コイカケ

崎田毅駿

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コイカケその12

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 何かちぐはぐだ。ツキだの運だのを理屈では信じちゃいなくても、肌感覚ではあるんじゃないかなと思う。
 流れを変えるような手が欲しい。僕は願いながら、続く三戦目のカードを受け取った。

 ダイヤの5 クラブのジャック スペードの4 ハートのエース ダイヤの10

 うーん、中途半端か? 数の大きなカードが三枚あるのはありがたいけれど、ばらけ気味。マークも全四種類が含まれている。
 とりあえず、大きな数の三枚を残すことにした。僕は馬込ディーラーに配ってもらった二枚を手に取り――思わず舌打ちをしてしまった。
 新たなカードは、ダイヤの2とスペードの3だった。
 もし仮にダイヤの5とスペードの4を捨てずに残し、代わりにクラブのジャックとダイヤの10を捨てていれば、ストレートが完成していたのだ。後悔先に立たずだが、それ以上に、正直な反応を見せてしまった自分の迂闊さが嫌になる。
 これは早々に当初の作戦を投げ打たねばならないかもしれない。少なくともこの第三戦は、速攻などできない。
 僕はじっくり手を作るつもりで、五枚のチップを積んだ。
 味澤の方は、三枚をチェンジ。ストップ宣言はなく、僕と同じくチップ五枚を場に出した。抜け目なさそうな味澤が、僕のさっきの舌打ちを聞き逃したとは思えない。勝負に来いない味澤の現在の手札もまたノーペアであるようだ。
「やっとストップなしだな」
 味澤は楽しげに言った。挑発のつもりかもしれないが、こちらからすれば強がっているようにしか見えなかった。
 僕は「そうですね」とだけ言って、二枚のチェンジを求めた。感情を抑え込もうとして、腕に力が入り、不要なカード二枚を叩き付けるようにテーブルに出してしまう。
 いけない。ここからはポーカーフェイスに努めつつ、カードを確認。スペードのキングと2が来た。これで一応、ストレートまであと一歩。クイーンが来れば完成だが。
 可能性は高くないが、このまま押すしかない。流れを引き寄せる願掛けを兼ねて、強気で行こう。
「レイズは五枚、いや九枚にしよう」
「九とはまた区切りが悪いな。何か意味が?」
 味澤の質問に答える義務はないだろうけど、黙っていると言い負かされている気がしてくる。
「僕が場に出したチップの合計では十五で、区切りが悪いとは言えないでしょう」
「なるほど。アンティを含めるのか。では受けるとしよう。コール」
 味澤は二度目のカードチェンジで二枚を交換していた。残した三枚でスリーカードができていたら勝負に来るはず。実際には来なかったので、手作りはあまり進まなかったのだろう。
 それでも九枚を出すと言うことは、強い役が見込める手なんだろうなと推測できる。
 僕は次の一枚チェンジに託した。クイーンよ、来い!

             *           *

 味澤京太の内面の顔はほくそ笑んでいた。
(この若造、まだ気付いていないな。初戦から俺がおまえの手札それぞれの位置を、ずっと目で追っていたことを)
 その証拠に、相手は今回もカードの位置を特にいじらず、漫然と手でホールドしている。
(こういうのは得意なんだ。動体視力みたいなものなのかね? 完全に覆い隠されたなら話は別だが、普通に持っているのなら見失うことはない)
 思考する間も、味澤は視線を切らない。目を細めて、どこを見ているのか分からないようにしつつ、敵の手札を捕捉し続ける。
(最初に二枚交換して悔しがった。裏目に出たのかな? ストレート狙い、フラッシュ狙い、フルハウス狙い……いくつかパターンが考えられる。初戦で速攻を狙ったこいつの性格からして、配られた時点で手札に役ができていたなら、それを崩さずに速攻を仕掛けてきただろう。そして一度目の交換のあとも速攻はなし。つまり、フルハウス狙いではなかったと見なせる。フラッシュ狙いでもないだろう。ノーペアからの二枚交換でフラッシュ狙いが裏目に出るケースはない。もちろん、違う選択をしていれば四枚までマークが揃ったのにというケースはあり得るが、その程度でこいつがあんなに悔しがるとは考えにくい。その点、ストレート狙いなら、二枚交換で裏目に出ることはある。
 俺にとって幸運だったのは、二回目の交換のときだ。いらいらしていたんだろうな、いらないカードを出す手つきが荒っぽくなっていた。おかげで、何を捨てたのかが一瞬だったが、しっかり見えた。スペードの3とダイヤの2だったな。これらは最初の交換で手に入れたカードでもある。この二枚が入ったことでストレートが完成する手札は、マークは無関係で『1、4、5』か『4、5、6』。これが裏目に出たのだから、最初の交換で捨てたカードは4と5。手札に4、5、6とあってストレート狙いなのに4と5を据えるなんて普通じゃない。だから奴の最初の手札は1、4、5の三枚が確定で、残る二枚は10からキングまでの四種中、異なる二枚だった。
 そして今し方、一枚のみの交換。ストレート完成にリーチの状態から、欲しい一種のカードを果たして引けたか?)
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