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コイカケその20
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それがあいつの作戦だとしたら……愕然としてしまった。
「危ない危ない。確かに気を付けないとな。今のは捨て札でよかったよ。不幸中の幸いだ」
ダイヤのエースを場で裏向きにしてから、味澤はディーラーの配った一枚を手札に加えた。
それから、あからさまに、にやりとした。
「やっと来た。ストップだ」
チップが十八枚になるように積む味澤。
「まあ、ずっと五枚チェンジをしてきた奴に、ここまで慎重になる必要はなかったと思うが、念のためだ。どうせ降りるんだろう?」
「……」
僕は交換枚数についてほんの少し迷った。実は、手札でスリーカードができてる。この三枚を残して、フルハウスを狙うべきか。しかし、味澤の手は最低でもストレートフラッシュができていると思われた。フルハウスより一つ上だ。
「五枚、全部で」
そう告げて、僕が馬込から新たな五枚を受け取る最中に味澤が言った。
「この回は捨てていたのか? それとも厄払いのおまじないのつもりかな?」
怪訝な顔つきをしつつも、この回は勝利確定と安心しきっている味澤。
僕は――左手首を耳に近付けた。そして、羽柴の言葉を受け止めた。手札を確かめるポーズを続けながら、相手に言った。
「味澤さん。細かな取り決めをしていなかったから、前もって今言っておく。お互いのカードを開く前に、僕はあなたの提案した一発逆転のルール、その手札全てを当てることにチャレンジする」
「ふむ。まさかの展開だな」
含み笑いをしていた味澤は、我慢できなくなったのか、じきに笑い声を立てた。
「そっちの提案したルールで俺が逆転し、こっちの提案したルールでそっちが逆転を狙う。お互い、何をやってるんだろうなって笑える」
心底愉快そうに顔に皺を寄せる味澤。手札を裏向きのまま、一枚ずつテーブルに置いた。
「ようやく完全に理解できたよ。この回、ずっと五枚チェンジを繰り返しているから変だなとは思っていた。このためだったんだよな。なるたけ多くのカードを手にして、俺の手札候補を減らすのが狙い」
味澤は空になった両手で拍手を三回した。
「捨て身の作戦は見事だと言っておく。俺は調子に乗って今回もストップを掛けてしまった。おかげで、四枚はオープンされてしまう訳だ。だが、結果的に俺の手札が完成するのが予想以上に早かったんじゃないか? 一体どれくらい見て、覚えられた? 二十枚か? 二十五枚か? まあ、せいぜい半分だろう。あとの二十何枚かの中から、どうやって俺のカードを言い当てる?」
「御託はよそう。今は勝負あるのみ」
そう言いながら、僕はあるタイミングを計っていた。もう少し、味澤に喋らせてもよさそうだ……。
「大方、ストレートフラッシュ以上の手だろ――そう思っているな?」
幸い、こちらが挑発しなくても、味澤が勝手にお喋りを続けてくれた。僕は左手で頬杖を突き、余裕がありそうに見せる。
「ストレートフラッシュ以上の手なら、四枚をオープンした状態から残り一枚を推測するのは、かなり絞り込める。四枚の開き方によっては、つまり運がよければ確実に言い当てられる。そう踏んでいたんだろう? これでも俺は親切だから、教えてやろう。俺の手札はストレートフラッシュ以上とは限らない」
「え?」
「危ない危ない。確かに気を付けないとな。今のは捨て札でよかったよ。不幸中の幸いだ」
ダイヤのエースを場で裏向きにしてから、味澤はディーラーの配った一枚を手札に加えた。
それから、あからさまに、にやりとした。
「やっと来た。ストップだ」
チップが十八枚になるように積む味澤。
「まあ、ずっと五枚チェンジをしてきた奴に、ここまで慎重になる必要はなかったと思うが、念のためだ。どうせ降りるんだろう?」
「……」
僕は交換枚数についてほんの少し迷った。実は、手札でスリーカードができてる。この三枚を残して、フルハウスを狙うべきか。しかし、味澤の手は最低でもストレートフラッシュができていると思われた。フルハウスより一つ上だ。
「五枚、全部で」
そう告げて、僕が馬込から新たな五枚を受け取る最中に味澤が言った。
「この回は捨てていたのか? それとも厄払いのおまじないのつもりかな?」
怪訝な顔つきをしつつも、この回は勝利確定と安心しきっている味澤。
僕は――左手首を耳に近付けた。そして、羽柴の言葉を受け止めた。手札を確かめるポーズを続けながら、相手に言った。
「味澤さん。細かな取り決めをしていなかったから、前もって今言っておく。お互いのカードを開く前に、僕はあなたの提案した一発逆転のルール、その手札全てを当てることにチャレンジする」
「ふむ。まさかの展開だな」
含み笑いをしていた味澤は、我慢できなくなったのか、じきに笑い声を立てた。
「そっちの提案したルールで俺が逆転し、こっちの提案したルールでそっちが逆転を狙う。お互い、何をやってるんだろうなって笑える」
心底愉快そうに顔に皺を寄せる味澤。手札を裏向きのまま、一枚ずつテーブルに置いた。
「ようやく完全に理解できたよ。この回、ずっと五枚チェンジを繰り返しているから変だなとは思っていた。このためだったんだよな。なるたけ多くのカードを手にして、俺の手札候補を減らすのが狙い」
味澤は空になった両手で拍手を三回した。
「捨て身の作戦は見事だと言っておく。俺は調子に乗って今回もストップを掛けてしまった。おかげで、四枚はオープンされてしまう訳だ。だが、結果的に俺の手札が完成するのが予想以上に早かったんじゃないか? 一体どれくらい見て、覚えられた? 二十枚か? 二十五枚か? まあ、せいぜい半分だろう。あとの二十何枚かの中から、どうやって俺のカードを言い当てる?」
「御託はよそう。今は勝負あるのみ」
そう言いながら、僕はあるタイミングを計っていた。もう少し、味澤に喋らせてもよさそうだ……。
「大方、ストレートフラッシュ以上の手だろ――そう思っているな?」
幸い、こちらが挑発しなくても、味澤が勝手にお喋りを続けてくれた。僕は左手で頬杖を突き、余裕がありそうに見せる。
「ストレートフラッシュ以上の手なら、四枚をオープンした状態から残り一枚を推測するのは、かなり絞り込める。四枚の開き方によっては、つまり運がよければ確実に言い当てられる。そう踏んでいたんだろう? これでも俺は親切だから、教えてやろう。俺の手札はストレートフラッシュ以上とは限らない」
「え?」
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