コイカケ

崎田毅駿

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コイカケその21

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「おまえの作戦に気付いたのは今ではない。途中で察しを付けたさ。そしてこのままストレートフラッシュだのフォーカードだの、あるいはロイヤルストレートフラッシュなんかを狙っていては、やばいと理解した。そこで途中から狙う役を変えたんだよ。――と言ったら、信じるかな?」
「……気付いたのなら、ストップを掛けなければよかったんだ。そうしていたのなら、僕はオープンの権利を使えなかった可能性が高い」
「なるほど。だが、そこも俺の思惑通りかもしれない
「――きりがない。やめましょう。勝負に行かせてもらいます」
 時は満ちた。
「馬込ディーラー、オープンの権利を四つとも使います。真ん中を残して、全てのカードを開いてもらいたい」
「承りました。味澤様。どうぞ両サイドの二枚ずつを、開いて表向きにしてください」
「分かった」
 味澤は片手だけで、指定された四枚を次々に開いていった。スペードの1、2、4、5が現れる。
「それは、どう見てもストレートフラッシュですが」
 探りを入れてみせる僕。味澤はこちらの予想した通り、「さあどうかな」とだけ答を返して来た。
 ひょっとしたら、ストレートフラッシュから単なるストレートに役を落としたのか。フラッシュだってあり得る。またあるいは、最善のやり取り全てが嘘で、やはりストレートフラッシュのままだという可能性だって残る。
 僕が記憶した分と照合して、ある程度までは絞り込めるが、一枚に特定するのは不可能だ。
「どうする? 何で勝負する気なんだろうな」
 急がせようとしているのか、捲し立ててくる味澤。
 僕は話し掛けた。左の手首にまとわりつく、無線機に。
「やっぱり、一枚絞りきるのは無理だ。悪いけど、今回はヘルプを頼みます」
『よっしゃ。じゃ、ディーラーに聞こえるように、無線機を見せて』
 羽柴に言われた通り、僕は馬込を呼んだ。
「すまないんですが、馬込さん。ちょっとこちらまで来てもらえますか」
「何でしょうか」
 テーブルの角をぐるっと回り込んで来た馬込は、僕のそばまで来て無線機の存在をしかと認識した。
「これは一体? 違反ではないようですが、予め申告していただきたかった」
『七階で一回戦に臨んでいる羽柴です。ディーラーの馬込さん? 初めまして、よろしくお願いします』
 羽柴は人を食ったような調子で挨拶から入り、馬込と味澤に、無線機について説明をした。その上で、僕に竜頭の位置にあるボタンを押せと指示を出してきた。途端に、羽柴の声が大きくなる。
『スピーカーモードってやつです。これで大声を張り上げなくて済む』
 最初に言ってくれよと思ったが、まあ話には順番というものがあるし、仕方がない。
『さて、この無線機についてですが、こちらではもうディーラーの三ツ矢さんが承認してくれたから、今また新たに承認を得るつもりはありません。対戦相手も同じです。何せ、この無線機があっても、目の前の相手には大した効力を発揮できないんだから』
「でしょうね。それなのにここへ連絡を取ろうとするのは?」
『それはもちろん、親友を大ピンチから救うため』
「なるほど。いかさまではないんですね?」
「分からない。あなた方ディーラーがゲーム開始前に提示したルールには抵触していない、とだけは言える」
「とりあえず、その策をやってみてもらえますか。否か応かは事後に判断させてもらいます」
 このやり取りを、味澤は唖然として聞いただろう。何が起こるか分からないだけに、無条件に認めはしなかったことが、せめてもの救いだった。
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