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3惑甘ネジ
接点④
しおりを挟む「ま、いいけど。そのキングってさ、あれっ名前なんだっけ? とにかく高身長でやたらと格好よくて、その仲間みたいな人たちもスタイリッシュっていうか」
「なんで、さっきから仲間? 友人とかではなくて」
「なんか、仲間って感じなんだよ。べったりしてないし、でも共通の感覚を持った集まりみたいで付かず離れずいる感じで。そんなところも格好いい集団だったよ。ちょっと憧れて見てた。その周囲にはいつも美女が取り巻いていたりして。出くわすと圧巻って感じ」
いろいろ思い出しているようだが、詳しくあれやこれや聞かされても、その人物自体知らないと想像もできないし、何も楽しくない。
うっすらとモヤがかかったような記憶しか浮かばず、千幸はこれだけ熱弁してもらって申し訳ない気持ちとともに眉を下げた。
「へええ。なんとなく思い出せはするけど。あれってそんな感じだったんだ」
平坦に感想を述べた千幸に、絵理奈がむすっと文句を垂れる。
「もうっ! あれだけ騒がれてたのに」
「ごめんって。その時、家の仕事も忙しかったから結構駆り出されて忙しかったし。大学の制度とか友達とか、あと彼氏もいたし。そっちのほうが充実してたからあんまり記憶にないみたい」
「ええぇ~。千幸らしいって言ったらしいけど。とにかく、その集団の中心にいたのがキング。さっきも言ったけど桁違いの格好よさでさ」
思い出してうっとりする絵理奈がキング推しだというのはわかった。
「はいはい。格好いいのはわかったからそれで?」
「もうっ! 絶対わかってないし。キングはモデル顔負けの美貌とスタイルで、女は取っ替え引っ替えしてるとかしてないとか。まあ、遊び人というよりは周囲の女性が熱を出してたって感じだったけど。女性を平然とはべらせ、つれなくてもモテたっていうか、なんか同性の中でもキングって崇める人がいたとかいないとか」
「いたとかいないとか?」
さっきから表現おかしいなと千幸が突っ込むと、絵理奈はそうなんだよとどこか誇らしげに頷いた。
「サークルの先輩の受け売りだから。やっぱり、三学年も離れてると接点を持つ機会なかったし。だから、いたとかいないとか」
「ふーん。で、そのキングがなんだって?」
「だから、夜の街で千幸が一緒にくっつきながら歩いてたって話。興奮しながら今日会うなら話聞いといてって電話してきた」
で、どうなのと瞳を爛々と輝かせる絵理奈に、千幸は最近の出来事を思い返すようにふっと皿へと視線を投じた。
「くっつきながら……」
言われた言葉を繰り返し、思考を辿る。
何度か会社で飲み会はあった。
その時に、たまたまのタイミングで男性と隣にいてピックアップされて誤解される可能性もなくはないが、くっついてとなるとあれしかない。
「それっていつ?」
「確か電話あったのはつい最近だからあの興奮具合は今週かも。なに、なに? 心当たりある?」
「今週ねぇ」
今週の話で、キングと呼ばれる人に心当たりはないが、長身でやたらと格好よく、女性を取っ替え引っ替えという用語が似合う相手は一人しかいない。
同じ大学だったんだ。だから、思い出してということなのだろうか。
いや、本当にわからない。記憶にない。
絶対、あれだけの美形と接触があったなら覚えているはずだし。
もしバーで出会う前から千幸のことを知っていたなら、同じ大学だと言ってくれたらすむ話だ。なら、なぜ黙っているのか。
そう思うと、友人がいう相手と小野寺は違う人物じゃないだろうか? なら、くっついてたっていうのは自分じゃない可能性も……。
真剣な面持ちで熱弁する友人に同じ熱量で返せず、千幸はぽつっと告げる。
「人違いじゃない?」
「ええー、そうかなぁ。キングは絶対だと思うし、千幸も見間違えるはずもないと思うし」
「キングは絶対なんだ」
たった一年大学が被っただけの関わりのなかった先輩を、路上で見かけて断言するほどの自信ってどこからくるのか。
これほどまでに熱く語られる人物がいるとはと、そっちの興味が湧いてくる。
「うん。あの容姿はほかにない。スタイルも抜群だから遠くからでもわかるし。立ち姿から、歩き方から違うんだよ。それに美耶が千幸を間違えるはずないと思うけど」
「やっぱり美耶ちゃんなんだ」
私を見たと言っているのは、大学の時に仲良くしていた一人だ。
仲は良いが絵理奈がいてという感じなので、今回のことも絵理奈に連絡したようだ。
「あっ、ばれちゃった」
目をぱちくりさせ誤魔化すように笑った絵理奈に、釣られて千幸も笑う。
「別に悪いことではないからいいんじゃない」
「ま、そうだよね。で、くっついていたっていう真相は?」
「だから、彼氏と別れたばかりでくっつくような仲の人はいないよ」
よくわからない人はいるが、今は話すべきではなくシラを切る。
本当に見間違いだった場合、話し損になるし。
というか、小野寺とその出会いをどう説明していいのかわからない。
言葉にすると絶対変な感じになる。
千幸さえわからない状況を、他人がわかるはずもない。
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