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コイカケその22
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『それじゃあ、言いましょうかね。自分は現在、相手にストップを掛けられたので、一枚カードをオープンさせる権利を有しています。この権利を、味澤さんの手札の真ん中のやつに行使したい。いかがでしょう?』
予想されてしかるべきことだけれども、この異例であろう提案?要求?に、対戦場内は騒がしくなった。
と言っても、騒いでいるのは一人だけ。味澤京太のみが、席を立ち、肩を震わせている。
「何を寝ぼけたことを言ってるんだ? 第三者が試合に介入するなんて、許されるはずないだろう」
『果たしてそうでしょうか?』
落ち着き払った語調で返す羽柴。
『他のギャンブルならいざ知らず、このトーナメントではどうなのか。公平を約束された大会ですから、最初に受けた説明も同じだったと思いますが、覚えておいででしょうか』
「うん……? 何のことを言っているのか分からん。ルール説明なら、たくさんあったが他人の乱入を許すような話はどこにもなかった。禁じられていないからありだという主張か?」
最初の激情が去ったのか、味澤は案外落ち着いた様子で羽柴を論破しに掛かっている。
『対戦者以外の介入を禁ずる文言が出なかったというのもありますが、もっと具体的なものがありましたよ。透視ポーカーでのオープンに関する権利でね』
「……正直言って、細かい点は記憶があやふやだ。はっきり言ってもらおうじゃないか。確認はこっちのディーラーに取る」
『では……札をオープンさせる権利は、“ゲームをしている人物のカードを指定すれば、どんなことがあっても開かれる”ぐらいに強力なんだということを、そちらのディーラーも認めているはずです』
僕は思い出していた。勝負がスタートする前に、確かに僕は馬込ディーラーに尋ねていた。
「なるほど。ゲームをしている人物のカードを指定すれば、どんなことがあってもそれは開かれると」
「さようで」
ここに出て来る「ゲームをしている人物」とは、僕と味澤だけではない。同時間帯に、同じゲームに臨んでいる八名全員が対象になるのだ。
言い換えるのなら、八人の内、誰が誰のカードをオープンさせてもいいことになる。僕が羽柴の対戦相手のカードを開けたってかまわない。対戦相手の名は分からないが、その場合は羽柴の対戦相手のカードの右端とでも言えばいいだろう。
ただし、この権利行使の意志を、他の部屋のディーラーに伝える手段がなければだめだ。僕と羽柴はたまたま、その手段を得ていたまでのこと。
いや、素直に白状すると、羽柴からこの策を持ち掛けられるまで、僕の頭に他の対戦者のカードを開けさせるなんて無茶苦茶、思いも寄らなかった。
この飛び道具が認められるかどうかは、馬込ディーラーの判断に掛かっている。が、僕の質問に対して彼自身が認めていることなのだ、今さらひっくり返せるか?
「おいおい、馬込さん。こんなのは無効だろ? 巧妙なイカサマってんならまだしも、こんなのはルールの盲点を突いたとも言えない、悪用だぜ」
味澤の喋りは馬込に詰め寄る勢いだ。その圧の強さとは裏腹に、自らを落ち着かせるためなのだろうか、椅子に座り直そうとする味澤。
ところがタイミング悪く、船が再び傾いた。味澤は後ろ向きにバランスを崩し、尻餅をついてしまった。
そこへ追い打ちを掛ける馬込ディーラーからの宣告。
「ルール上、問題は何らないと認めましょう。味澤さんは、最後の一枚、真ん中の札を開けてください」
「馬鹿な」
床から起き上がった味澤は、頭を掻きむしった。
「あなた様がなさらないのでしたら、私が代わりに開くだけのことです」
予想されてしかるべきことだけれども、この異例であろう提案?要求?に、対戦場内は騒がしくなった。
と言っても、騒いでいるのは一人だけ。味澤京太のみが、席を立ち、肩を震わせている。
「何を寝ぼけたことを言ってるんだ? 第三者が試合に介入するなんて、許されるはずないだろう」
『果たしてそうでしょうか?』
落ち着き払った語調で返す羽柴。
『他のギャンブルならいざ知らず、このトーナメントではどうなのか。公平を約束された大会ですから、最初に受けた説明も同じだったと思いますが、覚えておいででしょうか』
「うん……? 何のことを言っているのか分からん。ルール説明なら、たくさんあったが他人の乱入を許すような話はどこにもなかった。禁じられていないからありだという主張か?」
最初の激情が去ったのか、味澤は案外落ち着いた様子で羽柴を論破しに掛かっている。
『対戦者以外の介入を禁ずる文言が出なかったというのもありますが、もっと具体的なものがありましたよ。透視ポーカーでのオープンに関する権利でね』
「……正直言って、細かい点は記憶があやふやだ。はっきり言ってもらおうじゃないか。確認はこっちのディーラーに取る」
『では……札をオープンさせる権利は、“ゲームをしている人物のカードを指定すれば、どんなことがあっても開かれる”ぐらいに強力なんだということを、そちらのディーラーも認めているはずです』
僕は思い出していた。勝負がスタートする前に、確かに僕は馬込ディーラーに尋ねていた。
「なるほど。ゲームをしている人物のカードを指定すれば、どんなことがあってもそれは開かれると」
「さようで」
ここに出て来る「ゲームをしている人物」とは、僕と味澤だけではない。同時間帯に、同じゲームに臨んでいる八名全員が対象になるのだ。
言い換えるのなら、八人の内、誰が誰のカードをオープンさせてもいいことになる。僕が羽柴の対戦相手のカードを開けたってかまわない。対戦相手の名は分からないが、その場合は羽柴の対戦相手のカードの右端とでも言えばいいだろう。
ただし、この権利行使の意志を、他の部屋のディーラーに伝える手段がなければだめだ。僕と羽柴はたまたま、その手段を得ていたまでのこと。
いや、素直に白状すると、羽柴からこの策を持ち掛けられるまで、僕の頭に他の対戦者のカードを開けさせるなんて無茶苦茶、思いも寄らなかった。
この飛び道具が認められるかどうかは、馬込ディーラーの判断に掛かっている。が、僕の質問に対して彼自身が認めていることなのだ、今さらひっくり返せるか?
「おいおい、馬込さん。こんなのは無効だろ? 巧妙なイカサマってんならまだしも、こんなのはルールの盲点を突いたとも言えない、悪用だぜ」
味澤の喋りは馬込に詰め寄る勢いだ。その圧の強さとは裏腹に、自らを落ち着かせるためなのだろうか、椅子に座り直そうとする味澤。
ところがタイミング悪く、船が再び傾いた。味澤は後ろ向きにバランスを崩し、尻餅をついてしまった。
そこへ追い打ちを掛ける馬込ディーラーからの宣告。
「ルール上、問題は何らないと認めましょう。味澤さんは、最後の一枚、真ん中の札を開けてください」
「馬鹿な」
床から起き上がった味澤は、頭を掻きむしった。
「あなた様がなさらないのでしたら、私が代わりに開くだけのことです」
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