誰も助けてくれないのだから

めんだCoda

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第1話 キャンパスに描くもの

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 マハラは日が落ち暗くなった美術室のドアを開ける。電気がついていない部屋の中、窓際に女性が立ち大きいキャンパスに筆で絵を描いている。窓からの月明かりに照らされて女性の姿がキラキラ光って見える。マハラは人を見て、美しい、と初めて思った。
 ボーっと女性を見つめているマハラ。
 女性はこちらに気づき声をかける。

「なにかご用事ですか?」

 声は柔らかくほどよく高く、聞いているとくすぐったい。

 マハラは高鳴る胸を抑えながら話す。

「先生からこっちにある教材を持ち帰るよう言われたので。お邪魔してすみませんがちょっと失礼します。」

 マハラは努めて冷静さを保ち、部屋の隅へ向かう。彼女のジッと見つめる視線を感じて、マハラは緊張で動きがカクカクしてしまう。

 マハラは必要なものを取ると、彼女に用が済んだことを伝え部屋を出ようと歩き出す。そのとき、足元にあったバケツにつまずきバケツを倒し中の絵の具を床にぶちまけ、バランスを崩したマハラは少しよろけて近くにあった石膏を倒す。石膏はドミノ倒しのように倒れていく。最後の石膏が倒れたところに絵の具のバケツがあり、それが倒れ彼女のキャンパスにバシャっとかかる。

 彼女はベチャッと絵の具がついたキャンパスを見て無言で立ち尽くす。
 マハラはやってしまったと顔が青ざめる。そこにマハラの友人のスカイとケイシが現れる。

「マハラーなにしてん・・」

 床に水たまりのように広がった絵の具と筆。石膏につかまっているマハラ。その向こうには無表情で立っている見たことのない女性。

「おま・・、え、何してんだよ。」

 スカイとケイシが部屋に入る。マハラは慌てて立ち上がりハッと女性を見る。

「ごめんなさい!!せっかく描いていたのに、絵が台無しになってしまいましたよね。本当にごめんなさい!!」

 マハラは必死に謝る。
 どう見てもキャンパスはもう元通りにはなりそうにない。

「あぁ・・別にいいですよ。気にしないでください。実はこの絵はなんか違うなって、だめだなって思いながら描き続けていたんで。これで踏ん切りがつきました。かえってこうなって良かったです。」

 彼女は優しく淡々と言う。
 でも・・と口ごもるマハラに彼女は提案する。

「気になるならこのお片付けを手伝っていただいていいですか?私1人じゃ時間かからそうなので。」

「は、はい!」

 マハラは床に散らばったものを慌てて集める。
 スカイとケイシはわけが分からないと思いながらも、一緒に片付け始める。

 部屋が元通りになったところで彼女はつけていたエプロンを取り、その長い髪の毛を軽くかきあげる。月明かりに見えるその様子はどこか神秘的でマハラ、スカイ、ケイシは視線をとられていた。

「ありがとうございました。もう帰りますので失礼します。」

 淡々と話し、彼女はスラリと伸びる白い腕で棚に置いてあるカバンを取り出しドアの方へ歩き出す。

 マハラは慌てて声をかける。

「あの、先ほどは本当にすみませんでした!オレ、マハラって言います。もし嫌じゃなければ今度なにかお手伝いしたいです。お名前教えてくれませんか・・?」

 彼女は少し驚いたようで目を見開いた。

「シャーランといいます。お気遣いありがとうございます。部屋の鍵はそこの棚上に置いてありますので施錠お願いしますね。では失礼します。」

 歩きながら軽く会釈し、シャーランは部屋を出て行った。
 少し微笑んだその顔を向けられたマハラは、シャーランから一挙一動即目が離せなかった。

 ボーッと突っ立って、シャーランが出て行った方を見つめているマハラに、スカイとケイシは後ろから腕をマハラの肩ににガッと絡める。

「なに、今の女の子、知り合い?!きれいじゃん~!」

 スカイはヤンチャな顔を覗かせながらニヤニヤマハラを見る。

「ね、綺麗な人だった。今までこの学園内で見たことなかったなぁ。」

 ケイシは優しく笑いながらマハラのわき腹辺りをこづく。

 マハラはスカイとケイシがからかってくるのを、はいはい、と笑いながら軽く流し部屋を出ようとドアの方に向かって歩く。
 ふと上の方を見るとドア上の小窓が空いている。

「あ、小窓空いてるわ。閉めなきゃ。」

 マハラがキョロキョロと脚立を探していると、

「あー、オレ閉めるよ。」

 スカイが小窓に向かってスタスタ歩き、少し背伸びし上に手を伸ばしてガラガラと閉める。

「ありがと~」

 マハラはお礼を言いながら2人を見る。
 スカイもケイシもモデルのように背が高い。ガタイがいいわけではないが細過ぎず、2人とも鍛えた上半身は引き締まっていて腕は太くないが筋肉がついているのが分かる。
 2人はこの学園内で女性から人気がありモテる。
 スカイは金髪のパーマ姿もあいまってか、やんちゃな王子、ケイシは少し長めの黒髪のせいか、王道の王子、ともてはやされている。

「マハラだって脚立一段・・んー二段??くらい登れば届くよ。」

 身長を気にしてると思ったのか、ケイシがマハラをまたからかう。ケイシは言葉のチョイスはちょっとアレだが根は優しい。からかわれてもマハラは嫌な気持ちになることはなかった。

 マハラも決して身長が低いわけではないが、スカイとケイシほど高くはなく、平均よりは高めで低いわけではないのに、スタイルのいい2人といると妙に自分が小さく感じる。
 もう少し背が高かったらなぁ~。と心の中で思いながらシャーランを思い出す。思い出すだけでまた胸が高鳴る。

 一目惚れというのはこういうことなんだろうか、とマハラは明日もどこかでシャーランと会えるかなと淡い期待をもちドアを閉める。
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