手、命は産み出せねぇっつー訳だ。」


 隣の岩もうなずく。


 なるほど、な。


 ムラマサ「で、次だが。時空を越えられるかだ。」


 「は?!時空?!」
マンガみたいなワードに、つい声が出た。


 ムラマサ「そうだ。俺のスマホはユニバースの4Sという機種だったんだ。

 ま、誰かサンに、キレイサッパリ消滅させられちまったがな。」
華奢な肩をすくめた。


 すまんー、わざとじゃないんだぁー。


 「ま、それはいい。で、お前に出して貰いたいのはユニバース5Sだ。

 当然、まだ4が出てから日が浅いから、デザインも開発もされてはいないだろう。

 が、人気の機種だ、必ず5Sは出る!」
細長い人指し指を立てた。


 虎南「ウム、なるほど。それが出せれば、時間を超えて物を出せる事になるな。

 ムゥ!興味深い!未来人の未知の発明品から恐竜の有精卵まで自在、か……。

 だが、5Sは当然まだ発表されていないから、肝心のビジュアルがない。

 河村が頭に思い描けんな…。」


 はぁ、なるほど。
そりゃ、そーいうのが出来ればスゴいけど、流石に、未だこの世にない、スマホの新機種など想像もできん。
無理だな。

 俺の顔色を見たムラマサ
「まぁ、その辺も含めての検証だ。

 もしこいつが出来りゃあ、マンガなら、現時点で絵はおろか、作者の頭に構想すらない最新刊のその更に先、未来刊が読めるぜ?
音楽だってゲームソフトだって同じだ!

 どうだ?ヤル気出たろ?」
少年のような、キラキラした目で俺を見る。


 俺は頭を掻き掻き
「んー、分かった。

 掌より少しくらいなら、大きくても出せるみたいだ。やってみる。」
この野郎、人をその気にさせやがる……。


 俺は未知なるユニバース5Sを、俺なりに思い描きながら、左拳を握り、待った。


 結果は……左掌は、何も掴まなかった。
つまり成果なし。失敗だ。

 少しガッカリした。


 ムラマサ「出ない、か。どうやら、時空を越えられるわけではねーみてーだなー。

 うん、いいんだ河村、大事なのはまだ先だ!

 次はー。あぁ河村、メモ用紙みたいなの、あるか?」


 ムラマサは俺が渡した紙に、彼女が出来ないよー、と泣いている、見るからに情けない男のイラストを書いた。


 「ちょっ!誰だよその絵!?」
俺は食って掛かった。


 ムラマサは涼しい顔で
「ま、誰でも良いじゃねーか。そこはあんまり重要じゃねー。

 この落書きは、今、俺が書いた。
手書きで、たった今、な?

 つまり、この落書きは世界に一枚だけだ。」
そう言って、そのメモ用紙をクシャクシャと丸めた。


 「じゃ、お前にはこれを出してもらう。」
丸めた不愉快な落書きの紙玉を振り振り、俺に近付ける。


 「あぁ?それに一体なんの意味があるんだ?
そんなの出るに決まってるじゃねーか!」
訳もわからず、思わず聞いた。


 虎南が白い歯を見せた。


 ムラマサ「スゲー意味がある。ま、やってみな。」

 俺から丸まった紙を遠ざけ、テーブルに置いた。

 
 俺は釈然とせず、小首を傾げながらも、左手の力を使う。


 結果は……同じ物が出た。

 紙の玉を広げると、不愉快な絵とセリフが書いてある。
全く同じ物である。

 つまり、世界に一枚が二枚になった。


 ムラマサは満足そうに何度もうなずき
「OKOK!ふむ、喜べ。これでお前は窃盗犯じゃなくなった。

 あのな?この実験で分かったのは、お前のその左手は、どこからか品物を取り寄せたり、ワープ(転移)させたりしている訳じゃないってこった。

 あの金もそうだ。あれは断じて誰かの財布や銀行から奪ったモノじゃねぇんだ!

 間違いなく、お前がその手で造ったんだ!

 ハイきた!おめでとう河村!
お前は窃盗犯から偽札、偽貨幣偽造犯に昇格だ!」

 パチパチと、間抜けな拍手が俺に贈られた。


 虎南も倣う。


 くっ!確かに。って!余計やべーじゃねーか!
要らんことを証明するな!!


 虎南「ウム。重犯罪者の友人か、これは不味いな。ウム、不味い。」

 取って付けたような苦い顔で、感じ入ったように雄牛のような太い首を横に振る。


 うるせー!お前でも、こんな力が手に入ったら、そーいうのちょっとやっちゃうだろ?
いや、やっちゃうって!絶対!


 ムラマサ「じゃ、次だ。もし、これから俺が言うのが出来ると、お前は再びゴッドに昇格だ!」


 「はっ?!命を産み出せねーから、ゴッド以下みたいなこと言ったじゃねーか?

 一体どーいう事だよそれ。」


 ムラマサは、俺をなだめるように手を上げ
「まぁ、聞け。最後に俺様が確かめたいのはだな……。」




     俺はゴッドになった。
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