31 / 143
3惑甘ネジ
接点③
しおりを挟む「本当、すっきりしてそうだね。よかった。私は何もないなぁ。そもそも出会いがないよ。仕事しだしたら同じルーティンで、会社の男は所帯持ち、下手したら孫までいる人ばっかだし。若い男との出会いってどこ状態」
「合コンとかは?」
「ないこともないけど。でも、芋っぽいていうかパッとしないというか。紹介されても何か違うんだよね。学生じゃないのだから、がっつかれても引くし。かといって、今時の草食男子も物足りないし。こう、この人っていうのがなかなか」
ようは今の自分が惹かれる人との出会いがないと言いたいようだ。
「出会いねぇ」
「そう、出会い!」
年を重ねるごとに経験も積んできているから、見方も変わってきてしまう。前は良いと感じたものが響かなくなり、なかなかこの人だっていう出会いがないのだろう。
環境が変われば、価値観も知らず知らずに変わってくるのは仕方がないことだ。
学生の時は格好いいなとか、趣味が合うなとか、学生という社会的に重責がないなかで楽しむことは気が楽で、だからこそ純粋にいろんなことを楽しめたりもして。
その範囲の中で波長があったり惹かれたりして、付き合うことが多い。
もちろん苦しい恋愛もあるし、学生だからといって気楽というわけではない。
千幸も何でも自由にというわけにはいかなかったが、学生生活と恋愛を楽しんできた。あの日々はとても貴重でかけがえのないものだ。
比べたりするものでもないが、やはり社会人と学生とでは時間の使い方、動き方、お金の使い方などは確実に違う。
社会人になると、社会に出ている大人としての自覚を相手にも求めてしまう。
恋愛関係なく、仕事をスマートにこなす人は格好いいと感じる。
良いにこしたことはないが、顔の美醜や年齢はあまり関係ないように思う。
どちらかというと、性格、性質のほうが目につく。それに顔や経済力がプラスされると、騒がれるというかそんな感じだ。
楽しいだけでは駄目だし、相手がしていることを尊敬できるかというのも大事だったりする。年齢とともに増えた経験が積み重なり、見える範囲が増える。
そこにどう恋愛感情が絡むかということなのだろう。
「確かに、まだ一年しか経ってないけど学生の時と今の気持ちというか求めているものって変わってきているかもしれないね」
「そうなんだよねー。職種だけじゃなくて趣味でも譲れないものを持って取り組んでいるとか、続けているとかは素敵だよね。遊んでいてもいいけどチャラすぎるだけとかはちょっとなぁ。で、千幸って今彼氏は?」
「さっき別れたって言ったけど?」
「そうなんだけどさ、噂であのキングと夜デートしてたって聞いたから」
絵理奈はにやっと笑みを浮かべ、さあ、取り調べの時間だと、好奇心旺盛な視線を向けてくる。
ああ、これが話したくて今日はいきなり切り出してきたのかと苦笑しながら、そこまで興奮する話題でもないだろうと肩を竦める。
「噂って。仕事関係でたまたま男の人といるのを見たとかじゃないの? どうせそれはまた美耶ちゃんあたりからでしょ?」
「仕事の人じゃないって。キングだよ。キ・ン・グ」
「キング? って誰?」
直訳すると王様って。
そんな風に呼ばれている人周りにはいないし、聞いたこともない。
「キングってほら、大学の時に三つ上の先輩で有名だった人。キングとその仲間と取り巻きみたいな感じでうじゃっと華やかな集団あったでしょ?」
「んー、そういう華やかな集団があるのは聞いたことはあるけど、実際間近で見たことないしよく覚えてないなぁ」
そう告げると、絵理奈の目がこれでもかってほど驚愕に開かれた。
ぎらぎら、きらきらビームを発するかのごとく、力強い眼差しになる。
「本当? ちらっとも?」
ずずずっと前に寄ってきて、信じられないとばかりに千幸を見てくる。
「さすがに遠目では何度かあるよ。でも、たくさん人だかりがあって誰が誰とかまで気にして見たことないし」
「嘘だって。夏休み明けくらいだったかな? 千幸の近くにいるのを何回か見たことあったよ」
「そうなの? でも、記憶にないし。話したことのない人はあまり覚えてないから」
断言されても、記憶にないものはない。
そう告げると、何でよおっと大袈裟に溜め息をつかれる。
「記憶力いいくせに、関係ないと思ったらすっぱり記憶の外なのは相変わらずだよね」
絵理奈は呆れたようにくるくるとフォークを回しながら、取り分けたボンゴレパスタを口に運んだ。同じように千幸も口に入れる。
あさりのだし汁とスパイスの辛味が程よく口の中に広がり、少し辛味が最後に残ったので水を飲むと、会話を続ける。
「だって、容量は限られてるから覚えたいこと覚えてたらいいと思うし。実際、それで困ったことないからいいと思うけど」
キャパシティは人それぞれだ。その使い方は本人が決めてもいいと思っている。
必要か不必要。
キャパが狭いとは思わないが、広いほうでもないので、有効活用しようと思って何が悪いと居直る。
絵理奈は肩を竦めると、どうしてもこの話を先に進めたいと前のめりになって続ける。
48
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる