誰も助けてくれないのだから

めんだCoda

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第40話 100年の眠りへ(最終話)

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「シャーラン…目が覚めたの…?」

 マハラが、小声でシャーランに尋ねる。

「うん…記憶も戻ったよ…」

 アイスブルーの瞳はぼんやりと半分しか開いておらず、眠そうな気だるそうな顔をしているシャーラン。

 すると、タイキとリリーがサッと素早くシャーランの前に跪く。

「シャーラン様、お目覚めしたばかりで申し訳ありませんが、これから…」

「うん…行くんでしょ…学園の地下に…聞いてたよ……」

 シャーランは、ほんわかした声色で、ゆっくりと喋る。

 タイキとリリーは、頭を深々と下げる。

「みんな…行きましょう…」

 ぼんやりとした表情でゆっくりと歩き出すシャーランは、マハラ達、はたまたタイキやリリーを見るわけでもなく、宙をぼんやりと見つめたままで、地に足がつかない様子にみえた。

 そして、不思議なことにシャーランが歩くたびに揺れる髪の毛が、キラキラと細かい粒子でも纏っているかのように、光って見えた。

 マハラ達は慌ててシャーランの後を追うが、前と雰囲気が違うシャーランに、言いようのない落ち着かない気持ちも抱えていた。

 学園の門近くまで来た一行は、近くの木々の間に隠れ、様子を伺う。
 リリーの言った通り、学園の外にも王族関係者と思われる人物らが、ワラワラとおり、全員が何かしら激しく言い合っているようだった。

「リリー」

 タイキに名前を呼ばれると、リリーは無言で頷き、その場にあった木の枝を拾うと、自分の体に傷をつけ始めた。

「…お、おい、何をしてるんだよ、血が出てるよ、やめろよ」

 リリーの近くでしゃがんでいたケイシは、驚いてリリーを見上げ、手を止めようとする。

 しかし、リリーはそんな声も気にせず、無表情のまま自分を痛め続けると、最後に木の枝を折り自分の足元に落とし、靴でグリグリと地面にめり込むように踏み潰した。

 そして、木の枝が砂で見えなくなったのを確認したのち、ゆっくりとタイキに顔を向ける。

「1回しかこの手は効かない。失敗するな」

 そう言ったあと、マハラやジャン達に囲まれているシャーランの方を向くと、ゆっくりとそして深く頭を下げ、数秒の間動かなかった。

 そのあと顔を上げると、鋭い目を学園の方へ向け、勢いよく立ち上がり、学園の門をくぐったと同時に走り出した。

 すると、体中傷だらけで血だらけのリリーに、学園にいた人々は恐怖や驚きで慄き、中には叫び声も上がり、リリーはそんな群衆の真ん中に入ると、身振り手振りで何かを懸命に話し始めた。

 しばらくすると、人々は顔を見合って深刻な話をし、リリーに続いて学園内に入って行き、学園外には人気がなくなった。

「今だ、行くぞ」

 タイキの声をきっかけに、全員が一斉に走り出す。

 誰かに見られてはいけないと気持ちは焦り、はっはっ、と息が漏れ、緊張で足がもつれるが、皆必死に腕と足を動かす。

「こっちだ」

 学園入り口前に着くと、ジャンが入口手前の右にある階段を降りるよう、手振りを加えて囁き指示をする。

 以前と同様で、階段の先は薄暗く、先は全く見えず、今日に至ってはそれがより一層不気味に感じられた。

 階段を降りると、あいも変わらず暗いジメジメとした通路だったが、両壁には前回と同様ランプがついていて、ほんのり周囲を照らしていたのが救いだった。

「ここから先、どこへ行けばいいんだ!?」

 追手がこないか、背後を確認するスカイ。

 ルイは、不思議そうに通路の全体を見回す。

「ここに来たのは初めてだけれど、学園内にこんな場所があったのか…」

「前回ルイはここを通ったとき、まだ学園に戻ってきてなかったっすもんね」

 タクは上を見上げるルイを見たあと、通路に目を凝らす。

 すると、低いうめき声のような風の音が響く。

「これ、前もあったよな、隙間風みたいな、この音」

 ケイシが肩をすくませてそう言ったあと、通路を前に進んでいたタクとジャンが、急に足をピタッと止める。

「おい!なんだよ、急に止まるなよ」

 急に止まったので、思わずジャンの背中にぶつかったスカイが、痛そうに声をあげると、ジャンとタクが顔を見合わせ、同時に声を上げる。

「隙間風…!」

 2人は隙間風の音のする方へ、注意深く耳をそばだて、音のする方をはっきりと認識すると、音のする方へ続く通路に進む。マハラ、スカイ、ケイシ、ルイ、シャーラン、タイキもあとに続いた。

 進むうちに、やはり、通路は途中で左右に別れていたり、3方向に別れていたり、とまるで迷路のようだった。

 隙間風の音を頼りに進んでいくうちに、前方にうっすらと光りが差し込む通路を見つけた。

 薄暗い地下通路の中で、そこだけが異質な感じでキラキラと光っていた。
 しかし、その光の先には頑丈で分厚い鉄のようなものでできた扉があり、その扉は閉まっており先に進めなかった。

「行き止まりだ…でも、なぜだろう、ここにものすごく惹かれる…」

 幻想的にキラキラ光る場所と、現実的な鉄の扉のアンバランスさに、妙に心惹かれるマハラ。

 すると、シャーランが皆の前に進み出て鉄の扉の前に立つと、後ろを振り返り、話しかける。

「タイキ、その持っている剣を貸して」

 シャーランが手を伸ばすと、タイキは紐で自分の背中にくくりつけていたのをほどき、剣をシャーランに手渡す。

 受け取ったシャーランは、剣の切先を鉄の扉に向け一言呟いたあと、扉に向かって剣を振り下ろし、十字に切り付けた。

 剣が扉に触れた瞬間に火花がちり、十字につけられた深い跡からは、煙が立ち昇っていた。

 すると、鉄の扉がひとりでに、ゆっくりと横にスライドし、中が徐々に見えてきた。

 その中は狭い1部屋で、無数の石で作られていた。部屋には苔が所々生え、ジメジメとした薄暗い場所で、中央には木の長い箱が置かれていた。

 壁には、まるで鉄格子のような小さい窓が天井近くの上部分に取り付けられてはいたが、地下のため日の光は一本の細い筋程度しか入り込んでおらず、部屋の中は薄暗いままだった。

 シャーランは無言で中に入ると、皆がおそるおそるその後に続いた。

「なんだか…予想していたより、ずいぶんと管理がされていないな…」

 ルイが部屋中を見回したあと、タイキをチラッと見ると、タイキは小さく息を吐く。

「この上に学園が建てられてしまってから、ニーカ族は誰もここに近寄れなかった。言い訳はしなくないが、ここまで酷い状態になっているのは、予想していなかった…」

 タイキは、壁をそっと撫で、ついていた蜘蛛の巣を手で払う。

 シャーランは木の箱の前に行くと、手で優しく上の埃を払い、ほんの少し唇に笑みを浮かべた。

「懐かしいわ…」

 シャーランは、そっと木の箱に手を触れたあと、タイキを見つめる。

「私はここで眠ればいいのね」

「そうです」

「……そう…。定めと分かってはいても、人間として生きていた時間がある分、それをすんなりと…なかなか、受け入れられないわね…」

 シャーランはまた木の箱に視線を戻し、寂しそうな表情で微笑む。

 そんなシャーランの表情を見て、マハラは思わず口に出す。

「眠るっていっても、今すぐに寝る必要もないんじゃないか。伝記では7日間の後ってあったけど、既にその7日は過ぎているわけだし、そのタイミングがくれば眠りにつけばいいだけだし、無理して今寝ようとしなくても、だから…」

 マハラは、自分の言っていることは無駄だと分かってはいたが、まだここでも引き止めたい気持ちが勝って話し続けるも、最後まで話し合える前に、途中で口をギュッと結び、俯いてしまった。

 そんなマハラの気持ちを分かっているシャーランは、優しい瞳でマハラを見つめる。

「ごめんね」

 マハラはシャーランの声に顔をあげると、シャーランの表情は、悲しそうで、そして寂しそうだった。

「私ね、さっき記憶が戻ったときに、そのまま眠らなければいけなかったの。けれど、私達シュトム族をつくられた神様に記憶の中でお願いをして、今ほんの少しだけ時間をもらっているの。サービスタイムみたいな感じかな。だから、やること終えたらもう寝ないといけないの」

「やることって——?」

 マハラが聞くと、シャーランは首を傾げニコッと笑い、その後すぐに真剣な表情になり、剣を両手で持ち切先を下にして目の前に掲げる。

 すると、綺麗なアイスブルーの瞳が、徐々に白くなっていく。

「——我、シャーラン・シュトムより、全世界の人間に告ぐ——」

「な…なん…だ…!!?」

 シャーランが目の前で話している言葉が、全員の頭の中に、直接響く。それは、頭の中を知らない誰かに操作されているような感覚で、その場で皆が身動きが取れなくなり、頭を手で抱え膝をついた。

「——私は、今より再び100年の眠りにつく。しかし、皆に知らせておくことがある。私と接触した人間への殺生、処罰等を禁ずる。禁じたことを行った人間の血族は全員残らず、100年後、必ず私から報復を受けると、ここに宣言しておく——」

 マハラ達やタイキはシャーランの響いてくる声に悶えながらも、シャーランを見上げる。

 すると、シャーランの目は少しずつ元のアイスブルーの瞳に戻り、シャーランはゆっくりと剣を胸元から下ろした。

「シャーラン…今のは…」

 マハラがまだ痛む頭を片手で抑え、苦しそうな顔でよろよろと立ち上がると、シャーランは控えめな笑顔でニコッと笑い、マハラの方へと両手を伸ばす。

 マハラは、咄嗟にシャーランの手を取ろうと足を一歩前に出し、手を伸ばした。

 マハラの指先がシャーランの指先に触れた瞬間に、シャーランはそのまま前のめりに勢いよく倒れた。

「シャーラン!!!」

 マハラがシャーランを慌てて抱き止めるが、シャーランの瞳は閉じ、体はだらりと脱力していた。

 マハラは、シャーランの口元に耳を近付けるが、息をしているようにも感じなかった。

「タイキ!!これは、…どうなってるんだ!!?眠りについたのか?でも、呼吸していないぞ!?」

 マハラが目を見開き必死に尋ねると、タイキはマハラとシャーランに近付きゆっくりと跪き、深々と頭を下げる。

「お疲れさまでございました。ゆっくりとお休みください」

 タイキの言動を目にしたマハラは、これでもう一生動くシャーランに会えないことを理解した。

「シャーラン……!今までありがとう…」

 マハラはシャーランをギュッと力強く抱きしめて、涙を流す。

 タイキはマハラの様子を見つめていたが、そのあと後ろを振り返り、不安そうに成り行きを見守っているスカイ、ケイシ、ジャン、タク、ルイの顔を見つめ、ゆっくりと話し出す。

「シャーラン様は眠りについた。木の箱に寝かせるのを、手伝って欲しい」

 その言葉を聞き、全員がシャーランを抱えているマハラに近寄り、全員でシャーランの体に両手を添え、持ち上げる。

 そして、木の箱の中へゆっくりと寝かせると、タイキが蓋を持って、眠っているシャーランの上に被せる。

 蓋がゆっくりと音を立てて閉まっていき、安らかな表情のシャーランは、やがて見えなくなった。

 ◇◇◇◇

 ——2年後——

「おーい、マハラ!」

 マハラは呼ばれて振り返ると、手を挙げて近付いてきたのは、タイキだった。
 木々が鬱蒼と生い茂る森の中から、タイキは軽快に走って出てくると、芝生の上に座るマハラの所へ駆け寄って来た。

「待たせたよな、悪い」

「いいよ、別に。おかげで、オレも、自分で勉強する時間ができたし」

 そういって、マハラは開いていた本を閉じる。
 本の表紙には、第5外国語と記してあった。

「次の試験には合格したいよな。それじゃ、俺の家に移動して勉強するか!あ、そうだ、家はまた移動させたから、この前とは場所が違うんだけどさ」

「えぇ、またかよ~…今度は遠くないよな?」

 マハラは立ち上がろうとすると、タイキは笑いながら、手を差し伸べる。

「そういえば、友達は?今日は来ないって?」

「あぁ、あいつらは、いいってさ。学園内で待ってるって」

 シャーランの頭の中への語り掛けがあったあの日以降、王族はさっさと学園内から撤退し、学園内の役職からも人員換えがあり、殆どがいなくなった。
 理事長も然しかりだ。

 マハラはあれから猛勉強をし、今は第5外国語習得に日々励んでおり、時間をつくっては個人的にタイキに勉強に付き合ってもらっている。

 今日とその約束の日で、タイキの家に向かって並んで歩く2人だったが、タイキはマハラをチラッと見ると、躊躇ためらいがちに話しかける。

「…それで、本当になるのか…?決心は変わらないのか?いわゆる、その…」

「ニーカ族になることか?気持ちは変わらない」

 マハラの意志の強い目を見て、タイキはゆっくりと前を向く。

「ニーカ族は、血で決められた一族だ。前も言ったが、一族になるのなら、まずはニーカ族の女性と結婚して、それから——」

「分かってるって。…シャーランが次目覚めたときには、たぶんオレはもうこの世にいない。だから、オレは無理でも、オレの子孫にシャーランのことを託したいんだ。そのために、ニーカ族になって墓守り人として強制的にシャーランの側から離れられないようにする。そして、次こそは、シャーランが不遇な目に合わないように助ける。そのために、オレは今やるべきことをやるんだ」

 マハラはそう話し終えると、空を見上げる。
 空は綺麗な澄んだ青色で、6匹の鳥たちが気持ちよさそうに飛び回っていた。

「君を1人にさせないよ」

 マハラは第5外国語の本を空に向かって真っ直ぐに掲げると、笑顔で空を見上げる。

「また会える日まで、シャーラン」



                 (完)
 最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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