コイカケ

崎田毅駿

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コイカケその13

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 味澤は対戦相手の表情の変化に意識を集中した。
(……さすがに今度は表情に出さないか。警戒しているな。ストレートは完成したのか、まだなのか)
 味澤の思考を遮ったのは、相手の宣言だった。
「ストップします」
 ほう。
 味澤は感心と困惑が相半ばしていた。
(見事にストレートを作ったか。しかし、強い手を狙っていたのがほぼ丸分かりの状態で、ストップを宣言するか? それだとチップをつり上げられないだろうに。そりゃあ、次で俺がストップを宣言しなけりゃ、ストレートを崩さざるを得なくなるからって考え方もできるが、交換しないという選択もあり得る。敢えてルール確認をしないでいたが、ストップを宣言せずに、次の自分の番では交換しないことを選択するのは、現時点ではグレーゾーンだろう)
 続く宣言に、味澤は驚きの声を漏らすことになる。
「そしてレイズは五十枚」
「何?」
 細めがちだった両目を、思わず見開いた。相手の顔を凝視する。
「不都合でもあります?」
「……いや、ない。いくら賭けようが自由だ」
 敵の表情は自信に溢れつつも、その額には、うっすらと汗をかいているように見えた。
(まだ分からないな。あの汗は本当はストレートが未完成で、ブラフをかましたが故の汗かもしれない。だが単にいい手ができて興奮しているから汗が滲んできたのかもしれない。三戦目でそれを見極めるのは困難だ。ここはひとまず、自分の手札を高めることに集中しよう)
 味澤は、対戦相手の手札五枚の位置に注意しつつも、脳裏には自身の手札を思い描いた。
 今手にあるカードは、ダイヤの7,ハートの7、クラブのキング、スペードの5、ハートの4という顔ぶれ。
(ここからストレートを上回るフラッシュを狙って、7のペアを壊すのは愚挙だ。ペアを残して、フラッシュ以上のフルハウスに期待する方がまだましというもの。それに、相手はストレートが完成しているとは限らない。エースの入ったノーペアか、せいぜいエースのワンペアという可能性だってかなりある。だから俺が狙うのは、ツーペア以上。ツーペア以上の役ができなかったときは、さっさと降りる。できた場合はまたその役によって考える)
 二枚の7を残して、三枚を交換する。
(おっ。こいつはラッキーだ。文字通りのラッキーセブン)
 新たな三枚は、クラブの7、ダイヤの6、ダイヤのキング。7のスリーカードが完成した。
 クラブのキングも残しての二枚交換にとどめていたら、7のスリーカードとキングのワンペアでフルハウスになっていたのに……などと考えてはいけない。交換して得たダイヤのキングは、三枚目に配られた物。二枚交換では回ってこなかったのだ。
(スリーカードなら、ストレートには負けるが、相手が未完成なら勝てる。結局は、ストレートの成否が全てだって状況に戻って来た)
 味澤は当然、オープンの権利を行使すると宣言した。
「馬込ディーラー、ルールの確認がしたいんだが」
「何なりと」
「現時点で、俺はオープンする権利を二枚分、持っているはずだね? 第二戦でストップをされたが、権利は使わなかった。その分と今回分とで二枚」
「はい」
「その権利は、一度に使わなければいけないんだろうか? たとえばなんだが、相手のカードを一枚見て、まだよく分からないからもう一枚オープンさせるという使い方はOKなのかどうか」
「かまいません。ただ、二枚分の権利の内、一枚分しか使わなかった場合でも、連続未使用のカウントはゼロになります。言い換えると、一枚分は無駄になります。それでもよろしければ」
「ああ、そうなのかい。ありがとう。じゃあ、もったいないな。折角だから二枚、開けてもらうとしようか」
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