49 / 59
コイカケ2の15
しおりを挟む* *
最初に聞いていた話と違って来ているなと思った。
まず、集合場所の変更があった。当初は馬込さんから客室の一つを指定されていたのに、中ホールに変わったと三ツ矢さんから伝えられた。
中ホールは、普段のクルーズでは、乗船客が集まってのレクリエーションに利用されることが多いと聞いた。人気なのはビンゴゲームで、豪華賞品が用意されるらしい。
一方、これからギャンブルの二回戦に臨もうという僕らには、一体どんな物が用意されているのやら。
馬込さんの案内で中ホールに入ってみると、中には六人の男達がいて、その半数は馬込さんや三ツ矢さん達とと同じ、神田部家に仕える人、つまりはディーラーと見て分かる。
残りの三人に羽柴が含まれている。ということは、対戦相手は羽柴? でも、それなら残りの二人の男は何だろう。年齢はやや高めの西洋人と、ロン毛で軽そうだが切れ者っぽいめつきの若い日本人(多分)が一人ずつ。どちらもトーナメント参加者だと見なして、何らおかしくない。
と、そのとき、背後でホールの扉がきっちり閉ざされた。こりゃあ僕が一番遅くに来たんだなと察した。とりあえず、言い訳込みで謝っておこう。
「遅れてすみません。ちょっと番外戦をやらされていたもので」
羽柴を含めた三人が振り返った。いずれの顔も、特段怒っているとか不機嫌になっている気配は漂わせていない。笑ってもいないが、これは勝負を目前に控えているのだから当然だろう。ひとまずほっとして、羽柴に近付く。
「どうなってるん?」
室内の雰囲気から、ひそひそ声で聞いた。
「分からない」
羽柴はどこか楽しそうな笑みを浮かべつつ、首を横に振った。
「ディーラー連中も教えてくれないんだよ。二回戦というか準決勝の組み合わせ抽選でもやるのかと考えたんだが、それなら当初からここに集まるように言われるだろう」
「うん。あ、一回戦ではフォロー、サンクス。助かったよ」
「なんのなんの。あれはおまえの意思とは関係ないところで、勝手にやったことだからな。今後、もし使える場面が訪れて、必要であれば躊躇なく使う。そして恩義に感じているのであれば、俺がピンチのときは助けてもらうぜ」
「もちろんさ。君が対戦相手でなければね」
僕が答えた矢先、黒い影が差した。その方向を振り返ると、さっき言及した西洋人がぬっと立っていた。続いて、もう一人の日本人もゆっくり歩いてくる。
「主催する神田部家には、どうも手前勝手なところがある」
その日本人が言い放ち、適度な距離のところで立ち止まった。
「人を急かせておきながら、何が行われるのやら、説明はまだのようだから、トーナメント参加者同士、先に簡単に自己紹介でもしておきませんか」
やっぱり、参加者だったか。
僕と羽柴が、いいですよとハモって答えると、提案した日本人も外人さんも軽く笑った。
「お二人は実に仲がよいようで。えーでは、言い出した私から自己紹介をしましょう。板文博士と言います。トレーダーを気取っていたが、恐慌のときに対処しきれず大損を出してしまって。ギャンブルに転向したら何故だか知らないがよく勝てましてね。神田部貴一さんのお目に留まったようなんです」
この程度の自己紹介でいいのか。本当に簡単だ。彼に続いて羽柴、僕の順で名乗った。
最後に西洋人。頭一つ分以上背が高く、文字通り頭抜けている。年齢は恐らく四人の中では一番高齢で、三十代後半から四十半ばではないか。尤も、顎から頬に掛けてを覆う白っぽい髭のせいで、年寄りらしく見えるということはあるかもしれない。
「自分はケイン・コストナーという名前です」
若干、嗄れ気味の声で日本語が流れ聞こえた。ハスキーと言えばハスキーだ。
「アメリカ合衆国生まれですが、約三年前からは日本暮らしです。元心理学者、元詐欺師、そして作家をしています」
「え、詐欺師?」
続く
※前回末尾での予告を違えて、休載がふた月となったことをお詫びします。以下、言い訳など。
構想していた準決勝のゲームが、某漫画作品終盤のあるギャンブルと、内容は全然違うものの、対戦者達の置かれる構図が似ている気がしたので、これはまずいかもと判断し、取り止めた次第です。某漫画のコミックスが古本で値下がりするのを待って読んでいたので、知るのが今頃になってしまいました。
代わりに捻り出したネタはまだ固まっていないため、今後の更新は間延びするかと思いますが、気長によろしくお願いします。今回の更新は、執筆継続の意思表示と受け取っていただけると幸いです。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サウンド&サイレンス
崎田毅駿
青春
女子小学生の倉越正美は勉強も運動もでき、いわゆる“優等生”で“いい子”。特に音楽が好き。あるとき音楽の歌のテストを翌日に控え、自宅で練習を重ねていたが、風邪をひきかけなのか喉の調子が悪い。ふと、「喉は一週間あれば治るはず。明日、先生が交通事故にでも遭ってテストが延期されないかな」なんてことを願ったが、すぐに打ち消した。翌朝、登校してしばらくすると、先生が出勤途中、事故に遭ったことがクラスに伝えられる。「昨日、私があんなことを願ったせい?」まさかと思いならがらも、自分のせいだという考えが頭から離れなくなった正美は、心理的ショックからか、声を出せなくなった――。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
観察者たち
崎田毅駿
ライト文芸
夏休みの半ば、中学一年生の女子・盛川真麻が行方不明となり、やがて遺体となって発見される。程なくして、彼女が直近に電話していた、幼馴染みで同じ学校の同級生男子・保志朝郎もまた行方が分からなくなっていることが判明。一体何が起こったのか?
――事件からおよそ二年が経過し、探偵の流次郎のもとを一人の男性が訪ねる。盛川真麻の父親だった。彼の依頼は、子供に浴びせられた誹謗中傷をどうにかして晴らして欲しい、というものだった。
神の威を借る狐
崎田毅駿
ライト文芸
大学一年の春、“僕”と桜は出逢った。少しずつステップを上がって、やがて結ばれる、それは運命だと思っていたが、親や親戚からは結婚を強く反対されてしまう。やむを得ず、駆け落ちのような形を取ったが、後悔はなかった。そうして暮らしが安定してきた頃、自分達の子供がほしいとの思いが高まり、僕らはお医者さんを訪ねた。そうする必要があった。
籠の鳥はそれでも鳴き続ける
崎田毅駿
ミステリー
あまり流行っているとは言えない、熱心でもない探偵・相原克のもとを、珍しく依頼人が訪れた。きっちりした身なりのその男は長辺と名乗り、芸能事務所でタレントのマネージャーをやっているという。依頼内容は、お抱えタレントの一人でアイドル・杠葉達也の警護。「芸能の仕事から身を退かねば命の保証はしない」との脅迫文が繰り返し送り付けられ、念のための措置らしい。引き受けた相原は比較的楽な仕事だと思っていたが、そんな彼を嘲笑うかのように杠葉の身辺に危機が迫る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる