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4.中学校時代
1.今日から中学生
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小学校が学生時代の中で最も長いはずなのに、こんなにもあっさりと終わったのは、私がすべてにおいて勉強しかやってこなかったからだ。
すべては進学校進学のためであった。
賢太くんと百合子ちゃんと仲良くする以外に勉強に全振りしてしまったからだろう。
そのせいで友達は出来ないし、子供らしい過ごし方をしてこなかった。
だって心は四十だから。
さほど気にならない。
前の人生ではそれなりに楽しんだので、もういい。
幸いにもイジメもなかったし。
――今回の人生でイジメがなかったのは、私が不細工な格好をしていたおかげ。
前の人生では早くから美容に気を遣い、美しさに磨きをかけていた。
だが今回はなりふり構っていられない。
ひたすら勉強漬けだ。
おかげで東大一直線の中高生活を手に入れることが出来た。
少しここで学生らしい楽しみ方を寄り道してみようか、と考え始めた。
中学生になったのだから自分で管理しなさい、とお年玉やお小遣いを貯めた銀行通帳を渡された。
春休みにやったことは、美容院に行くことだった。
母に言われるままにカットしてきたダサいヘアスタイルをやめ、行きつけの美容院ではなく、別の美容院に入って自分の似合うヘアスタイルをオーダーする。
学割で結構安くしてもらえたのでラッキーだった。
そしてドラッグストアに入り、アイブローペンシルとカミソリ、そして薬用リップを買った。
ぼさぼさの眉を整えるだけでもかなり印象が変わる。
薬用リップを侮るな。
かさかさの唇より、プルプルの唇の方がいいに決まっている。
これで一足先に垢抜ける。
制服はブレザーなので、マシだ。
セーラー服はこの時代では憧れの象徴だったが、体温の調節がしにくい仕様のものだったので、後悔した。
それならブレザーの方が良かった、と毎日嘆いたものだった。
「さて、明日から中学生か!」
心が躍る。
やっと自由が少し手に入ったような感覚だった。
真の自由を得られるまであともうちょっと。
-----------------
入学式に、母は仕事だから来られなかった。
別に来て貰わなくても良かったので、都合が良かった。
結局前の人生と同じように、父と母は離婚した。そして母は生活費のために働きに出るようになった。
仕送りだけで十分に生活出来たが、家にずっと一人でいたら気が狂いそうだ、と言っていた。
そして、父は早々と再婚したであろう。前の人生と同じように。
祖母が息子である父を大変可愛がり、可哀想だと思ったのか、他の信用出来る女をあてがったというわけ。
身の回りのお世話……ね。
私が父の再婚を知ったのは再婚してから8年後の事だった。
祖母はしれっと「あなたのお父さんが独りぼっちで可哀想だったからよ」とほざいた。
私の気持ちなど、完全無視である。
ピカピカの制服を着て、電車に揺られる。
――新しい世界が開けるんだ……。
もう私は可哀想じゃない。
それを証明したかった。
桜の花びらが電車通過の時にふわっとそよぎ、花びらが舞っていく。
自由な世界を少しだけ垣間見られた気がした。
すべては進学校進学のためであった。
賢太くんと百合子ちゃんと仲良くする以外に勉強に全振りしてしまったからだろう。
そのせいで友達は出来ないし、子供らしい過ごし方をしてこなかった。
だって心は四十だから。
さほど気にならない。
前の人生ではそれなりに楽しんだので、もういい。
幸いにもイジメもなかったし。
――今回の人生でイジメがなかったのは、私が不細工な格好をしていたおかげ。
前の人生では早くから美容に気を遣い、美しさに磨きをかけていた。
だが今回はなりふり構っていられない。
ひたすら勉強漬けだ。
おかげで東大一直線の中高生活を手に入れることが出来た。
少しここで学生らしい楽しみ方を寄り道してみようか、と考え始めた。
中学生になったのだから自分で管理しなさい、とお年玉やお小遣いを貯めた銀行通帳を渡された。
春休みにやったことは、美容院に行くことだった。
母に言われるままにカットしてきたダサいヘアスタイルをやめ、行きつけの美容院ではなく、別の美容院に入って自分の似合うヘアスタイルをオーダーする。
学割で結構安くしてもらえたのでラッキーだった。
そしてドラッグストアに入り、アイブローペンシルとカミソリ、そして薬用リップを買った。
ぼさぼさの眉を整えるだけでもかなり印象が変わる。
薬用リップを侮るな。
かさかさの唇より、プルプルの唇の方がいいに決まっている。
これで一足先に垢抜ける。
制服はブレザーなので、マシだ。
セーラー服はこの時代では憧れの象徴だったが、体温の調節がしにくい仕様のものだったので、後悔した。
それならブレザーの方が良かった、と毎日嘆いたものだった。
「さて、明日から中学生か!」
心が躍る。
やっと自由が少し手に入ったような感覚だった。
真の自由を得られるまであともうちょっと。
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入学式に、母は仕事だから来られなかった。
別に来て貰わなくても良かったので、都合が良かった。
結局前の人生と同じように、父と母は離婚した。そして母は生活費のために働きに出るようになった。
仕送りだけで十分に生活出来たが、家にずっと一人でいたら気が狂いそうだ、と言っていた。
そして、父は早々と再婚したであろう。前の人生と同じように。
祖母が息子である父を大変可愛がり、可哀想だと思ったのか、他の信用出来る女をあてがったというわけ。
身の回りのお世話……ね。
私が父の再婚を知ったのは再婚してから8年後の事だった。
祖母はしれっと「あなたのお父さんが独りぼっちで可哀想だったからよ」とほざいた。
私の気持ちなど、完全無視である。
ピカピカの制服を着て、電車に揺られる。
――新しい世界が開けるんだ……。
もう私は可哀想じゃない。
それを証明したかった。
桜の花びらが電車通過の時にふわっとそよぎ、花びらが舞っていく。
自由な世界を少しだけ垣間見られた気がした。
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