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コイカケその4
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「あ、そうね。では、そこのリーフレットを取って、広げて」
静流に言われ、寺角はリーフレットを取って、テーブル上に広げた。このクルーズ用に作られた、スケジュールなどを載せた小冊子だ。
「ありがと。これで見えなくなったわね。さあ、配って」
寺角は軽く4、5回、ヒンズーシャッフルで切ってから、上から順に相手、自分とカードを配った。
静流は左手でそれを取り、ゆっくりとした動作で彼女の額にくっつけるようにして掲げる。寺角もわずかに遅れて、同じようにカードを額に。
途端に、静流が表情をほころばせた。目元に笑みがにじみ出る。
「そう言えば、実際のチップを用意していなかったけれども、十枚程度ならおぼえていられるでしょうから、このままでいいわね」
「ええ、多分、大丈夫でしょう」
寺角は応じながら、内心では最前の静流の笑みについて検討を重ねていた。
(私の手札があまりに弱いので、お嬢様もつい表情に出た? しかしギャンブルにお強い方が、ああも簡単に表情に出すのだろうか。はったりかもしれない。だが、まだ初戦。ここは様子見でチップ一枚を犠牲におりるという選択も)
そのとき、正面からの光が少し増した。視線をやると、静流が身を若干屈め、考え込む様子を見せている。ボリュームのあるヘアスタイルと背筋を伸ばしていたのとでできていった障壁が取り払われた、そんな感じだ。
(……?)
次の瞬間、寺角は目を見張った。それと同時に、静流が「どうかしたの」と見つめてきたので、急いで目線を戻し、表情を作る。
「何でもございません。それでは私からベットしても?」
「どうぞ。私も一応、方針は決まった」
再び背筋を伸ばし、座り直す静流。
寺角は唾を飲んだ。実は先程、静流の方を見たときに、丸窓へ目が行った。
(もう見えなくなったが、確かにガラス窓に映っていた。私の手札は赤の絵札。ハートかダイヤか、キングかクイーンかジャックかまでは見えなかったが、なかなかいいカードだった。それに対してお嬢様は)
寺角は静流と目が合わないようにしつつ、彼女の額のカードを再確認した。
そこにあったのはハートの8。中くらいの強さと言える。
(勝った。やはりさっきの笑みは、お嬢様の駆け引き、ブラフなのだ。絵札が見えたので、とりあえず強がって、余裕があるように見せたに違いない)
ここで大きく勝っておきたい、できれば決着させたい寺角だったが、あまり欲をかいてもおりられる。三枚、いや、五枚はいけるか?
「私は五枚、賭けます」
はったりを仕掛けるつもりがあるくらいだから、多少は突っ張るのではないか。そう期待して五枚にした。
「あら。意外と多いわね。そんなに私の手札は弱いのかしら」
答える静流はちょっと上目遣いの仕種をした。無論、額のカードが見える訳がない。
「でも、私もこれで勝負に行かなかったら、おかしいと思われる。だから……十枚」
「は?」
思わず、身体が揺れる寺角。チップのつり上げはあるとしても、まさか十枚全部とは。
寺角は直に聞くことにした。一人で悶々と悩むよりも、相手の反応を見る方が早いこともある。
「おろそうとしていますね、お嬢様?」
「おりてもいいし、勝負してくれてもいい。できれば勝負がいいわね。二人ともオールインしたなら、これでもう終わりだもの」
「……分かりました。乗ります」
吟味した上での結論、と見えるように、ゆっくりと応じた寺角。その実、簡単に全額勝負に乗ったら、この不可抗力のいかさまに勘付かれるのではないかと恐れたのだ。
「それでは手札を見ましょう」
静流が言って、額のカードを胸元辺りに引き寄せる。「ハートの8か」と言った。そして続く言葉に寺角は耳を疑った。
「私の勝ちね」
静流に言われ、寺角はリーフレットを取って、テーブル上に広げた。このクルーズ用に作られた、スケジュールなどを載せた小冊子だ。
「ありがと。これで見えなくなったわね。さあ、配って」
寺角は軽く4、5回、ヒンズーシャッフルで切ってから、上から順に相手、自分とカードを配った。
静流は左手でそれを取り、ゆっくりとした動作で彼女の額にくっつけるようにして掲げる。寺角もわずかに遅れて、同じようにカードを額に。
途端に、静流が表情をほころばせた。目元に笑みがにじみ出る。
「そう言えば、実際のチップを用意していなかったけれども、十枚程度ならおぼえていられるでしょうから、このままでいいわね」
「ええ、多分、大丈夫でしょう」
寺角は応じながら、内心では最前の静流の笑みについて検討を重ねていた。
(私の手札があまりに弱いので、お嬢様もつい表情に出た? しかしギャンブルにお強い方が、ああも簡単に表情に出すのだろうか。はったりかもしれない。だが、まだ初戦。ここは様子見でチップ一枚を犠牲におりるという選択も)
そのとき、正面からの光が少し増した。視線をやると、静流が身を若干屈め、考え込む様子を見せている。ボリュームのあるヘアスタイルと背筋を伸ばしていたのとでできていった障壁が取り払われた、そんな感じだ。
(……?)
次の瞬間、寺角は目を見張った。それと同時に、静流が「どうかしたの」と見つめてきたので、急いで目線を戻し、表情を作る。
「何でもございません。それでは私からベットしても?」
「どうぞ。私も一応、方針は決まった」
再び背筋を伸ばし、座り直す静流。
寺角は唾を飲んだ。実は先程、静流の方を見たときに、丸窓へ目が行った。
(もう見えなくなったが、確かにガラス窓に映っていた。私の手札は赤の絵札。ハートかダイヤか、キングかクイーンかジャックかまでは見えなかったが、なかなかいいカードだった。それに対してお嬢様は)
寺角は静流と目が合わないようにしつつ、彼女の額のカードを再確認した。
そこにあったのはハートの8。中くらいの強さと言える。
(勝った。やはりさっきの笑みは、お嬢様の駆け引き、ブラフなのだ。絵札が見えたので、とりあえず強がって、余裕があるように見せたに違いない)
ここで大きく勝っておきたい、できれば決着させたい寺角だったが、あまり欲をかいてもおりられる。三枚、いや、五枚はいけるか?
「私は五枚、賭けます」
はったりを仕掛けるつもりがあるくらいだから、多少は突っ張るのではないか。そう期待して五枚にした。
「あら。意外と多いわね。そんなに私の手札は弱いのかしら」
答える静流はちょっと上目遣いの仕種をした。無論、額のカードが見える訳がない。
「でも、私もこれで勝負に行かなかったら、おかしいと思われる。だから……十枚」
「は?」
思わず、身体が揺れる寺角。チップのつり上げはあるとしても、まさか十枚全部とは。
寺角は直に聞くことにした。一人で悶々と悩むよりも、相手の反応を見る方が早いこともある。
「おろそうとしていますね、お嬢様?」
「おりてもいいし、勝負してくれてもいい。できれば勝負がいいわね。二人ともオールインしたなら、これでもう終わりだもの」
「……分かりました。乗ります」
吟味した上での結論、と見えるように、ゆっくりと応じた寺角。その実、簡単に全額勝負に乗ったら、この不可抗力のいかさまに勘付かれるのではないかと恐れたのだ。
「それでは手札を見ましょう」
静流が言って、額のカードを胸元辺りに引き寄せる。「ハートの8か」と言った。そして続く言葉に寺角は耳を疑った。
「私の勝ちね」
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