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コイカケ2の20
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「質問がある」
板文が言った。
「何なりと」
「アイテムによって、出品数に差はあるのだろうか?」
「差はございます。が、どれも最低五つはご用意しているので、問題ないかと」
「なるほど分かった」
板文は頷いて、すぐさま入札を行ったようだ。
実を言うと僕らは僕らで、板文が質問している間にある対抗策を考え、試すことになっていた。
対抗策と言っても絶対的なものではないし、最前のような二人が組んで入札を不成立にさせるものでもない。延々と不成立を繰り返すことはできても、それでは勝てないのだから。
「結果を発表します。今回は下位からにしましょう」
三ツ矢さんは一旦黙り、自らの言葉の与える効果を窺うかのように、僕らを見渡した。
「最安値を付けたのは3番で、一円でした」
コストナー氏は、明らかに安堵を表情に浮かべた。とりあえず様子見の態度を選ぶのは、今の彼の心理状態ならまあ致し方がないところだろう。
「次は、最高値を付けた方に行きましょうか。最高値の入札は、1番で二万一円でした」
この発表に、えっ?となったのは、コストナー氏。彼は当然、4番の板文が再び二百万を入札してくるものと信じて疑わなかったようだ。
「半額にして小数が出る場合は、追々説明するつもりでしたがここで言っておきましょう。切り上げます。ですから、今回最高値を付けた方1番には、一万一円をお支払いいただくことになります。入札が成立すればの話ですが」
三ツ矢さんが説明する前で、コストナー氏は何故なんだという目を、板文に向けていた。
「私だって、毎回全額入札なんてしませんよ。今回は安値で取りに行ける可能性がと踏んだのでね」
板文の独り言のような返事に、コストナー氏は何やら英語でぶつぶつ言いながら、かぶりを振った。
「では二番目の高値を付けたのはどなたか――2番で、二万円です」
「何だって!」
板文が僕の方を見た。驚きの色がすぐに睨みに変わる。
「おまえたち、また組んでいたな」
「問題はないはず」
僕はなるべく胸を張って主張した。あとに羽柴が続く。
「こちらだってリスクを背負っていた。もし仮に前回同様、今回もあなたが二百万入札をしていたら、百万を払わされる恐れがあった。しかし、二度続けてそれはないと予想し、むしろ怖じ気づいた三人を尻目に、低い入札額で落札しようとするのではないかと我々は考えた。そして見事に当たった。それだけのことです」
羽柴は自信満々に語ったけれども、内心では違うはずだ。今回の勝負は偶然の要素が大きく、百パーセント勝てる補償なんてどこにもなかった。運が僕らに味方した、それまでのこと。
さっき言った二百万云々はもちろんのこと、他にも、板文が二万を付けて不成立になる可能性はあったし、コストナー氏がこの回を端から放棄するかどうかも分からなかった。
ただ、板文が安い値で落札を狙ってくるとしたら、僕らが初回に付けた一万円を目安に、若干低く付けてくるであろうことだけは、それなりに高確率であり得ると考えた。果たして、実際はどうだったのか、今はそちらの方が気になる。
「ちなみに三番目の値になったのは、4番の八千円でした」
三ツ矢さんの声がそう告げる。八千円か。ほぼ見込み通りだ。この額なら、板文以外の三人が揃ってびびって、もっと少額の入札をしてきたとしても、板文自身の損害は四千円で抑えられる。安い物だ。
なお、僕が二万円、羽柴が二万一円となったのは、単に僕の方が持ち金が少ないという理由と、羽柴が信頼の証として損な役回りを負ってくれたからだ。
つづく
板文が言った。
「何なりと」
「アイテムによって、出品数に差はあるのだろうか?」
「差はございます。が、どれも最低五つはご用意しているので、問題ないかと」
「なるほど分かった」
板文は頷いて、すぐさま入札を行ったようだ。
実を言うと僕らは僕らで、板文が質問している間にある対抗策を考え、試すことになっていた。
対抗策と言っても絶対的なものではないし、最前のような二人が組んで入札を不成立にさせるものでもない。延々と不成立を繰り返すことはできても、それでは勝てないのだから。
「結果を発表します。今回は下位からにしましょう」
三ツ矢さんは一旦黙り、自らの言葉の与える効果を窺うかのように、僕らを見渡した。
「最安値を付けたのは3番で、一円でした」
コストナー氏は、明らかに安堵を表情に浮かべた。とりあえず様子見の態度を選ぶのは、今の彼の心理状態ならまあ致し方がないところだろう。
「次は、最高値を付けた方に行きましょうか。最高値の入札は、1番で二万一円でした」
この発表に、えっ?となったのは、コストナー氏。彼は当然、4番の板文が再び二百万を入札してくるものと信じて疑わなかったようだ。
「半額にして小数が出る場合は、追々説明するつもりでしたがここで言っておきましょう。切り上げます。ですから、今回最高値を付けた方1番には、一万一円をお支払いいただくことになります。入札が成立すればの話ですが」
三ツ矢さんが説明する前で、コストナー氏は何故なんだという目を、板文に向けていた。
「私だって、毎回全額入札なんてしませんよ。今回は安値で取りに行ける可能性がと踏んだのでね」
板文の独り言のような返事に、コストナー氏は何やら英語でぶつぶつ言いながら、かぶりを振った。
「では二番目の高値を付けたのはどなたか――2番で、二万円です」
「何だって!」
板文が僕の方を見た。驚きの色がすぐに睨みに変わる。
「おまえたち、また組んでいたな」
「問題はないはず」
僕はなるべく胸を張って主張した。あとに羽柴が続く。
「こちらだってリスクを背負っていた。もし仮に前回同様、今回もあなたが二百万入札をしていたら、百万を払わされる恐れがあった。しかし、二度続けてそれはないと予想し、むしろ怖じ気づいた三人を尻目に、低い入札額で落札しようとするのではないかと我々は考えた。そして見事に当たった。それだけのことです」
羽柴は自信満々に語ったけれども、内心では違うはずだ。今回の勝負は偶然の要素が大きく、百パーセント勝てる補償なんてどこにもなかった。運が僕らに味方した、それまでのこと。
さっき言った二百万云々はもちろんのこと、他にも、板文が二万を付けて不成立になる可能性はあったし、コストナー氏がこの回を端から放棄するかどうかも分からなかった。
ただ、板文が安い値で落札を狙ってくるとしたら、僕らが初回に付けた一万円を目安に、若干低く付けてくるであろうことだけは、それなりに高確率であり得ると考えた。果たして、実際はどうだったのか、今はそちらの方が気になる。
「ちなみに三番目の値になったのは、4番の八千円でした」
三ツ矢さんの声がそう告げる。八千円か。ほぼ見込み通りだ。この額なら、板文以外の三人が揃ってびびって、もっと少額の入札をしてきたとしても、板文自身の損害は四千円で抑えられる。安い物だ。
なお、僕が二万円、羽柴が二万一円となったのは、単に僕の方が持ち金が少ないという理由と、羽柴が信頼の証として損な役回りを負ってくれたからだ。
つづく
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