dreadnought/ドレッドノート 神と悪魔の手

有角 弾正

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最終話 dreadnought/ドレッドノート 4/4

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 その時、馴染みのある、どぎつい香りがした!

 この部屋が、エレベーターから直ぐだからだ!


 確かに、き、来やがった!!

 奴だ!!


 部下の二人達が怪訝な顔で、鼻で息を吸う。

 直後。

 「グガッ!!!」
いきなりショートボブが鼻血を噴いた!


 「ど、どうし、たはぁっ!!あぐはぁっ?!!」
スキンヘッドも、盛大に鼻血を噴く!


 二人の部下達は痙攣し、膝から崩れ、床に両手をつき、将軍を見上げた。


 「うっ、あ、」スキンヘッドが最期にうめき、二人はうつ伏せに倒れた。


 将軍「おい?!どうした?なんだ?うっ!グガッ!!!な、何だこの香りは?!!」
慌てて鼻を押さえた。


 ここで、インターホンが鳴る。


 ムラマサが笑う
「ヌハハハハ!どうだ参ったか?これが地球産の最凶生物兵器だぜ!」


 将軍「な、何という臭いだ!!き、き、貴様らはなぜ、立っていられる?」
脂汗の必死な形相で聞いた。


 ムラマサ「俺達は少しづつ、このバイオハザードに慣らしてきているからな!

 言っておくが、夏場はこんなもんじゃないぜ?ヌハハハハ!」

 玄関を開けた。


 そこには、黒い三つ編みの小柄なメガネ美人が、白のダウンジャケットを着て立っていた。

 色白で瞳が大きく、ほんの少しだけタレ目の25歳、俺達三人のバイト先の雇われ女店長、その名も腋テロ長(ワキガテロリズム店長)

 腕元 薫(かいなもと かおる)である。


 薫「もー!何で君達出勤して来ないのよー!
今お店大変だよー!
河村君は、いきなり辞める、とか言うしー!コラーぷんぷん!」
ハスキーな声でまくしたて、小さな頬を膨らませる。

 台詞だけ見るとアレだが、実際の本人は、俺より四つも年上だが、めちゃくちゃに可愛い。

 ただし!
このゴリゴリと脳髄を焼く、速効性の両腋のバイオハザードがなければ、だ!


 しかも、本人は重度のチクノウらしく、自分の猛毒に、全く気付いていない。


 神は彼女に最凶の矛、最強の盾という二物を与え、天然の殺戮兵器を造りたもうたのだった。


 将軍は、ふらつきながら部屋の奥へ逃げる。


 ムラマサ「おー、腋ハザード!遅かったな。
ま、上がったら?」


 薫「えー。村田くん、また変な名前で呼ぶー。
それー、ゲームかなんかの名前でしょー?

 それって、あたしに似たキャラクターか何か出てくるのー?

 あっ!虎南君も寝てるー!
あれーっ?お酒飲んでるー?
酷いぞー!お店休んで盛り上がってたな~!ぷんぷん!」

 部屋に入ってくる。


 「あー!外国人さんだー!寝てるー?何でー?

 あっ!奥の人カッコいいー!」
将軍が鼻を押さえたまま、奥の壁に背中をぶつけた。


 ムラマサ「んー。まぁ、ホームステイみてーなもんかな?

 ホラ、腋ハザード。挨拶挨拶!

 外国人だから握手、いや待てよ、そーだ!ハグだハグ!

 早く早く!日本人女が、常識ないと思われちゃうぜ?!」
最高にニヤニヤしながら、将軍を指差した。


 将軍の脚は毒が回ったか、痙攣している。

 黄金拳銃などは、とうに床に落とし、右手で鼻、左手で薫を遠ざけるように振っている。


 薫「あーそっかー!あたし1人のせいで、日本人のイメージが悪くなると良くないねー。

 じゃあ、ちょっと恥ずかしいけど、薫、頑張っちゃうぞ~!」
両手をガッツポーズのようにし、気合いを入れた。

 ウム、台詞だけ見るとかなりアレだが、ハッキリ言って可愛い!

 しかし(略)


 いつの間にか、虎南が腕を組み、ムラマサの後方に立っている。

 「店長、こんばんは。」

 後で聞いたが、虎南は暴力は嫌いらしく、寝転がって、どう対処すべきか考えていたらしい。


 ムラマサ「おースーパーヒーロー、大丈夫だったみてーだな。

 あ、腋ハザード!ちょい待て!

 お前ね、挨拶ハグしようってのにダウンジャケットはねーだろーよ?

 相手さんに失礼にあたるだろ?
ホレ、脱いで脱いで!」

 痩せた手で手招きする。


 薫「えー!村田君達が居なかったから、仕込みとか大変で、汗ベタベタだよー?」

 ダウンジャケットの前を庇うように握り、
赤くなる。


 将軍はいよいよ朦朧とし、虚ろな目で天を仰いでいる。

 ハハハ、今頃、息を止めたところで、無駄なんだよな、コレ。

 初弾で脚に来たら終わりだぜ!


 ムラマサ「バカ、挨拶だろ?挨拶!
大体、外国人は少々汗臭い方が好きだからな、心配すんなって。

 つか、むしろ、その程度は御褒美っつーやつだよ!!

 さっ!大和撫子代表!行け!地球の恐ろしさを教えてやれ!!」

 ダウンジャケットを脱がせ、小さな肩を叩く。


 薫は、両腋が茶に変色した白いシャツ姿で、
もじもじしながら将軍ににじりよる。


 うえっ!今日は忙しかったせいか、茶染みが、溶けたキャラメルかハチミツみたいにヌラヌラと光ってやがる!!

 見る分には、非常に愛らしい最臭兵器は、
コクン、と小さくうなずき、意を決したようだ。


 「よーし!薫、行っきまーす!
hello!Nice to meet you!!
マイネームイズ ka o ru!!」


 悪魔は、エイリアンに万歳で体当たりした。


 将軍の絶叫!



 全宇宙は救われたのだった。
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